さくら
#6
紫郎が淡々と話す内容は、私にも思い当たる事があった。
「それって、何年か前に流行ったように言われてた繊細さんとか言うやつ?」
「ははっ…」
思わずといった感じで笑う。
何か又馬鹿にされた気がする。
不機嫌になった私を見て、『ごめん、ごめん』と悪気なく言う。
「アレの何処が繊細なんだよーと、俺は思うね」
うーんと少し考えるフリをしながら
「まぁ、生き辛いやつってだけで普通だろそんなの」
しかも、あんたもだろと私を指差す。
言ってる事は理解するが、いちいち癪に障る。
だけれど、紫郎なりに柊子を大事にしている事はわかった。
私も、時々イラッとさせられてるのに嫌いになれないのは、柊子が大事になっているのだと思った。
「ところで、あなた学校一緒だよね。あまり見かけないけど」
一度だけ見かけて以来学校て会う事が無かった。
「あぁ…俺コース違うし、留年しない程度に短期留学繰り返してるから」
そんな事してる人、初めて知った。
夏休み中にはたまにいる。
私も一度両親に頼んでみたが、却下されてしまった。
代わりに妹が行った。
妹は強引に話を進めて、両親が折れた。
我儘を言わない私を両親は褒めてくれたけれど、こういう時、妹の事を羨ましく思ってしまう。
紫郎が妹と同じ人種かと思うと、やっぱり苦手なタイプだと思ったが、
「柊子は外を知りたく無いやつだから、俺が代わりに行くんだよ」
と、今まで見たことがないくらいの爽やかな笑顔で言う紫郎を見て、胸が苦しくなる。
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