「小噺付き、具体的な小説の書き方 〜夜行堂奇譚に見る様々な表現について」
前回、「夜行堂のような小説の書き方」というタイトルで記事を書かせてもらいましたが、沢山の好評を頂く一方で「もっと具体的に教えて欲しい」とのご意見を頂きました。
私のような溺死しないよう必死に息継ぎしているアマチュア小説家の書き方をお伝えするなど、如何なものかと思いましたが、私の表現でなければピンと来ないという方もいる筈。広い世界の何処かには、ひとりくらいには心のど真ん中に突き立つような表現となるかもしれない。そう思って書くことにします。
私は16歳の頃から1日も欠かさず、小説を書いています。短い時は30分、長い時は6時間程度。これをおよそ18年続けてきました。自分で言うのもなんですが、膨大な時間です。これだけ書いても本一冊出せないなんて、嗣人は本当にダメな奴です。
ここで何が言いたいのか言うと、「継続すること」の大切さです。勿論、表現は大切です。文法も、話の内容も重要です。でも、書き続けることができなければ形にはなりません。小説を書き始めることは簡単ですが、一個の物語として書き終わることは難しいことです。
たまに読者の方から書評をお願いされることがあります。特に若い方が多いように思いますが、お悩みの内容は「続きが書けない」というものでした。この悩みを持つ方に共通しているのは「設定資料」が膨大にあることです。
世界観や地理、歴史や登場人物の嗜好など、果ては律法まで設定してある方もいました。素直に凄いな、と思います。私はあんなに書けません。10年近く書き続けている夜行堂奇譚の設定資料さえないのです。
設定はある。でも、話が書けない。こういう方は多いかもしれません。最初の数ぺージだけ書いて、終わり。完結しない。身に覚えがある方も多いのではないでしょうか? 面白い話のネタはある。でも、書けない。勿体ないですよね。
今回、私はそうした方が作品を完結させる為の技術をお伝えします。勿論、自分に合う、合わないがありますから、あくまで参考程度にしてください。
本当に大切な部分というのは、言葉にした途端に本質から遠のいてしまいます。
文字にしてさえ、その本質は歪んでしまうのです。受け取る側が、自らの瞼を開いて本質を視てもらえたならと思います。偉そうな意味ではなく、自分の中の答えに繋がる一助となれば、という意味で。
書き方のあれこれ
さて、物語の書き方については、前回のnoteにてお話したので割愛します。
ここでは具体的な例を見てみましょう。
この場面を文字で表現する時、どのような表現の仕方があるでしょうか?
例1 見たままの情景をシンプルに表現する。
「遠くに朝倉の山々を眺めながら河川敷で焚き火に勤しむ。日が暮れ始めたので新調したばかりのガスランタンに火を灯す。テーブルの上に置いて眺めると、ゆらゆらと炎が揺れた。奥で炎をあげる焚き火の薪が、焼け落ちた音を聞いた」
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