まるまる
3年ぶりに風邪をひいた。
暖かい部屋に、ベッドの横でモクモク湯気が立つ。
喉がカラカラで水が欲しい。
そう思っていると、冷たい水が私の目の前に差し出される。
優しい声が聞こえて、すべすべの手がおでこに触れる。
ちょっと恥ずかしい。
今の私は唇はかさかさで、ボサボサの髪。
手は荒れていて、あのすべすべの手を握り返す事もできない。
小さい頃は親が共働きで、誰にもこんなふうに看病してもらった事がない。
ずっとずっと求めていたものがここにある。
うとうとその優しさの中で、痛む身体も緩和され、深い眠りに誘われる。
頭の痛みと身体のだるさに目が覚める。
暗くなった部屋には何もない。
喉がカラカラで痛い。
重い身体を起こしてお湯を沸かす。
電気ケトルに顔を近づけて、湯気をもらう。
沸いたお湯を震える手で、湯たんぽに注ぐ。
あの優しい手か今はもう無いのだと、湯たんぽを抱きしめてまるまる。
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