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つながり【ショートショートシナリオ】


※20×20原稿用紙4ページ相当
※実写映像想定
※Pdfをダウンロードできない方は、下記本文をご覧ください↓(Pdfの方が読みやすいフォーマットになっております)


〇喫茶店・中
   壁に、『WiFiつながります』の文字。
   客A、不満げにスマホをいじる。
客A「つながらねぇし」
〇とあるビニールハウス・外観
   ごく普通のビニールハウス。
千嵐の声「ワイは丹精込めて育てちょる」
〇同・内
   丁寧に水を撒いている夢千嵐[む せんらん](72)。
千嵐「本当の子供のように」
   困ったように見つめる須的[すまと](25)。
須的「だったら……」
千嵐「育てるだけで十分なんじゃ! 他を当たってくれ!」
須的「こんな良いWiFiを、世に出さないのは勿体ないですよ」
   千嵐が水をやっている植物は……WiFiのマークそっくりだ。
須的「もっと色んなモノにつながらないと、この子たちだって可哀想です!」
千嵐「ワイにはこの子らがいる、この子らにはワイがいる。十分つながってる!」
須的「……明日も来ます」
   と、去ろうとする須的
千嵐「何故、そんなに拘る?」
須的「救われたからです」
千嵐「?」
須的「WiFiに、救われたからです!」
〇須的の回想~無人島
須的の声「あの時も――」
   『圏外』表記のスマホ。
   誰もいない島の隅。一人うつむく須的。
   未練がましくスマホをいじる。
須的「!」
   スマホが、WiFiにつながっている!
   振り返ると、そこにWiFi型の植物が。
   須的、植物を見つめ、手を伸ばす。

〇回想終わり~元のビニールハウス内
   千嵐と須的。
千嵐「ワイには関係ない話だ」
須的「あのWiFiは、人とつながりたがってた。今、出回ってる人工WiFiとは全然違った」
   須的、千嵐のWiFi植物を指して、
須的「千嵐さんのWiFiは、限りなく天然WiFiに近い存在なんですよ!」
千嵐「他の奴とつながる必要はねぇ」
須的「……」
〇同・中(夜)
   千嵐、スマホを手に、WiFi植物に対峙。
千嵐「ワイはお前達がいればいい。お前達もそうか?」
   が、スマホのWiFi接続が切れてしまう。
千嵐「(驚き)もっと、つながりたいのか?」
   再び、WiFiがつながる。
千嵐「……」
   千嵐、スマホを握りしめ外へ駆け出す。

〇道端
   スマホを手に、トボトボ歩く千嵐。
   と、すれ違ったおばあさんが転んだ。
千嵐「(思わず、手を伸ばす)」
   手を引く千嵐。お礼を言うおばあさん。
おばあさん「あの」
千嵐「?」
おばあさん「(スマホを指し)詳しいです?」
千嵐「はぁ、まぁ」
おばあさん「ウィフィがね」
千嵐「ウィ? あぁ(と、笑顔)」
   千嵐、WiFiをつないでやる。
おばあさん「すぐ切れちゃうんです」
千嵐「……これから、もっとつながるようになりますよ」
おばあさん「?」
〇別の道端
   須的に着信。相手は……千嵐だ。
   嬉しそうに電話に出る須的。

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