08:Q&A-コロナ情勢を受けた22卒以降の外大生の就活見通し等について
早速、大人語講座書籍版受講者から質問を頂きました。現在は21卒の就活が(オフィシャルには)本格化していくなか、コロナ情勢を受ける22卒以降の就活の見通しをどう見ているか、もしくは大人語を駆使するとどう見ることができるか、またどういう心構えでいれば良いか、という質問です。ゆるゆると回答致します。
まず始めに、我々講師陣は就活というものについて、こういうセミナー系のコンテンツとして扱うことを心の底から微妙に感じていることを、改めてになりますが申し上げておきたいと思います。正直、実に筆が進みません笑 というのも、これは「外大生のための勝ちにいく就活講座」でも言っていることなんですが、そもそも就活というのは当たり前ながら人それぞれの話であって、個別性が高い話です。正解があるとかないとか、そういうこと以前に、就活する人の数だけ道があって、それぞれに良いも悪いもないわけです。最終的に自分のキャリアを考え、選ぶのは結局は自分なのだから、それに対して自分が納得できるか否かということで、そういう意味で個別性が高い。にも関わらず、世の中にはなんと「就活斯くあるべし!」みたいな、あたかも正解はこれである、みたいなコンテンツが溢れていることか。あげく、怪しげなセミナーや法外な金額の情報商材の類まで出てくる始末。就活を前にして不安に感じる学生の心につけこんで不安を煽り、ありもしない正解を、学生よりは勝っているであろうなけなしの社会経験を武器にそれらしく語る大人達もどうかと思いますし、就活を始めるまでに長年の学校教育によって学生に植え付けられた正解信仰とでも言うべきものもどうかと思いますし、とにかく、就活を題材にすることで、我々がそういう微妙なゾーンと同じところにいるように見えてしまうことが心の底からイヤなのです。加えて、学生が一斉にリクルートスーツを着て、他の学生と同じように、出会い頭の数回の面接を上手く乗り切るために小手先の面接テクニックを磨いて空虚な騙し合いをする、昔ながらの就活という文化自体も微妙だと感じています。ですから、とにかく就活について大人語講座で扱うことは不本意なのです。じゃあなんで「外大生のための勝ちにいく就活講座」があるのか、なんで今回就活関連の質問に答えるのか、と言われれば、そんな微妙な就活であっても仕方なく取り組む外大生がいて、かついざ取り組むとなった時に他大生と比べて外大生が持てる情報量が劣後しがちで、毎年助けを求める外大生が後を絶たないためです。まさに、仕方なく、です。
また、22卒以降はちょっと今までの昔ながらの就活とは潮目が変わり始めている感もあります。後輩達が不安に感じており、我々が就活について語ることは不本意だと前々から明言しているにも関わらず実際に表題の質問が出ました。大人語を駆使すると22卒以降の就活がどう見えてくるか、という、大人語講座の題材にもなりそうな聞き方をされていますので、回答することにします。では、参ります。
まずはデスクトップリサーチから入ってみましょうか。
現時点では21卒の就活が(一応)佳境となっており、22卒の話題の総量はそこまで多くない印象です。何となく新聞等の論調では売り手市場から買い手市場への回帰の流れがくるのではないか、といったところで先行きは明るくなさそうな気配が漂います。本当にそうなのでしょうか?
22卒ドンピシャの情報は今のところすぐには出てきませんが、比較的まともそうな調査としては以下がヒットします。株式会社ディスコが3月末に国内企業に対して実施した調査で、無料公開されている調査結果では従業員数、業界で分析軸を切ることができます。このレポートの最後の設問に「今夏のインターンシップへの影響」に関する設問があります。
この全体のスコアだけを見ると、計画通り実施予定とする企業は17%のようです。ただ、分析軸を変えると違う見方ができます。
従業員数1,000人以上の企業では、計画通り実施予定とする企業が全体スコアからやや増えて21.3%となります。また「規模、形式、期間などを見直して実施見込み」という企業は16.6%となり、合計すれば37.9%は何等かの形で夏のインターンシップは実施予定ということです。4割弱で、決して少なくない数字じゃないでしょうか。加えて「検討中」とする企業は50.3%とのことですが、ここをどう捉えるかです。普通に考えれば、従業員規模1,000人以上という大きめ企業の約4割が通常通り夏にインターンシップを実施する=意識が高い優秀な学生を囲い込みたい、と考えているわけですから、はっきり言って「検討中」と回答した50%程度の企業は悠長に検討している場合ではなくて、ここで何もしなければ優秀な人材を自社以外の4割の企業に取られてしまうわけで、「何もしない」という意思決定はビジネス的な競争力がある企業としてはあり得ないと思います。検討しているのだとしたら、コロナ禍が続くシナリオ下において「サマーインターンのデジタライゼーションによって規模や期間を見直した上での実施が可能なケーパビリティが自社にあるかどうか」といった、何もしないことも含めた検討している、要は競争力が高くない企業である、と考えるのが自然じゃないでしょうか。外大生は大きめの会社を志望する傾向にあるとすれば(というか外大生に限らずそうなんですが)、形式は変われどサマーインターンは何等かの形で実施される想定でいた方が身のためかと思います。もう一つ留意しておくなら、この50%程度の検討中と回答した企業のうち、恐らくB2C商材メインの企業よりはB2B商材メインの企業の方が実施のセンが濃厚ではないかと推察します。B2B企業では営業活動のDXを進めようと腐心しているところが多く、その流れでインターンのデジタライゼーションも、取引先とトラディショナルな付き合いをしがちなB2C企業よりは進めやすいのではないか、というただの推測です。
また、ディスコの調査よりは信ぴょう性が下がるのですが、以下のような調査もヒットします。
信ぴょう性が下がると書いてしまった理由は、回答した企業が180社とディスコ調査に比べてサンプル数が少ないのと、その企業の規模や業界といった分析軸をどこまでブレイクダウンできる割り付けなのかが不明なためです。要は調査概要が不明なのです。とは言え一応結果を見れば、この調査では22卒の採用計画は6割弱が「計画変更なし」と回答したとのことです。この「計画」というのも、採用人数の計画なのか、採用スケジュールの計画なのか、判然としません。ちょっと怪しい調査に見えるので、あくまでこちらの調査結果は参考までに留めておいた方が良さそうですね。
ということで軽くネットという有象無象の情報が溢れる中で、ちゃんとした調査を実施しているところを見つけてその調査結果を参照し、かつ働く人の角度から解釈しただけですが、少なくともサマーインターンについては大企業、特に競争力の高い(就職ランキング上位になりがちな)B2B企業を中心にオンライン開催は想定しておいた方が良いのではないか、という予測はつきます。上記調査は日本国内の企業とのことですが、国を跨いで採用活動を展開するグローバル企業についてはサマーインターンをオンラインで実施できるケーパビリティは当たり前のように持っていますから、まぁ普通にやるんじゃないですかね。そもそも採用活動自体もコロナ禍以前からビデオ面接などよくある話です。もちろん、実施できない企業も出てくると思いますし、そちらの方が報道としては目立ってくるはずですが(その原理は書籍『FACTFULNESS』参照)、実施できない企業はコロナ禍による業績悪化で社内インフラのデジタライゼーションをする余力がなくなってしまい、そうであるがために本業ばかりか人材獲得においても競争力を失ってしまう企業でしょう。か、過度に各所に忖度する企業か。企業にとってはかなりの分かれ道にいることは間違いないですが、就活する身としてはどの企業がこの環境下でもサマーインターンを実施できるのかというレジリエンスの強度を冷静に見ておけば良いのではないでしょうか。
さて、次に気になるのは採用人数がどうなるのか、ということですね。こればっかりは現時点では流石に何とも言えませんが、やはりリーマンショックをベンチマークに心積もりをしておくぐらいが良いところじゃないでしょうか。あの頃、なかなかに厳しい状況でした。有効求人倍率が1.23倍(ちなみに2020年3月の大卒求人倍率は1.83倍)という数値になったこともあり、これは感覚的には、仮に所謂人気企業ばかりにチャレンジするとしたときに、内定は一つ出れば良い方で、一つも内定獲得できずに就活のために留年せざるを得ない学生もまぁまぁいる、という感覚でした。一人で複数内定を得られる学生というのは一握りの超優秀学生に限られる状態となり、今のように複数内定を得てからどこの企業に行こうか悩む、というある意味贅沢な世界とはまるっきり様相が違いました。リーマンショックの時は大企業は良い時期の60-70%に採用人数を絞った印象があります。今、コロナ禍で企業の業績は世界的になかなかに酷い状態になっていますから、同レベルの世界観が来るかも、という心積もりはしておいた方が良いかもしれません。現実的にはいつぐらいまでこの酷い状態が続くのか、というのはマッキンゼーが無料公開している以下のレポート(全編英語)が参考になりそうです。こちらではシナリオが9つ設定されているので、外大生も複数シナリオを見据えた心積もりが可能になります。加えて、このレポートをちゃんと読み込めば、就活が本格化する3年生と言わず、1年生、2年生も多磨で勉強だけしていれば良いという状況ではなくなりそうなシナリオも見え始めます。重要なところなので一緒に中身を見ていきましょう。まず、超ざっくり言えば楽観シナリオでは経済の概況としては2020年の
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