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閑話休題:大学病院は勝ち組?負け組?

某雑誌が「大学病院勤務医は格で最上位、年収で底辺医」という題名の記事を出していました。

これは本当なのか?という感じがしています。

僕は大学生活短かったのであまり気にしたこともありませんが、先輩・同期は20年以上大学にいました。

で、彼の格が最上位だったのか?というとそんなこともないような気がするし、じゃあ、年収が底辺医だったのか?というとそんなこともないと思っています。

まず、格が最上位なのか?という点に関して言えば、確かに循環器なら、不整脈チーム、画像診断チーム、虚血チーム、心不全チーム、遺伝子疾患チーム、心臓リハビリチーム等、色々なチームがあり、そこのトップは確かに地域の研究会等では座長を務めたりしていたので、見た目的には最上位なのかもしれません。

ただし、教授の意向に背くことはできないようでしたので、教授が格的に最高位であることに異存はないですが、大学勤務医が格的に最上位なのか?と言われると「うーん🤔」となってしまいます。

つまり、医学部助教以上のポジションであれば確かに格的には想定的に市中病院のDrより上なのかもしれませんが、寄付講座、病院、その他、いろんなポジションが今作られているので、果たしてそれらのポジションのDrが格が上なのか?と言われると微妙な気はしますし、そもそもその上に絶対的な教授がいる中で、自分の自由にできる範囲が相当程度限られている状態のDrが最上位なのかどうか🤔というかんじでしょうか。

一方で、年収が底辺医かと言われるとこれもまた微妙な気がします。

確かに、バイトに行きたくないDrというのは存在します。

なるべく実験に時間を使いたいので、バイトはしたくないんだというDrです。

こういうDrは確かに年収は低くなりますが、そもそも論として、彼ら、彼女たちはお金に重きを置いていないので、そもそも年収が低いことをあまり気にしていません。

なぜなら追加バイトや当直バイトの空きが出た際にお願いしてもほとんど断ってくるからです。

つまり彼ら・彼女らにとってお金に重きを置いていない上、年収が少なくても全然問題のない人たちになります。

また、それ以外のDrはどうか?というと、僕の感覚では、みんなお金を稼ぎに行きます。

実際、僕は大学で勤めていてもバイトの依頼が多く、年収1000万円以上ありましたし、Drによっては2000万円オーバーもいました。

病棟フリーの際には、もっと稼いでいました。

決して少ないとは言えないですし、勤務医と比べても遜色はないと思います。

つまり、大学病院では稼ごうと思えば、勤務医以上に稼げる環境にはあったのです。

あとは稼ごうとするかどうかだけの違いでした。

そして、大学病院の最大のメリットは、ルーティーンが入っていない時は大学に行かなくても問題はないということかもしれません。

バイトがあれば、大学からいなくなりますので、その後の時間の使い方も自由ですし、検討会がなければ基本自由です。

夏休みも取れましたし、学会はむしろ参加するべきという感じでしたので、学会参加も自由でした(ただし完全自己負担の医局だったので、バイトに行けず、旅費・学会費を出すので赤字でしたが)。

まあ、今回の格上、格下等は、雑誌ですので、読者に読んでもらってなんぼという感じですので、わかりますが、そもそも論として、格とか年収とか、あまり意味のない話だと思っています。

僕が大学病院が合わないと思ったのは、非常に非効率な組織であり、無駄が多すぎることに耐えられなかったからです。

多分ですが、何度か外病院を回っているときに、大学に戻ることを打診されていたので、大学に戻って我慢していればそれなりのポジションにはなったのかもしれません。

しかし、無駄の集まり的な大学という組織に僕は戻れないと感じていたので、大学へ戻る打診を全て断り、外病院で働いてばかりいました。

でも、自由に臨床ができていたので満足度は高かったです。

大学病院で助教になるのは、無駄と理不尽に何年も耐えればなれるのです。

本当に優秀なDrは外病院でバリバリやっているうちに、大学にある一定のポジション以上で、迎え入れられたりもします。

大学の非効率、無駄、理不尽に耐えた結果に得られる「格」と、臨床を頑張ってきて、認められた結果得られる「格」。

どちらも大学の「格」ではありますが、明らかに意味が違います。

大学での生活に耐えられなかった奴が何言ってんだ!と言われるかしれませんが、そもそも僕に「格」はいらなかっただけの話なんです。

「助教」「講師」「准教授」「教授」どれを取っても僕に魅力のない言葉なのです。

もしかしたら大学病院が効率化を重視し、よりフレキシブルに動ける組織だったら変わったかもしれません。

しかし、僕がいた時代の大学病院は「採血は先生がしてください」「男性患者のフォーレは看護師はしません」「留置針は看護師はしません」「時間外に輸血するなら医師が全てクロスマッチまでして対応してください」「緊急採血だろうと時間外なら医師が検査室まで検体を届けてください」「時間外に処方するなら医師が薬を薬剤部まで取りに行ってください」という時代です。

どれも非効率きわまりなく、具合の悪い患者の対応より周辺業務に時間が取られる無駄な医療に僕は耐えられなかったのです。

そして、そんなところに若手医師を集めてお山の大将的に臨床を見ていく組織に魅力は全く感じませんでした。

そして、今なら絶対に処分されてしまうようなパワハラも横行していました。

僕の時代でも外病院では医師は患者を診察し、診断し、治療をするという行為に集中できたので、いかに大学病院が遅れていたかだと思っています。

そして、それを医局の上のDrにいっても「大学はそういうものだから」という間違ったことを変えようというDrはいませんでした。

なので、ここにいる意味はないなと思い、大学にだけは戻るのをやめようと思い、外病院で仕事をすることにしました。

でも、前述したバイトに行かずに実験ばかりしているDrはもしかしたら「助教」とかの「格」が魅力であり、「お金」は魅力ではなかったのかもしれません。

どちらが正しいとかどちらが間違っているとかではなく、何に魅力を感じるかの問題だけだろうと思います。

これからDrになる学生さんや研修医がこのnoteを見ていたら、自分が何を求めているかで働く場所は変わってくると思います。

ただ大学という組織も今は変わってきていますし、今は違うかもしれません。

学生や研修医で自分が何を求めているのか、何がしたいのかなんてわからないと思う人が大半だと思います。

逆説的ではありますが、一度大学に身を置いてみるというのも実は悪くはないと思っています。

一つは同じ科の人脈が作りやすい点が挙げられます。

これは大学医局のもっとも大きなメリットだと思います。

それ以外は実はあまりいい思い出がないのですが😂、いい環境かどうかはわかりませんが、個人的には非効率な組織というのも一度経験してみると、自分が将来、開業したり、病院のトップに立った時に、その経験は生きてくるような気がします。

極力悪いものを排除した組織づくりには役に立つと思っています。

まあ、結論は「格」という発想自体がそもそもおかしいし、大学の給料は底辺医と書いている時点で、現実をしない人が書いた記事なんだろうなと思います。



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