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親子ワーケーションですごくいいことがあった話 【体験入園&ファミリーワーケーションin鳥取県八頭町】

4歳になる私の上の娘、ふだん穏やかでおとなしい娘が、聞いたこともないような大声でわめいて泣いている。聞けば二泊三日で訪れた鳥取県八頭町から帰りたくないのだという。

ワーケーションにもいろいろあるのだと思うが、こんな素敵なワーケーションに出会えたので、あ、そういういいこともあるんだ、と見る目が変わった私の体験を少しシェアしてみたい。

そもそも私の知っていたワーケーション

私は会社員であるのと同時に大学で研究職もやっていて、そのテーマのひとつにスマートシティがある。データやデバイスでまちが便利になるというやつだが、その先にある目的のひとつが多拠点居住である。
今後日本において(もう少し先には世界的にも)人口は減ってゆくなか、まちや地域を維持する一つの方法は、同じ人がいくつかのところに住むことだ。もしも医療情報や学校での学習の進捗が地域を越えて共有されたり、住民税が分納できたりすれば多拠点居住がより現実的になるという人もいるだろう。そのためにはデータの広域的な活用に対して道が開かれる必要があり、私はそういう領域で研究を行っている。
ふだんはデータがどうのモデルがどうの、と言っている人間だが、こういう話をする割にワーケーションやったことないんですよね、は致命的にまずい。エアプはいかん。というわけで以前から興味はあった。

加えて、経営的にワーケーションが効果をもつ、という早稲田大学大学院 入山章栄先生のプレゼンも気になっていた。人間の内部にある多様性(自己内多様性)を出せば、年齢やジェンダーや国籍が多様でなくとも、様々な側面をもった人がいるという多様性が達成できる。そういう組織を望む人は多いし、私もいろいろとっ散らかったことをやっているのをあちこちに持ち込みたいタイプの人間だ。だったら、やったらきっといいことあるに違いない、とも思っていた。


どんなプログラム?

私が参加した【体験入園&ファミリーワーケーションin鳥取県八頭町】は、ワーケーションプログラムとしては珍しい未就学児童をもつ家族を対象としたプログラムだった。大人だけ、あるいは様々なプログラムに自力で参加できる小学生以上の家族向けとは違い、3~5歳の子どもたちに様々な体験をさせてくれる受け入れ先がなければならない。そこで今回お世話になった大変心強い味方が認定NPO法人ハーモニィカレッジの運営する認定こども園 ぱっかである。

裸馬に乗る機会は東京住まいにはそう滅多にない

名前が示すように「ぼくじょうようちえん」として平成28年に鳥取県から認証を受けたユニークな園であり、ここにお世話になって馬とふれあいながら過ごすプログラムと、コミュニティ複合施設隼labで親子それぞれの体験をする(つまり親は仕事する)プログラム、その他様々な体験で構成されていた。

娘に起きた変化

我が家には上記のほか0歳の娘もいるものの、両親はわりと旅行慣れしているし、レンタカーでの移動もよくしているのでそこは問題ないのだが、気になっていたのは上の娘の人見知りだった。私がまさにそういう子どもだったので気持ちはよくわかるのだが、知らない子と一緒に遊ぼうと言い出せない、親が見えるとそっちに来てしまう。はたして親が仕事できるほどプログラムに参加してくれるだろうか、という疑問はあった。

しかし実際は、着いた初日から一緒に行動した全4家族の他の子どもたちとぱっかの職員やボランティア(カウンセラーと呼ばれる)、そして馬たちと1,2時間接しているうちに名前を覚え、その後の行動も共にしているうちに徐々に子どもたちだけで遊び始める。公園などですれ違う親子とはまた違い、目的が同じで共に行動しているためか、また親同士も会話しているので安心するのか、いつもなら親の後ろに隠れてしまうような時でも気づけば遊び始めていて、さながら家族が一時的に拡張したかのようだった。

アスレチック最高~

仕事はできたのか

で仕事はというと、これがけっこうできた。正確には、妻(ママ)が子どもたちと常にいてくれたので、親2人がバッチリワークとまではいかなかったのだが、私自身はなかなかの出来高だったといっていい。

仕事していたのは主に3箇所で、
 宿泊先:初日にいろいろ楽しみすぎて9時過ぎに寝落ち、翌朝4時半くらいにシャキッと目覚めたのでそれから家族が起きるまで。電源ありWifiあり
 空山ぼくじょう:子供の乗馬体験を遠目で見ながら。電源なしWifiなしのためiPadの回線で稼働。
 lab:ワークスペースとしての元教室を借りて複数人でワーク。教室机だが椅子がオフィスチェアなので快適。電源ありWifiあり、かつこの施設1階のカフェでコーヒー他調達可能でオフィス機能として遜色なし。サブモニタがあればもはや言うことなし。

隼labにて仕事のようす。ウォーターボトルがあると便利だが、もちろんドリンクあれば最高

上記を合計すると7時間、ほぼ平日1日分稼働できた。ただ、時間を合わせてのミーティングなどはちょっと工夫がいりそうだ。私が持ち込んだ仕事はアイディア出しなので、多少細切れになっても大丈夫なタイプのものだったことも幸いしたかもしれない。

ワーケーションの「ケーション」

こちらのFamファムは夕食のバーベキューサイトとして訪問したのだが、本業は宿泊施設である。手ぶらバーベキューはあちこちにあるが、ここの良さといえば
① 食材がめっちゃ美味しい
② 飲み放題
③ ガスなので火力バッチリ
④ 庭が広くて子ども遊び放題
⑤ キャンプファイヤーできる
⑥ 夏とか子ども水鉄砲とシャボン玉打ち放題
などズラズラと書けるほどであり、もう私など王様になった気分で完全に飲みすぎた。

Famにて 手前に見えるドライミストは最近DIYされたとのこと

子連れ旅となると子供がいかに楽しむかが主眼になるし、自分も時間を見つけて仕事をしようと思って来ているわけだが、ふと「そういえば自分のバケーションでもあったんだった」と気づく。この旅を通じて出会った人たちと共に過ごすことで、子どもには友達ができ、少しだけ親の手を離れているあいだ、親も何かを楽しむことができて、しかもそれをみんなが共有している。親戚や親しい家族とならどうにかできることが、旅先でもできた。仕事の話も趣味の話も、意外なところにつながりあって楽しい。

ともすればパックツアーでもそういうことは起きるかもしれない。しかしここにワークまで持ち込むことで、オンとオフの境界をあいまいにすると、色々なものが混ざりあった時間が生まれた結果、家族一人ひとりが持ついろいろな側面それぞれを大事にしながら体験を共有するということができた。

ワーケーションの「すごくいいこと」

私たち家族のように両親とも会社づとめをしている家庭にとって、仕事と育児がひとつの核家族のなかで平日どうにも両立しがたい、ということをコロナ禍の登園自粛期間に痛いほど感じた。遊ぶ子どもは親が気になり、親はテレビを見続ける子どもに申し訳ない気持ちになる。保育園が再開したときには感謝の気持ちが溢れたが、同時に、これしかないものなのだろうかという気持ちにもなった。

そのような子持ちの家族にとってワーケーションとは実は、家族というユニットを保ったまま仕事と遊びの体験をそのまま共有し、なおかつ非日常まで楽しんでしまい、あまつさえ新しい友だちまで開拓するという体験であったのだ、という発見をしたのが私にとっては「すごくいいこと」だった。

……というのはよく整理された記憶であって、バーベキュー当日の夜の記憶は激しく混濁していたことは告白せねばならない。なお、ご縁あってこちらでお会いした田中農場さんの山田錦による日本酒 坤滴は濃いお米の味とシャープな切れ味でめっちゃ美味しかったので、自称ディープな酒飲み諸兄にはぜひとも一度味わっていただきたい。

良かったものをズラッと

もうとにかく書ききれないほどいい思いをしたのに触れないわけにはいかないので、良かったものをとにかくここに列記してしまう。
私が知っていた鳥取といえば、砂丘……梨……大山白バラ牛乳……境港の目玉の親父……くらいだったのだが、いやいや。あとは以下を。とにかく私はいま八頭町の柿に注目している。

娘がモリモリ食べた「もりのひと」の天然酵母パン。もう信じられないほど小麦の味が濃く、噛むのが楽しみになるほど。クロワッサンが絶品なうえ、こちらの食パンはもう毎週空輸したいほど。

リーズナブルながら絶景の温泉。泉質もマイルドで子連れにも大変ありがたい。

鳥取空港から向かう途中に立ち寄った市場食堂。「日本三大『メニューで見るより実物でかい飲食店』」があるなら、コメダ珈琲とサイゼリアとここなんじゃないか、というくらいに満足度高い。

その他ワーケーション情報はこちらなど

何をきっかけにまた行こうと思うか

そんなわけで、月曜日に「会社行きたくない」が発動するほど楽しく過ごしてきたのだが、それなりに道中いろいろあり、とくに帰りの飛行機が発雷により2時間半ほど遅れるという不測の事態があったなど、やはり旅行なりのあれこれは起きることは書き添えておきたい。気力体力ともにコンディション良好で臨みたいところだ。

もちろん次にまた行こうと思っている、そのトリガーは何かと聞かれれば、間違いなくそこで会った人々だろう。「わざわざ」を乗り越えて人が動く理由はそこに何かがあるからで、素敵な時間を一度味わってしまったら、もうそこは自分にとっては特別な場所だ。しかもその話を今後も娘たちとできるのがいい。そして私も自分のワークとケーションをしっかり楽しむべく、次回もバッチリ仕込むつもりだ。そう思うと仕事も頑張れる……ような気がする。(了)

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