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【小説講座】三人以上が会話する時の注意点!誰が話しているのか分かりやすくする方法を解説 小説講座その4

これまでは2人での対話式小説を書いて練習して貰ってきました。ただ小説では3人以上で会話をする事も多々あります。

今回は3人以上人が登場する会話について、レッスンを行っていきます。


3人以上登場する対話式小説

これまで2人だけ登場する会話劇を題材に、練習や解説を行ってきました。これが3人以上の会話になっても、基本的にやることは変わりません。

日常の会話と同じように、会話の受け答えをしていけばいいだけです。

ひとつ気を付けないといけないのは、3人以上の会話だと誰が話しているのか分からなくなりがちという点でしょう。

たとえばAさんとBさんが話しているなら、Aさんが話題を振れば、それに応えるのはBさんに決まっています。しかしAさん、Bさん、Cさんのが会話をしていると、Aさんの問いに答えたのが、BさんなのかCさんなのかが、説明なしでは分かりません。

極端な事を言うと、以下のようになってしまいます。

「こんにちは」
「お疲れ様、こんにちは」
「あ、もうこんばんはの時間かな?」
「まだこんにちはの時間だと思う」
「なら私もこんにちはと言います。こんにちは」
「あ、こんにちは」
「こんにちは」

このように説明を入れなければ、誰がなにを話しているのかさっぱり分かりません。なので今回は会話の中で誰が話しているのかが分かり易いようにするテクニックに、焦点を当てて解説をしていきます。

解説で使うので、一度自分でも3人での対話式小説を書いてみてください。

ネームタグ付きで3人での会話を書いてみる


特徴的な口調にすると誤解が生まれにくい

誰がどの台詞を話しているのかがわからないと、読者は多大なストレスを感じてしまいます。

もちろん地の文を正確にすれば、誰が話しているのかを伝える事はできるでしょう。ただ慣れない内は、完全に誤解のない地の文を作成するのは難しいものです。

そんな時はキャラの口調を特徴的なものにして見て下さい。以下は全く同じシチュエーションで、口調だけ変えた会話です。

「こんにちは」
「お疲れ様、こんにちは」
「あ、もうこんばんはの時間かな?」
「まだこんにちはの時間だと思う」
「なら私もこんにちはと言います。こんにちは」
「あ、こんにちは」
「こんにちは」

「こんにちハ!」
「おっつ~、こんちゃ~」
「ア!もうこんばんはの時間カネ?」
「ん~?まだ、こんにちはの時間だと思うよ~」
「うふふ、なら私も『こんにちは』と言っておきましょうか。こんにちは」
「ア!こんにちハ!」
「こんちゃ~」

似た口調で書いた方も特徴的な口調で書いた方も、どっちも説明不足な文章です。
しかし特徴的な口調にした方は、口調の違いから一応登場人物が3人いる事は察せるでしょう。

このようにキャラの口調に差異を設けておく事で、地の文の情報が不足していても一応意味は伝わる訳です。

キャラの口調を特徴的にして見る

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セリフで名前を呼ぶ

口調を特徴的にする事に加え、セリフで相手の名前を呼ぶようにしてみてください。より状況が分かり易くなります。

「こんにちハ!月野」
「おっつ~。レナち、こんちゃ~」
「ア!もうこんばんはの時間カネ?」
「ん~?まだ、こんにちはの時間だと思うよ~、レナち」
「うふふ、なら私も『こんにちは』と言っておきましょうか。こんにちは、月野ちゃん、レナちゃん」
「ア、咲月!こんにちハ!」
「こんちゃ~、咲月~」

これで3人が会話しているシーンだと分かります。前後の流れや登場人物の紹介が済んでいれば、地の文が無くても伝わるレベルでしょう。

一応解説すると、これは「話し手が自分に呼び掛けない」「呼び掛けている相手が聞き手」という常識を利用したものです。

キャラに聞き手の名前を呼ばせる

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情報を被らせない

口調を変えたり名前を呼んだりすれば、地の文を入れなくても情景が伝わり易くなります。

これは地の文以外で、必要な情報を入れているからです。逆にちゃんと情報が入っている状態で丁寧に地の文を入れてしまうと、くどくなってしまうので注意して下さい。

人の少ない教室で、月野がつまらなさそうに窓の外を眺めている。そこに別の少女が近付いて行った。
「こんにちハ!月野」
月野に話しかけた少女の名は、レナ。彼女の数少ない友達だ。
「おっつ~。レナち、こんちは~」
「ア!もうこんばんはの時間カネ?」
月野が挨拶を返すと、レナは少し考え込んだ。
真面目なレナの性格に苦笑しつつ、月野は時計を確認する。
「ん~?まだ、こんにちはの時間だと思うよ~、レナち」
時刻は15時42分。月野の感覚だと、まだ昼だ。
「うふふ、なら私も『こんにちは』と言っておきましょうか。こんにちは、月野ちゃん、レナちゃん」
月野とレナが話していると、美しい少女が近付いてきた。
深遠の令嬢という雰囲気の彼女は、咲月。月野とレナは僅かに緊張して挨拶を返した。
「ア、咲月!こんにちハ!」
「こんちは~、咲月~」
咲月は2人の挨拶に微笑み、話に加わった。

何度も何度も名前(同じ情報)が出てくると、読んでいる方は胃もたれしてしまいます。情報が被らないように、不要な情報はできるだけ削るようにして下さい。

「うふふ、なら私も『こんにちは』と言っておきましょうか。こんにちは、月野ちゃん、レナちゃん」
月野とレナが話していると、美しい少女が近付いてきた。
深遠の令嬢という雰囲気の彼女は、咲月。月野とレナは僅かに緊張して挨拶を返した。
「ア、咲月!こんにちハ!」
「こんちは~、咲月~」
咲月は2人の挨拶に微笑み、話に加わった。

「うふふ、なら私も『こんにちは』と言っておきましょうか。こんにちは、2人とも」
月野とレナが話していると、美しい少女が近付いてきた。深遠の令嬢という雰囲気だ。
「ア、咲月!こんにちハ!」
「こんちは~」
彼女の名前は咲月。2人の僅かに緊張した挨拶に微笑み返し、話に加わった。

地の文で必要な情報を足し、地の文で説明してしまった情報は会話から削っています。

もちろん地の文で説明が面倒な情報を、会話で説明してしまうと言う選択も可能です。

被っている情報を削る

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何処に情報を入れるかで雰囲気が変わる

3人以上での会話では、読む人に必要な情報を与えることが大切。そしてその情報は、会話に入れるか地の文に入れることになります。

この時に地の文と会話、どちらに多く情報を入れるかによって、小説の雰囲気は大きく変わってきます。

人の少ない教室で、月野がつまらなさそうに窓の外を眺めている。そこに別の少女が近付いて行った。
「こんにちハ!月野」
月野に話しかけた少女の名は、レナ。彼女の数少ない友達だ。
「おっつ~。レナち、こんちは~」
「ア!もうこんばんはの時間カネ?」
挨拶を返すと、レナは少し考え込んだ。
真面目なレナの性格に苦笑しつつ、時計を確認する。
「ん~?まだ、こんにちはの時間だと思うよ~、レナち」
時刻は15時42分。月野の感覚だと、まだ昼だ。
「うふふ、なら私も『こんにちは』と言っておきましょうか。こんにちは、2人とも」
月野とレナが話していると、美しい少女が近付いてきた。
深遠の令嬢という雰囲気の彼女は、咲月。月野とレナは僅かに緊張して挨拶を返した。
「ア、咲月!こんにちハ!」
「こんちは~、咲月~」
咲月は2人の挨拶に微笑み、話に加わった。

人の少ない教室で、月野がつまらなさそうに窓の外を眺めている。そこに別の少女が近付いて行った。
「こんにちは」
月野に話しかけた少女の名は、レナ。彼女の数少ない友達だ。
「お疲れ様、こんにちは」
「あ、もうこんばんはの時間かな?」
月野が挨拶を返すと、レナは少し考え込んだ。
真面目なレナの性格に苦笑しつつ、月野は時計を確認する。
「まだこんにちはの時間だと思う」
時刻は15時42分。月野の感覚だと、まだ昼だ。
「なら私もこんにちはと言います。こんにちは」
月野とレナが話していると、美しい少女が近付いてきた。
深遠の令嬢という雰囲気の彼女は、咲月。月野とレナは僅かに緊張して挨拶を返した。
「あ、こんにちは」
「こんにちは」
咲月は2人の挨拶に微笑み、話に加わった。

上は会話に多く情報を入れ、下は地の文に情報を多く入れています。何処に情報を入れ込むかで、物語の雰囲気はがらりと変わってくるのが分かるでしょう。

会話に情報を入れ込むとラノベな感じに、地の文に情報を入れ込むと純文学的な空気感になります。

自身の目指す文章に合わせて、一度どちらも練習してみて下さい。

会話に情報をたくさん入れた文章を書いてみる
地の文に情報をたくさん入れた文章を書いてみる

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番外編・分からないを利用した叙述トリック

物語の基本は、誰が話しているのかや状況をを分かりやすく描写することです。しかし実際は、話者の状況をわざと分かり難くする叙述トリックも存在します。

できるとカッコイイな位に覚えておくと、いつか使える場面が出てくるかもしれません。

クラス全員「やーい、やーい、変な奴―」
美少女「……」
主人公「イジメなんてやめろよ!カッコ悪いだろ」
クラス全員「やーい、陰キャー」
美少女「……」
主人公「だから止めろって!嫌がってるだろ!」

一見するとクラス全員が美少女をイジメており、主人公がそれを諫めているように見えます。ただ実はこれ、主人公がクラス全員にいじめられ、美少女がボケっと眺めているだけだったりします。

主人公のセリフを「(俺が)嫌がってるだろ!」という分かり難い説明にし、わざと誤解を与えている訳です。こういった叙述トリックは、正しい描写ができて初めて、正しく誤解させることが可能になります。

なのでいきなり応用的なことを目指すのではなく、先に正確に情報を伝えられるように練習していって下さい。

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