09:不況下における外大生の就活について

「外大生のための勝ちにいく就活講座」の書籍版をアップした2019年初、世間はまだまだ売り手市場と呼ばれる状態で、「よほど失敗しない限り、外大生は今の時代、就職自体はできる」などと能天気なことを書いてしまいました。2020年、世界はコロナ禍に見舞われ、経済的なダメージはリーマンショックを超えるレベルとまで言われる有様になっています。ほんと、不確実で変化が速い時代とはこのことですね(まぁ、このようなことになることは、ビル・ゲイツ氏はじめ、わかっていた人にはわかっていたんですが…)。当初、相当な売り手市場下での外大生の就活について書いていたこともあり、インターン経由での話はスコープ外としていました。ですがあっという間にそんなことも言っていられない情勢になってしまったため、コロナ禍に限らず、不況下における外大生の就活についても触れておかねば、という予感がしましたため、恐らくは重要度が増してくるであろうと考えられるインターン経由の採用の話、また最近よく聞くようになったリファラル採用についてもスコープに入れることにし、当該note(2020年5月14日追記したこれです)を追加した上で「外大生のための勝ちにいく就活講座」マガジンに格納致します。

ここで扱っていくのは以下の事項となります。

―22卒以降の売り手市場、買い手市場の見通し
―手遅れになる前に外大生ができる対策
―インターン経由の採用
―補足:リファラル採用

リファラル採用は現時点ではそのコースに乗ることができる学生は多くなく、気にしても仕方ないレベルの話も含みますので、補足という形にしました。まずは「将来社会に出て働くつもりの現役外大生に向けた『大人語講座』」のQ&Aコーナーでも触れている、22卒以降の就活市場がどの程度悪化するのか、どの程度恐れるべきことなのか、という心構えの点について再度確認しておきたいと思います。続いて、その環境下において、外大生がどう対策するべきなのか、という話に入ります。コロナ禍がいつ頃収束し、いつ頃経済が戻るか、という予測は既に大人語講座の中でもしているとは言え、かなりの不確実性のなかでの戦いになることは否定できないと思われます。また、この環境変化に呼応する形で通年採用が経団連と大学で合意されています。詳しくは本noteの当該項目で見ていただければと思いますが、こうなってくると新卒採用というのはなかなかに、人によってはリーマンショックの頃のような状況に放り込まれる可能性があります。あまり不安を煽りたくはないのですが、普通に考えれば、狙い通り内定獲得できる人とそうでない人の格差が激拡がりする未来が見えています。もちろん未来のことですからどうなるかはわかりませんが、最悪の未来に備えておき、良い未来がきたらラッキーぐらいに準備しておいた方が身のためかと思います。基本、どんなに遅くても2年生の後半からは就活を意識しないと不味く、だとすると、他大生がやっているように1年生、2年生の時期の過ごし方も戦略的に考えなくてはならず、外大生も主専や地域基礎やGLIPに忙殺されて勉強だけをやっている場合ではない、という話になってきます。クソですよね。大学は職業訓練所ではなく、学問の場です。就活から逆算して考える学生生活ほどクソなものはありません。だから就活の話を大人語講座で取り上げるのは嫌なんです、と何度も何度も言っているのですが、そのあたりの感情はここではグッと堪えて、心を機械のようにして外大生ができる対策についてお話していこうと思います。最後は、インターン経由の採用やリファラル採用についての大人語講座的な示唆を記して本noteを終わります。都市伝説的に語られるコネ採用の実態についてもお話しますので、そちらはお楽しみ程度で。

では、いつものように免責事項からです。

<免責事項>※いつもとほぼ重複しますが念のため記します

本題に入っていく前に心苦しいお断りがあります。大変申し訳ないのですが、当たり前のことながら、ここから先の内容は「『必ず』成功できる」という類のものではありませんのでご注意ください。「『絶対』狙い通り内定獲得できる」ノウハウが世の中にあれば、こんな楽な話はありません。残念ながらそれは不可能です。我々が提供できるのは、あくまで、一定の定量的な経験に基づく方法論です。これは後でも触れますが、確実に成功する方法を示すのは難しいのですが、確実に失敗する方法を示すことは比較的容易です。以後示していく内容は、確実に失敗する外大生の事例を数多く見てきた視点から失敗をなるべく避け、成功する確率をできる限り高める、という考え方でお伝えしていく内容です。よく言われることなのですが、就活というのはどうしても「運」の要素が絡みます。面接という手法を取り入れる以上、あるいは最終的には人が内定者を選ぶ以上、合う/合わないという相性の問題は出てきてしまいます。本気で合わない人が自分の面接官になってしまった場合、それはもう運が悪かったとしか言いようがないことになります。一方で、今も昔も「実力」が重要な要素であることも疑いようのない事実です。ここで言う「実力」が何を示すのかは講座の肝になってくるので講座内で詳述しますが、その「実力」を最大限に高めておくことで(実力を下げる方法を取らないことで)、「運」が回ってきたときに確実に自分のものとする、というのがコネ無し就活生の基本的な就活の戦い方になってきます。そのあたりの機微について、本題に入る前に明記しておきたいと思い、補足させていただきました。

また、本講座は自分の関心があるところをつまみ食いできるように設計しているつもりですが、それでもどうしても前回までの内容を踏まえないと、また、大人語講座の内容を踏まえないと、理解度が浅くなってしまう場面もあるかとは思いますのでその点も頭に入れて読み進めていただけますと幸いです。

では、本題に入っていきましょう。

<22卒以降の売り手市場、買い手市場の見通し>

22卒以降の見通しについては、大人語講座のQ&Aコーナーで触れていますから、ほぼそのまま以下で再録することに致します。途中ところどころ本講座用に表現を変えていたり、特に後半部分は大きく異なりますので、読み飛ばし過ぎて見落とさないようにご注意ください。

まずはデスクトップリサーチから入っていきます。

現時点では21卒の就活が(一応)佳境となっており、22卒の見通しに関する話題の総量はそこまで多くない印象です。何となく新聞等の論調では売り手市場から買い手市場への回帰の流れがくるのではないか、といったところで先行きは明るくなさそうな気配が漂います。本当にそうなのでしょうか?

22卒ドンピシャの情報は今のところすぐには出てきませんが、比較的まともそうな調査としては以下がヒットします。株式会社ディスコが3月末に国内企業に対して実施した調査で、無料公開されている調査結果では従業員数、業界で分析軸を切ることができます。このレポートの最後の設問に「今夏のインターンシップへの影響」に関する設問があります。

図53

この全体のスコアだけを見ると、計画通り実施予定とする企業は17%のようです。ただ、分析軸を変えると違う見方ができます。

図54

従業員数1,000人以上の企業では、計画通り実施予定とする企業が全体スコアからやや増えて21.3%となります。また「規模、形式、期間などを見直して実施見込み」という企業は16.6%となり、合計すれば37.9%は何等かの形で夏のインターンシップは実施予定ということです。4割弱で、決して少なくない数字じゃないでしょうか。加えて「検討中」とする企業は50.3%とのことですが、ここをどう捉えるかです。普通に考えれば、従業員規模1,000人以上という大きめ企業の約4割が通常通り夏にインターンシップを実施する=意識が高い優秀な学生を囲い込みたい、と考えているわけですから、はっきり言って「検討中」と回答した50%程度の企業は悠長に検討している場合ではなくて、ここで何もしなければ優秀な人材を自社以外の4割の企業に取られてしまうわけで、「何もしない」という意思決定はビジネス的な競争力がある企業としてはあり得ないと思います。検討しているのだとしたら、コロナ禍が続くシナリオ下において「サマーインターンのデジタライゼーションによって規模や期間を見直した上での実施が可能なケーパビリティが自社にあるかどうか」といった、何もしないことも含めた検討をしている、要は競争力が高くない企業である、と考えるのが自然じゃないでしょうか。外大生は大きめの会社を志望する傾向にあるとすれば(というか外大生に限らずそうなんですが)、形式は変われどサマーインターンは何等かの形で実施される想定でいた方が身のためかと思います。もう一つ留意しておくなら、この50%程度の検討中と回答した企業のうち、恐らくB2C商材メインの企業よりはB2B商材メインの企業の方が実施のセンが濃厚ではないかと推察します。B2B企業では営業活動のDXを進めようと腐心しているところが多く、その流れでインターンのデジタライゼーションも、取引先とトラディショナルな付き合いをしがちなB2C企業よりは進めやすいのではないか、というただの推測です。

また、ディスコの調査よりは信ぴょう性が下がるのですが、以下のような調査もヒットします。

図55

信ぴょう性が下がると書いてしまった理由は、回答した企業が180社とディスコ調査に比べてサンプル数が少ないのと、その企業の規模や業界といった分析軸をどこまでブレイクダウンできる割り付けなのかが不明なためです。要は調査概要が不明なのです。とは言え一応結果を見れば、この調査では22卒の採用計画は6割弱が「計画変更なし」と回答したとのことです。この「計画」というのも、採用人数の計画なのか、採用スケジュールの計画なのか、判然としません。ちょっと怪しい調査に見えるので、あくまでこちらの調査結果は参考までに留めておいた方が良さそうですね。

ということで軽くネットという有象無象の情報が溢れる中で、ちゃんとした調査を実施しているところを見つけてその調査結果を参照し、かつ働く人の角度から解釈しただけですが、少なくともサマーインターンについては大企業、特に競争力の高い(就職ランキング上位になりがちな)B2B企業を中心にオンライン開催は想定しておいた方が良いのではないか、という予測はつきます。上記調査は日本国内の企業とのことですが、国を跨いで採用活動を展開するグローバル企業についてはサマーインターンをオンラインで実施できるケーパビリティは当たり前のように持っていますから、まぁ普通にやるんじゃないですかね。そもそも採用活動自体もコロナ禍以前からビデオ面接などよくある話です。もちろん、実施できない企業も出てくると思いますし、そちらの方が報道としては目立ってくるはずですが(その原理は書籍『FACTFULNESS』参照)、実施できない企業はコロナ禍による業績悪化で社内インフラのデジタライゼーションをする余力がなくなってしまい、そうであるがために本業ばかりか人材獲得においても競争力を失ってしまう企業でしょう。か、過度に各所に忖度する企業か。企業にとってはかなりの分かれ道にいることは間違いないですが、就活する身としてはどの企業がこの環境下でもサマーインターンを実施できるのかというレジリエンスの強度を冷静に見ておけば良いのではないでしょうか。

さて、次に気になるのは採用人数がどうなるのか、ということですね。こればっかりは現時点では流石に何とも言えませんが、やはりリーマンショックをベンチマークに心積もりをしておくぐらいが良いところじゃないでしょうか。あの頃、なかなかに厳しい状況でした。ちなみに本就活講座の講師陣には就職氷河期世代やリーマンショックど真ん中世代も含まれますので結構リアルな肌感を持っています。リーマンショックの頃の話で言えば有効求人倍率が1.23倍(ちなみに2020年3月の大卒求人倍率は1.83倍)という数値になったこともあり、これは感覚的には、仮に所謂人気企業ばかりにチャレンジするとしたときに、内定は一つ出れば良い方で、一つも内定獲得できずに就活のために留年せざるを得ない学生もまぁまぁいる、という感覚でした。一人で複数内定を得られる学生というのは一握りの超優秀学生に限られる状態となり、今のように複数内定を得てからどこの企業に行こうか悩む、というある意味贅沢な世界とはまるっきり様相が違いました。リーマンショックの時は大企業は良い時期の60-70%に採用人数を絞った印象があります。今、コロナ禍で企業の業績は世界的になかなかに酷い状態になっていますから、同レベルの世界観が来るかも、という心積もりはしておいた方が良いかもしれません。現実的にはいつぐらいまでこの酷い状態が続くのか、というのはマッキンゼーが無料公開している以下のレポート(全編英語)が参考になりそうです。こちらではシナリオが9つ設定されているので、外大生も複数シナリオを見据えた心積もりが可能になります。加えて、このレポートをちゃんと読み込めば、就活が本格化する3年生と言わず、1年生、2年生も多磨で勉強だけしていれば良いという状況ではなくなりそうなシナリオも見え始めます。重要なところなので一緒に中身を見ていきましょう。まず、超ざっくり言えば楽観シナリオでは経済の概況としては2020年の

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