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【つながる旅行記#6】紋別でジオラマに目覚める

前回、北海道駒ヶ岳を登った自分は今、紋別にいます――。

「どこだよ?」

そう思った人も居るだろう。
例によって自分は紋別がどこにあるんだか全然知らなかった。

というわけで紋別(もんべつ)編だ。

紋別市の位置

紋別市は……なんて説明したら良いのだろう。
北海道の北東のラインの半分くらいの位置にある市だ。

どんな説明だ。

東に向かうとサロマ湖がある

紋別市から海沿いに東に行くとサロマ湖があり、さらに行くと監獄で有名な網走がある。

ふとやってきたこの土地だが、当然自分にはなんのゆかりもない。
何があるのかもよくわからない。

そういう時にどうするのか。

そう、博物館へ行こう!

紋別市博物館

こんなこと言ってるが、実際は能動的に向かったわけではない。
なんとなく歩いていたら博物館の看板があったので入っただけである。

だがこういうことが自分の人生を変えたりする。

出迎えはトド

中に入るといきなりトドが出迎えてくれた。
ワイルドだ。

さっそく展示室を見ていく。

どうやら紋別市は鴻之舞鉱山(こうのまいこうざん)というものがあったらしい。

山頂に金鉱石の大露頭があったのを沖野永蔵が発見。それを住友が鉱山権を買収し、1919年に青化精錬を開始した。

まず無知な自分は住友というものがそんなに昔から活躍していたことに驚いた。ちゃんと就活してなかったことがバレる反応だ。
いや、それ以前に近代史の知識の無さを冷笑される。

そして青化精錬
青く……するの……?

調べてみると、青化とはシアン化のことらしい。
金銀は青化 (シアン化) アルカリ希薄溶液によく溶けるので、それを利用して鉱石からなんやかんやで金を抽出したようだ。

1943年に金山整備で休山するまで、産金量は29トンに達し、東洋一の金山となったらしい。
その後また採掘を再開するも、段々と鉱量や質が落ち、1973年に閉山。
最終的に開山から閉山までに、金65トン、銀967トンを生産。すごい。

(この産出量も情報源によって盛大にブレがあるのだが)

自分は金山と聞くと佐渡が浮かんでしまうが、まさか北海道にそんな凄まじい金山があるだなんて知らなかった。

北海道に金のイメージなんてないし。

(のちにゴールデンカムイという超人気漫画によって、北海道=金 という認識が当たり前になることを当時の自分は知らない)

そして金山だけではなく砂金掘りも盛んだったらしい。
1905年、紋別の漁師が八十士川(やそしがわ:アイヌ語だとヤッシュシナイ川)をさかのぼったところ、支流から大量の砂金を発見。
すぐに街中に知られてなんやかんやの大騒ぎで逮捕者を出したりしつつ、最終的に3トンの金を産出したという。

2022年4月時点での金の価値は1g8000円(税抜き)くらいなので、3トンというと3000kgで300万gだから……240億円

240億円がそこらに落ちてたら最高だな……。


博物館には他にも漁師の道具や動物の展示などもあり、ワンフロアながらもかなり楽しめる作りになっている。等身大の像なども配置していてわかりやすい。

紋別について理解するにあたり、博物館に来たのは正解だった。
自分にとって紋別との距離感がぐっと縮まった気がする。

そして、展示の中で自分が一番素晴らしいと思ったのはジオラマだ。

縄文時代の様子

フロアには小ぶりなジオラマがいくつか置いてある。
2m×2mの凄まじい大作とかでは全くない。

なのだが……なんだかやけに良い感じなのだ。

水のリアル感
水中にサケも居るぞ!
植物のリアル感
~凱旋~

思えば今までジオラマというものを色んな角度からしっかり見たことは無かったような気がする。なんとなく上から見て、「小さいパーツ使っててすごいなあ」くらいのものだった。

幸いなことに今このフロアに居るのは自分だけなので、ジオラマをあらゆる角度から舐めるように見ても恥ずかしいことはない。

いまだかつてないレベルで真剣にジオラマを味わっている自分がいる。

これはジオラマに目覚めたかもしれない。(自分では作らないだろうけど)

狩猟シーンのジオラマ
マンモスたち
狩猟側からの視点

こちらは狩猟シーンのジオラマなのだが、なんというかジオラマからストーリーが伝わってくる感じがすごい。

こういう狩猟シーンのジオラマは集団で襲い掛かって獲物に槍を刺してるシーンとかが多い気がするが、これは襲いかかる前のシーンだ。
シーンのチョイスがすごい。

そして角度を変えて狩猟する側の視点にすることで、まるで実際に自分が彼らの狩猟に参加しているような感じすらしてくる。

これがVR……?(違う)

そして次はこれだ。

アイヌの儀礼のジオラマ

これはアイヌの「イオマンテ」という儀礼を再現したジオラマだ。

ヒグマなどの動物を殺し、その魂であるカムイを神々の世界(カムイモシリ)へと送り帰すアイヌの祭りである。

なんだか上から見た分にはこじんまりとした印象しか受けないが……?

しかし角度を変えてみると一気に臨場感が湧いてくる。
こういう儀式を遠目から実際に見ているようだ。

めっちゃ模様しっかり描いてる

そしてアイヌの特徴的な模様を施した衣服もしっかりと着彩されている。
今の自分では理解の及ばない様々な祭具らしきものも、実物に忠実に作られているのだろう。

文字で見たり、あるいは絵で見たりしたものとはまた違う臨場感がジオラマにはあるのだなと思った。

良い。

今後あらゆるジオラマを角度を変えてじっくり見てしまいそうだ。

なんとなくで訪れた博物館だったけれど、思いのほか楽しめてしまった。
大満足で展示フロアを後にする。

左に収蔵展示室とやらがある

すると目に入ったのが「収蔵展示室」。
素晴らしい展示を見てテンションも上がったのでこっちも見ていこう。


迫力がすごい

すごい質感のマンボウが出迎えてくれた。
満身創痍すぎる。

どうやらここは動物の剥製などを置いているようだ。

トド(幼獣)

博物館に入ってすぐ出迎えてくれた巨大なトドも、子供の頃はこんなに可愛らしい姿なようだ。



子熊でも勝てる気がしない

なんだか動物園に来たような気持ちになってくる。
剥製なら、近くでじっくり見ても逃げることはない。
こうやって剥製を見るのも楽しいかもしれない。

オオカミ居るの!?

なんとオオカミの剥製があった。
凄みがある剥製だ。
てか紋別に居るのかオオカミ!?

アラスカ出身だった

アラスカのタイリクオオカミだった。


エトピリカ

エトピリカの剥製もあった。
実は知識に乏しい自分でも、エトピリカの名前だけは知っている。
学校で歌った合唱曲が「エトピリカ」だったからだ。

※こんな歌↓

当時の自分は「なんだよエトピリカって…」という感想で終了していたので、先生が言っていた「鳥の名前」という情報くらいしか知らなかったが、実際にこうやって(剥製だけど)姿を見る日が来るとは思わなかった。

しかしなんだか想像以上にファンキーな見た目してるな。
こんな生物が本当に空を飛んでいるのか……?

名前の由来はアイヌ語のエトとピリカをあわせたもの。
エトは「クチバシ」。ピリカは「美しい」。
美しいクチバシ」という意味らしい。

「美しい」というより「強そう」な気が個人的にはするけど。

鳥ゾーンを見ていく。
気になる鳥はないかなと思っていると、ふと一羽の鳥が気になった。

アカショウビン(中央右)

名前はアカショウビン

クチバシが長い

一見地味だが、クチバシがやけに長い鳥だ。
さっきエトピリカを見たからなのか、やけにクチバシが気になるようだ。

この鳥の名前はなぜかスッと頭に入ってきて覚えることが出来た。
自分が今後、生きたアカショウビンを見ることはあるのだろうか。

シマフクロウ

アイヌの村の守り神であるシマフクロウもいる。

シカでした


収蔵庫には他にもかつて紋別の捕鯨船で使っていた槍があったり、凄まじくレトロなかき氷機があったりと楽しめた。

収蔵庫を堪能し終えて外へ出る。

大満足で外へ

いやー、地域の歴史に加えて動物成分も吸収も出来たし、大満足だ。
紋別市立博物館、想像以上に楽しめた。

特にジオラマに関してはここに来たことで間違いなく認識が変わった。
紋別にお越しの際は、ぜひとも寄っていただきたい。

ふらっと入ってみるもんだ。


さて、時刻はまだ15時。
もう少し街を歩いても良いかもしれない。

どこへ行こうか。
なんとなく地図アプリを見る。


うん、山へ行こう


次回↓


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