これから開業してもやっていける?と質問されたら・・・
時々、後輩から「開業ってこれからもやっていけるんですか?」と聞かれることが
あります。
その答えはYesでもありNoでもあると思っています。
まずは単純にクリニックの数はどうだろう?と考えてみると、厚生省発表のデータで、平成11年は診療所の総数は91500でした。
しかし令和3年には104292に増加しています。13%以上増加しています。
なかなかの伸び率ですね。
単純に患者数が変わらないなら、1施設あたりの患者数は10%減ることになります。
でも、実際には医療機関は都道府県によりばらつきがあります。
人口10万人あたりで見ると診療所の平均は83施設程度になります。
そして、この数は相当ばらつきがあります。
多分、大学数の兼ね合いもあるのかもしれません。
10万人あたり100を超える都道府県は、東京、和歌山、長崎、島根などが挙げられます。
逆に70を下回る県は北海道、茨城、埼玉、千葉、沖縄が挙げられます。
もちろん都市の中でもより偏在はしますが、単純に考えると、前者で開業しても勝てる可能性は低いけど、後者で開業すれば勝てる可能性が高いと言えるかもしれません。
こういうデータを見ていくと、勝てる可能性高いところと、そうじゃないところがはっきりとしてくる感じがします。
ちなみに都道府県別にみた10万人あたりの外来患者数というのも出ています。
それを見ると、全国平均で990人/10万人というデータですが、当然ですが若い人の多い東京では895人と少なくなっています。
逆に高齢化が強いところでは1000人を余裕で超えています。
一番少ないところが神奈川の750人、最も多いところは高知の1676人になっています。
そう、倍以上違っています。
土地により様々な環境の違いがありますが、こういうことを考えながら自分が開業したい土地の状況を知ることが勝てるかどうかを左右すると僕は考えています。
ただし、田舎でも県庁所在地なんかは医療機関は多くなりますので、田舎の県庁所在地の中心部は大抵競争が激しいと言えるかもしれません。
ただこれは診療所とひとまとめにしていますので、科目別にすると、また違った状況が生まれるかしれません。
ただ内科で言えば、最も数が多いので、実は上記のデータは割と使えると考えています。
ただ、これは令和3年時点のデータを用いた集計でしかありません。
これから開業を考えているDrはこの先20-30年以上の予測が必要です。
仮に青森県で一般診療所数が71と少なく、かつ人口10万人あたりの患者数が1100程度と多いから、勝てる!という判断は「現時点では」ということが言えます。
というのも、青森県の2020年のデータを見ると青森市の人口は27万人、弘前市は17万人ですが、2040年には20万人と13万人と2割以上減少します。
さらに5年後には18万人と12万人とさらに減ります。
つまり、これから開業を考え、2025年に開業し、返済が終わる20年後の2045年を考えた場合、今はやっていけるかもしれないけど20年後は非常に厳しいと言わざるを得ないかもしれません。
仮に40歳で開業するとして、20年返済をした場合、60歳で返済終了ですが、その時点で患者数は激減している可能性があります。
自分が開業する地域は本当に大丈夫だろうか?と考えた際、市町村・区単位になりますが、日本医師会のHPの地域医療情報システムを使うと、将来予測が出ています。
もちろん、かなり広範囲の予測ですので、半径2kmとか4kmでのデータはまた別に見なければなりませんが、大まかな流れはつかめると思います。
これを見ると、開業できそうな市町村は必ずしもそんなに多くはありません。
開業してやっていけるかどうかは、その地区の人口の増減、医療機関の増減、近くですでに開業している院長の年齢や後継の有無等、様々な要因に左右されるため、確定的なことは言えませんが、単純に言えば、売り上げが20%減ると、利益は40%くらい減ります。
20年後に患者がピークより20%減るという地域は少なくありません。
周辺人口の減少と一致して患者数が減ると、20年後に20%患者数が減ると、単純計算で利益は今より40%減ります。
この単純計算というのは、減価償却等も加味した値です。
20年後は減価償却が建物程度になることを想定していますので、減価償却が4割減っているのに、利益は40%減るので、返済は非常に大変になります。
今現在に想定される患者数に合わせてクリニックを作ると、20%減った時にはもしかしたら赤字になってしまうかもしれません。
重装開業をしてしまうと、今は高齢人口も多くやっていけるという数値が出てくるかもしれませんが、20年後には非常に厳しいことになる可能性があります。
土地を購入して開業はさらに厳しいことになるでしょう。
重装開業できる地域はかなり限られていると思います。
普通に考えて、医療機器レベルは病院>>>>重装開業>>クリニックです。
つまり、クリニックは医療機器では戦えないのです。
逆に病院と戦えるレベルの医療機器を入れれば、外来のみでは赤字になります。
重装開業が悪いわけではありませんが、時々、理想を詰め込んだり、親が医療関係者で30年前の感覚で重装開業を勧めたりすることがありますが、基本的に重装開業はオススメしないと答えています。
将来、より積極的投資をしたいと考えているのであれば、まずは軽装開業で、かつ、利益が出たら拡張できる準備をしておくこと。
これに尽きると思います。
初めから重装で開業すると、固定費がバカになりませんし、利益を生まず、かつ劣化し、メンテナンス費用が高くつくようなことになりかねません。
最初の質問の答えとしては、「軽装で開業しそのまま行くか、将来拡張することができる準備を整えつつ、最初は軽装で開業するならやっていけるかもしれないが、最初から重装開業をするなら、よほど場所を選ばないと途中で詰むと思う」になります。
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