ヤギトヒツジ・ビヨンド【ショートショートシナリオ】
※20×20原稿用紙5ページ相当
※実写映像想定
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〇探偵事務所・中
ブランデーを味わっている門土礼[もんど・れい](35)。
やたらと目深に被った山高帽子。
そこに、鉄田舞(20)入って来る。
門土「……依頼人かい?」
舞「はい」
舞、チラと外を見て、
舞「見るからに、ガラの悪いヤギが来てます」
× × ×
二人の向かいに、ヤギのヤギ野。
ヤギながら強面。ふてぶてしい態度。
門土「確かに、見るからにガラが悪そうだ」
舞「白ヤギなのに、黒い感じがしますね」
ヤギ野、何かを取り出す。
門土「……それは?」
出てきたのは、ふわっふわの毛の塊。
ヤギ野「実はな――」
〇ヤギ野の回想~レストラン・中
薬物防止のポスター『手紙ダメ絶対』。
ポスターの下にサラダバー。
から、少し離れた席で、山盛りのサラダをむさぼるヤギ村。
呆れ顔で見つめる、ヤギ野。
ヤギ野「おい、いくらなんでも食べ過ぎだろ」
ヤギ村「大丈夫ですって」
ヤギ野「お前……ガミに手ぇ出したわけじゃないよな?」
むせるヤギ村。
ヤギ村「……そんなわけないじゃないすか」
と、紙ナプキンで口を拭う。
ヤギ野「お前それ……」
ヤギ村「なんですか?」
見ると、ナプキンが半分食いちぎられている。
もう半分は、ヤギ村の口に。
慌てて口からナプキンを出すヤギ村。
ヤギ村「……大丈夫すよ、うっかりです」
と、食べかけのナプキンを机に放る。
〇倉庫・中(夜)
食べかけの紙屑が、散らばっている。
部屋の隅に、人影(ヤギ影)が。
何かをむさぼっている。
と、激しく扉が開く。
現れたのはヤギ野。
ヤギ野「!」
視線の先のヤギ影……それはやせこけたヤギ村だ。
見つかっても尚、手を止めないヤギ村。
ヤギ野「……」
ヤギ野、ヤギから何かをひったくる。
それも紙屑。そこには宛名表記が。
――手紙だ。
ヤギ野「手を付けちまったか……お手ガミに」
ヤギ村「……返せ!」
ヤギ野「馬鹿野郎メェェ!」
紙屑を叩きつけるヤギ野。
ヤギ村、みすぼらしくその紙屑を拾い集め、食らう。
ヤギ野「アイツら!」
壁をドンっと叩くヤギ野。
その拍子に明かりが点く。
ヤギ野「……」
ヤギ野、苦々し気に、壁を見る。
そこには郵便局のロゴ。
『ヒツジさん郵便』。
『ヒツジ』の部分は手書き。
その横にはヒツジのイラスト。
ヤギの絵に、ふわふわの毛を、後から描き足したようだ。
と、
突然ドアが蹴破られる。
入ってきたのは、スーツ姿のヒツジ達。
中のヒツジ田、サングラスを取り、
ヒツジ田「ウチのモノに手を付けてくれたらしいな」
ヤギ野「おメェ~らが、黒幕か」
ヒツジ田「メェ王会の若頭じゃねぇか。ここがお別れの場所になるとはな」
周囲のヒツジ達、一斉に銃を取り出す。
とっさに物陰ににげるヤギ野。
銃声。
ヤギ野「しまっ――」
銃弾の雨に撃たれるヤギ村。
ヤギ村「(大イビキ)」
倒れて、眠るヤギ村。
ヤギ野「よくもぉ!」
と、銃を手にヒツジ達に突っ込むヤギ野。
素手で、ヒツジ達を叩きのめしていく。
ヤギ野「ヒツジが一匹! ヒツジが二匹!」
〇回想終わり~探偵事務所
舞「じゃあ、この毛は……」
ヤギ野「あぁ、ヒツジ野郎の毛だよ」
と、門土、おもむろに帽子を脱ぐ。
見事なハゲ頭。
ふわっふわの――羊毛を、頭にのせる。
門土「いいな……」
完。
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