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「女手ひとつ」…はもはや死語

「私は女手ひとつで子供を3人育てました・・・」
と言うと必ず
「そりゃぁ大変だったね~」
「よくやったね~」という言葉が続く。
子育てが終わった後に労をねぎらう意味でそういう誉め言葉が使われる。

それなのに、実際子育てをしている最中は、意外と世間の目は冷たいものだった。
ひと昔前の社会は子供がいるだけで、就職は難しく、たとえ無事に就職できたとしても、
「この仕事は無理でしょう」
「やっぱり子供がいるから仕方ないね」とか、
女性一人で子育てしながら働くには、世の中の偏見は多かった。
偏見というより、社会の構造がそれを受け入れる体制にはなっていなかったということでしょう。

つい最近まで、家族の中でお父さんが働き一家の大黒柱で、お母さんは子供を育てる人という一般的な常識がまかり通っていたのですから。そういう中で子持ちの女性が働くということは何かと不都合で不便なことは多かった。

実は私も専業主婦からの再就職面接のとき、
「子供はいますが、親がそばにいるので全く問題なく働けます」と嘘を言って入社したことがあった。親は800キロ離れた所に住んでいたのに(笑)

ま、その時は運よく採用されたのだけれど、そのあとが大変。
子供がいるという理由で正社員ではなく、パートという勤務形態をとらざる得なかったのだけれど、パートといったって、勤務時間は社員と同じ。仕事の内容も同じ。違うことと言えば、社会保険などがない!?
それでも、当時は子供がいることで絶対迷惑はかけまいと、かなり意地になって働いたような気がする。
昭和生まれは、こういうところで頑張ってしまうものなのですよね。

その結果、働き始めて半年で会社始まって以来の営業獲得成績をだして
「至上最高パートさん」と褒めたたえられた。
しかし、その裏では
当然、そのしわ寄せは子供たちが被っていたわけです。
家庭より仕事優先が美徳の時代です。

それでも子供を3人育てるには、その仕事しかないと必死で働きましたよ。

その後、社員になって3年目で独立し、その後1年してから起業という経緯があります。

そういうことを話したら、さらに、「さぞかし大変だったでしょう」と言われることになるのでしょうが、果たして、本当にそうだったのかしら・・・と思うのです。

私は仕事が好きだったし、その仕事で自分が生かされていることに気づいてもいました。
もちろん、もうあんな大変なことは二度とできないと思うし、ほったらかされた子供たちの寂しさを思うと可哀そうだった!と思いますが、だからと言ってあの頃にもう一度戻ってやり直そうなどとは、決して思いません。やり直せないけど。
だって、あなた達の母は、その時その時一生懸命生きていたわけで、申し訳ない生き方なんかしてないのですから。

それに、たった30年前の日本なのに、こんなに大きく変動した時代はないと思うのです。まさに産業革命以来ではないかと。
1990年代にドコモがIモードを発表したニュースを見たとき、私はものすごい衝撃を受けたことを思い出します。
これからは、変わる! どこのお店の何が美味しいとか、どこのホテルがどんなサービスしているのかとか、地図と情報が人々を動かしていく時代になると思ったのです。今では当たり前のことですが、情報がお金になるという意識を持っている人はあまりいなかった時代です。町の情報や個人の情報からグルメ、旅、教育、就職などのコンテンツの時代になるのだ。地域情報を載せるタウン誌の仕事をしていた私は、まるで自分の時代になるような気がしてさらに仕事にのめりこんでいったのです。

そこからのネット・IT社会が成熟するスピードは速かった。
ユニークなビジネスモデルが次々に生まれ2007年にはアップル社のスマホデビューへと繋がっていく。

そういう経験値では生きられなくなった時代に、
「何になろうか?」とか、「どう生きたら価値のある生き方になるのだろう」など、考える余裕もなかったわけです。
ただ目の前の新しいビジネスモデルを模索しながら、「稼ぐ」という道のりをひたすら走っていたのです。
目の前のミッションは、「お金を稼ぎ子供を育てる事」。
迷うことなく、心の底からそう思えたのです。
人の人生と比べるすべもありませんでした。

それに比べ、
今は、あまりに情報がありすぎて、
働く女性の在り方云々とか、
セレブ主婦の日常だとか、
賢い母親像は・・・とか、
SNSから否応なしに飛び込んできて、
自分以外の人様の生の生活情報を見ることになります。
まさに日本人の暮らしが便利になりすぎて、
あれ?
「こんな私でいいのかしら?」
他人の情報が入りすぎて、余計なことを気づいたり、知ってしまうことも多い。
情報がありすぎるというのも、かえって自分を見失うことにもなるのですね。

女性ひとりで子供を育てるという人は、今ではたくさんいます。
当たり前のように、あえてそういう選択をしている人もいます。

働き方改革によって、女性にとっては、都合の良い制度もできています。
むしろ女性一人でも子供を育てることができることを、うらやましく思う主婦の人たちさえいるでしょうね。

女手ひとつは、昔は哀れみ、今は羨望になっているのかもしれません。

小学校の女子児童の将来なりたい職業は医師、男の子はユーチューバーとか。
なんだか笑ってしまいそう。男の子ってかわいい(笑)、それともかなり先を見ているのか?

これからは女性が自分の職業をしっかり持ち、男性を支えるなんてことがざらにあるような気がしますね。
そうなると、結婚という制度も危ぶまれる気がしませんか?

女性のほうが安定した高収入を得られれば、
なにも籍を入れなくても、パートナーという繋がりで家族を作れば問題ないという考え方が生まれるはずです。
遠からず、婚姻制度も変わってきます。
ジェンダー不平等もなくなり、同性婚も認められるようになれば、なおさらのことです。

女性が活躍する時代になると、高齢者の暮らし方も変わってくると思いますよ。年金では生活できないことはみんなが知っているのですから、生涯働かねばなりません。

100歳まで働ける仕組みがなければ、日本人の未来はなくなりますよね。
私は65歳ですが、あと35年働くことになります。
いくらなんでもそこまではちょっと…という気持ちも多少はありますけど。
生涯現役!
いい言葉ですが、政府も高齢者も本気で高齢者が自立できる仕組みに取り組まないと実現できません。
ご隠居さんなんて言葉も、「女手ひとつ」と同じくらい死語になるのでしょうね。

写真は朝の散歩の途中に見上げた空に青葉が…美しい季節になるね


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