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小説✴︎梅はその日の難逃れ 第37話

「こんばんは。お忙しいところすみません。話しかけてもよろしいですか?」
「おお、いいよ。春翔の友達?」
「あ、私イトコなんです。木杉凛と言います」
「へえ、あいつとは付き合い長いけど、こんな可愛いイトコがいたなんて知らなかった。俺、野崎洋平。よろしく」
手を差し出されて凛は握手をしながら
「今日のマッピング、素敵でした!私の友達も、ものすごく感動して、自分も作ってみたいって言ってます」
凛は千鳥の背を押しながら言った。
「ほら、ドリちゃん!」
「あ、あ、あの。えーと米村千鳥と言います。こ、こんばんは」
「千鳥ちゃんね。よろしく」と野崎が出した手を恐る恐る触れる千鳥にグッと手を握り野崎は
「マッピングに興味持った?」
「は、はい。櫻井さんの大学イベントでも観て感動して」
「お!あれも俺。観てくれてたんだ、ありがとう」
「本当に素敵で、感動しました。自分もこうやって映像で誰かに感動してもらえたらいいなぁって」
「そうなんだね」
「こんな私に出来るとは思えないんですけど……」
小さく呟くように言った千鳥に
「できるよ!その感動した心があるなら、君にもきっと出来るよ」野崎は答えた。

初めて会った野崎だったが【君にも出来る】と言う言葉に、今までふわふわと生きてきた千鳥には、少し大袈裟かも知れないけど生きる目的を見つけて、それを認めてもらえた様で嬉しかった。

凛はそれを聞いて早速
「野崎さん、今も学校に通われているんですよね?」
「うん。もうすぐ卒業だけどね」
「参考までにどちらの学校ですか?」
「C &Dって知ってる?」

「え?俺の志望校!」
そばで聞いていた駿太郎が声を出した。
大きな声でびっくりした凛は
「何よ!宮下まで聞いてたの?」
「いや、どんな機材使ってるのかな?って思って……」
「まぁ、良いけどさ。宮下君も?」
「おお、ここは教師陣も一流だし。
クリエイター系では1番だよ。俺の志望校、ここ一択だもん」

「じゃあ後輩になるんだね。よろしく」
野崎が駿太郎にも握手の手を差し出してきた。ガッチリ握り返した駿太郎は
「はい!後輩になれるよう、頑張ります!」と答えている。
千鳥でさえ耳にしたことある学校名に
(私なんか、行けるのかな?)
不安を隠せずにいたのか
「千鳥ちゃんだっけ?オープンキャンパスまだあると思うから一度来てみれば?」
野崎のその言葉に、千鳥の心は動いた。
「は、はい。頑張ります」
「ドリちゃん、頑張ってみようよ。私も応援するからさ」


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