加藤 綴(かとう つづり)

日本の小学校に教員として勤めています。日本の伝統的な教育方法である「生活綴方」について、学んでいます。日本作文の会の研究会や、地域の作文サークルで学んでいます。handwriting(手書き)と keyboarding(キーボードに打つこと)のちがいについても研究中。

加藤 綴(かとう つづり)

日本の小学校に教員として勤めています。日本の伝統的な教育方法である「生活綴方」について、学んでいます。日本作文の会の研究会や、地域の作文サークルで学んでいます。handwriting(手書き)と keyboarding(キーボードに打つこと)のちがいについても研究中。

マガジン

  • 国分一太郎『小学教師たちの有罪』を読む

    戦後の生活綴方の牽引役・国分一太郎の遺言とも言える著作です。国分一太郎が治安維持法で検挙されたいきさつや特高警察の砂田周蔵とのやりとりが克明に描かれています。どんな内容なのか、内容から今でも学べることば何かなど、読書メモとしての記事を書いています。

  • 教育雑記

    学校現場での経験から学んだことや子育てからヒントを得たこと、教育と市場の問題など、はばひろい話題を記事にしています。

  • 生活綴方的教育方法とはなんだろう

    生活綴方、作文教育、日本の伝統的な教育方法に興味をもっている方におすすめの記事です。私自信が自分の学習のためにまとめている記事ですが、一緒に学ぶ人がいてほしいという願いがあります。ぜひ、一緒に学びませんか?

最近の記事

  • 固定された記事

「生活と表現」〜国分一太郎と大田堯のことばから〜

 生活綴方や生活綴方的教育方法について、これまでいくつか記事を書いてきました。その中で生活綴方は国語科作文と、どう違うのかという話題がありました。今回の記事は、その具体例を示したいと思います。 国分一太郎著『新しい綴方教室』(1951年)から  ある例文を国分は著書の中で示します。  「私の家の」という言葉が重複しています。このような文をもし自分が担任する子が書いてきたら、または我が子が宿題で書いていたら、あなたはどうしますか?  もし現在の国語科の指導の通りに添削す

    • 国分一太郎『小学教師たちの有罪』を読む17

      前回の記事の続きです。この本はけっして読みやすい本ではありません。 28 空中楼閣 戦前の生活綴方教育運動に参加した教師たちが、東北地方を中心に検挙され、有罪判決を受けたり、不起訴になったとしても教育行政的に不利益な処分をさまざまにうけたりしています。この事件の期間中には、少なくない教師が警察の監房で亡くなったり、拘留中に病状が悪化して亡くなったりしています。村山俊太郎もこのときに得た病気のせいで、敗戦後の1948年に死去しています。  国分はこのような目にあった人々、い

      • 国分一太郎『小学教師たちの有罪』を読む16

        前回の記事の続きです。 23 執筆活動と文集作成 国分は自分の書いた雑誌の原稿や単行本の要約と、その公表の意図についてまとめる作業をさせられることになります。そこには国分が児童の作品をのせた文集も含まれています。それらには「証第○○号」と赤い紙が貼られていました。  文集には砂田が引いたとみられる赤線がありました。国分が文集に児童全員のものを載せたいがために、ある児童のこれぞという作品でないものをしかたなく掲載した箇所にまで赤線が引かれ、「反封建」と朱書きされていました。

        • 国分一太郎『小学教師たちの有罪』を読む15

          前回の記事の続きです。 22 教育科学研究会のこと  国分は、砂田との取り調べのなかで、教育科学研究会(教科研)のことについても聞かれます。  教育科学研究会は、民間教育研究団体の一つで、阿部重孝、城戸幡太郎らの編集になる岩波書店の講座『教育科学』(1931〜33)にはじまります。それは、従来の観念的な教育学にたいして、教育の事実を実証的にとらえ、解明しようとしました。この講座の基本方針をうけつぎ、雑誌『教育』が1933年4月から、城戸幡太郎、留岡清男の編集によって刊行

        • 固定された記事

        「生活と表現」〜国分一太郎と大田堯のことばから〜

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        • 国分一太郎『小学教師たちの有罪』を読む
          16本
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          9本
        • 生活綴方的教育方法とはなんだろう
          9本

        記事

          テクノロジーで失われる教育機会 〜令和時代の「問と答の間」〜

           先日、同じ学年を担当する教員と、効率化を求めて安易にテクノロジーに頼らないほうがいいよね、という話になりました。  その先生が言うには、テクノロジーによって「特活力」が失われるというのです。具体的には、人と人が直接交渉することをとおして育む調整力や交渉力について言及していました。 1 ある希望調査  学校では教科の授業のほかに、特別活動と呼ばれる時間が公的なカリキュラムに位置付けられています。話し合いを通して、何かを決めたりする活動もその一環です。いわゆる学級会というの

          テクノロジーで失われる教育機会 〜令和時代の「問と答の間」〜

          ある綴方の授業 高井有一『真実の学校』から

           昭和七年(1932年)ごろの、秋田県のある教室での授業の様子を、作家の高井有一氏が、小説の中で再現したものを以下に引用します。教師・鈴木は、実在の人物です。当時、時間割には「綴方」の時間がありました。現在、作文や綴方を書く公式な時間割はありません。そういった時間割は文科省が定めています。 しかし、こういった授業は、現在も心ある生活綴方教師によって受け継がれています。この夏(2024年)の、全国作文教育研究大会でも、引用のような心ふるえる報告を聞きました。  私はこの高井

          ある綴方の授業 高井有一『真実の学校』から

          国分一太郎『小学教師たちの有罪』を読む14

          前回の記事の続きです。 19『生活学校』編集グループ 20『生活学校』の罪状 国分は、雑誌・生活学校を購読していました。自身が購読するだけでなく、自分がつとめる学校の教師や近村の教師仲間にも読者になってもらっていました。雑誌購読のきっかけは編集を担当する戸塚廉からの購読依頼の手紙でした。版元は扶桑閣という出版社です。雑誌を出し始めたのは国分の尊敬する池袋・児童の村小学校の野村芳兵衛でした。 国分は砂田に雑誌・生活学校の関係者とのかかわりを聞かれます。砂田は雑誌・生活学校

          国分一太郎『小学教師たちの有罪』を読む14

          国分一太郎『小学教師たちの有罪』を読む13

          前回の記事の続きです。 この本と並行して、小説家・高井有ーの『真実の学校』(1980年)を読んでいます。『真実の学校』は、北方性教育運動とその弾圧を背景とした小説で、成田忠久や佐々木昂(太一郎)といった実在の人物が本名で登場するので、この時代の状況を具体的に想像するのに役立っています。 また1930年代以降の哲学や思想界の状況を知るために「フランクフルト学派」についての本も読んでいます。日本でマルクス主義者が弾圧されているころ、欧州・ドイツでもマルクス主義も含めて研究して

          国分一太郎『小学教師たちの有罪』を読む13

          子どもの嘘の中に真実がある

           生活綴方の背景にある考え方や、生活綴方的教育方法について考え続けています。生活綴方のしごとは「本当のことをありのままに綴らせ、それをもとに話し合うこと」を通して人格のよりよき発達を目指していくわけですが、そこにいたるまでのほうが困難なのではないか、ということを感じることがあります。むしろ担任ひとりの働きかけによって子どもが全てをありのままに綴るようになるということは、とうてい不可能なのではないかと思うことすらあります。 (生活綴方やその背景についての記事は以下をご参照くださ

          子どもの嘘の中に真実がある

          国分一太郎『小学教師たちの有罪』を読む12

          前回の記事の続きです。 15 北日本国語教育連盟 次に砂田は1935年の1月に創立された「北日本国語教育連盟」について取り調べていきます。今回も砂田は、既定路線に沿うように取り調べを行い、事実をでっちあげていきます。 「北方性教育文化運動を主唱した北日本国語教育連盟の活動分子たちは、プロレタリアートの独裁によって世界共産主義社会の実現を目ざすコミンテルン(国際共産党)の支部であるところの日本共産党の戦略、なかんずく『三二年テーゼ』の方針を支持し、労働者階級の団結と闘争、そ

          国分一太郎『小学教師たちの有罪』を読む12

          全部でいくつ? 〜生活の中の算数〜

           昨日は、とある教育研究会に参加してきました。その会には、もう10年以上通っていて、実践報告が中心の研究会です。  教員の実践報告とは、教師が自分の教育現場で行った実践、つまり授業や学校行事、特別活動、教育方法の改善などについての詳細をまとめた報告です。これには、実施した内容の説明、使った教材や手法、児童・生徒の反応、成果の評価、反省点や今後の課題などが含まれることが多いです。  また、子どもの姿をよく観察・記述し、子どもの変容と教育的な働きかけとの関連を考察します。この

          全部でいくつ? 〜生活の中の算数〜

          映画「ラストマイル」と労働組合組織率

          10月21日(月)の朝日新聞朝刊「声」欄より  朝日新聞の投書欄に以下のような感想が載っていて、思うことがありました。 投書を書いた村野さんの見た映画はおそらく「ラストマイル」という映画です。題名が書かれていなかったのは、編集の過程でカットされたのかもしれません。わたしも見た映画なのでピンときました。このような新聞の投書には人々の生活実感がこもっていて、広い意味での「生活綴方」だと感じます。 現代は、村野さんのいう「見えないつながりの中でお互いに支え合いながら生きている

          映画「ラストマイル」と労働組合組織率

          「note student版」を切望します

          普及した一人一台端末GIGAスクール構想が本格化して、実感として丸5年がたちました。思えば2020年、新型コロナウイルス感染症の拡がりとともに、導入が本格化した児童一人一台端末でした。 わたしは自校のICT教育担当者として端末の導入、教室の授業での活用、オンライン授業での活用、そして現在の家庭での活用も含めた日常的活用まで、校内のICT環境の整備やルール作り、教育委員会への機器や環境整備の要望、児童への指導実践を積み重ねてきました。 わたしの勤務校では500人以上の児童が

          「note student版」を切望します

          国分一太郎『小学教師たちの有罪』を読む11

          前回の記事の続きです。やっと本書を半分読み終わったというところです。 14 コミンテルン 砂田は、前回の取り調べと同様に、国分が直接返答したことを書くのではなく、砂田の知識を披瀝するように調書を書いていきます。  日本共産党の二七年テーゼについて聞かれ、すらすら答えられるほど覚えていない国分がもじもじしていると、砂田は 「帝国主義戦争反対、中国革命介入反対、ソ連邦擁護、植民地独立、議会の解散、君主制廃止、十八歳以上の男女普通選挙権、集会の自由、結社権、団結、その他言論出版

          国分一太郎『小学教師たちの有罪』を読む11

          国分一太郎『小学教師たちの有罪』を読む⑩

          前回の記事の続きです。 13 党 特別高等警察官の砂田は、国分に日本共産党との関わりをたずねます。はじめ国分は、自分のしごとと共産党とはなんの関係もないと答えます。国分とともに北日本国語教育連盟の理事となった東北6県12名のメンバーに、共産党員は一人もいませんでした。また、共産党から命令されるということもなければ、上部団体・外郭団体からの支持をうけるということは、けっしてなかったと国分は明言します。  そう主張する国分に対して砂田は、治安維持法の調べの順序として、共産党の

          国分一太郎『小学教師たちの有罪』を読む⑩

          国分一太郎『小学教師たちの有罪』を読む⑨

          前回の記事の続きです。 12 十二月八日 1941年の12月8日は日本人にとって、またアメリカ人にとっても忘れられない日でしょう。日本軍がハワイのオアフ島真珠湾にあったアメリカ海軍の艦隊や基地を攻撃し、太平洋戦争が始まった日です。国分一太郎は、この日をどのように迎えたのでしょうか?  国分の収監されていた監房が、朝から異様な雰囲気であることに国分は気付きます。こそこそと監房担当のわかい巡査と古参の斎藤巡査部長が話しているのを目にします。聞き耳を立てますが、話のなかみはわか

          国分一太郎『小学教師たちの有罪』を読む⑨