これからの内科開業医の方向性
こればかりは断言はできませんが、ある方向性が必要だと思っています。
それは「かかりつけ医」としての機能です。
ゲートキーパーとしての役割と言えるかもしれません。
とりあえず患者さんは受ける、その上で適切な場所に割り振るという機能が必要だろうと思います。
そして、今後、イギリス式のGPが導入される可能性も否定はできません。
日本ですぐにこれが導入されるとは思いませんが、これに近い形が導入される可能性はあると思います。
その場合、ミニマム開業で大丈夫だろうか?という疑問が出てきます。
すでに日本ではクリニックが大量に狭い範囲でありますので、地域でいくつかのクリニックから患者が選択するという方法になるんだろうなと思います。
国の方向性としてまずはかかりつけ医を通じて病院へ紹介という形をとった場合、また、どんな病気でもとりあえずかかりつけ医を受診という形になった場合、ミニマム開業のクリニックを患者は選んでくれるのかどうか・・・というところに僕は疑問を持っています。
当院CT等はありませんが、「CTはないんですか?」とか聞かれることがあります。
個人的にCTは不要だと思っていますが、仮にかかりつけ医としての役割を国が明確にしていった場合、患者が「ここなら大丈夫」と言ってくれるのかどうか?ミニマム開業で良かったと言えるのかどうか僕にはわかりません。
個人的にはミニマム開業はクリニックを拡張できないリスクをはらんでいる可能性があると考えています。
もちろん、そうなったら大きなところに移転するからいいよという考え方もあると思います。
それはそれで理想とも言えると思いますが、その時点でいい場所が空いているのかどうか、近場で満足できるサイズの建物なり、土地があるのかどうか。
もしくは「そうなったら撤退して勤務医・フリーランスに戻るよ」という考え方もあるかもしれません。
これは非常に理にかなった考え方だと思います。
勤務医やフリーランスに戻るという考え方を前提にミニマム開業はアリだと思いますが、そうじゃない場合、ミニマム開業はもしかしたら選ばれないクリニックになってしまう可能性があると僕は考えています。
かといって最初から大きなクリニックを作る事はハイリスクです。
CT、MRI、エコー、XP、その他、諸々入れていたら建物だけで相当大きなものになりますし、建築費用もバカにはなりません。
そのほかそれらを使うにあたってのスタッフの数も多く必要です。
もちろんそれに見合うだけの集患が可能であれば問題ないと思います。
しかし、一番最初に果たしてそれだけの患者が来るのかどうか?
難しい問題だと思っています。
で、じゃあどうするのかいいのか?というのもまた問題になります。
正直、正解があるわけではありません。
一方で、患者さんがどこまでを求めているのか?ということを正確に把握することは重要だと思っています。
当院は循環器内科なので、エコー、ホルター、心電図、XPは可能ですが、TMTはしていません。
当然CTもありません。
なぜこの判断をしたかというと、検査リスクの問題です。
つまりTMTは検査リスクが大きすぎるという判断です。
TMT中のVT、Vf、心停止、AMI等、それが起きた際の対応にかかる時間は非常に大きいですし、また、死亡リスクが大きくなるため、僕はしていません。
実際、勤務医の時はVT、Vfは経験がありますので、Dr一人で対応できるには限界があります。
そのため、TMTは入れていません。
ただ言い方を変えると、患者さんにリスクを説明して病院での検査の方が安全であるという説明は説得力を持ちます。
リスクが高い検査は病院、リスクの低い検査はクリニックで行う。
こういう線引きで考えてどこまでクリニックでやるかを検討するのがいいのではと考えています。
消化器内科なら胃カメラ、大腸カメラが該当するでしょうか。
一方で、治療について言えば、どこまでがクリニックでいいのかは僕にはわかりません。
専門ではないので、発言はできませんが、失敗した際に命に関わる場合、口コミによる風評が起こり得ますので、その辺りも勘案する必要はあると思います。
また呼吸器内科ではCTを入れているDrが多い印象があります。
診断への自信とリスクの低い検査を考えているかだろうと思います。
ただCTをいれれば初期投資ならびに維持管理費は高くつきますので、その辺りをどう考えるかでしょうか。
知り合いの放射線科で開業しているDrは、CTの維持管理費が非常に高く、そんなに儲からないと言っていました。
これが本当かどうかはわかりませんが😂、管球が切れた際の交換メンテまで入っていると本当に利益が出ないと言っていました。
かといって、管球きれて数百万円とか1000万円と言われても困るしと。
なかなか難しいですね。
ちなみにホルター心電図も読み取るパソコンとソフトを依頼すると70万円くらいの見積もりが来ました。
これだと、消耗品のみであとは紙代ですみます。
一方、解析まで依頼すると、17500円のうち1万円近くが持って行かれ、さらに消耗品費は別になりますので、そこまで利益が出ない感じもします。
その辺りを勘案し、色々と検査機器を導入しつつ、利益も確保するというところになると思います。
ただ一つ言えることは、患者さんはミニマム開業のところをあまり好みません。
これだけは間違いありません。
一箇所で全てが済むところを好みます。
知り合いが最近、内科・循環器内科で開業しましたが、内覧会で一番多く聞かれたのは「内視鏡はしないんですか?」だと言っていました。
つまり、患者にとっては、その先生の専門が何かなんてことはあまり関係なく、循環器もそして内視鏡もしてくれればありがたいというのが本音ということになります。
もちろん、内視鏡はしませんので、「当院ではできません」と答えたというと、「そうなんですか」という返事だったとのことです。
つまり、検診では選ばれないクリニックになりかねません。
一方で、できない検査をしても仕方がありません。
その辺りどこまでをミニマムと考え、どこまでを重装と考えるか。
色々とあると思いますが、個人的にはある程度のレベルまではできた方がいいという考えです。
ちなみにちょっと離れたところに循環器内科がありますが、レントゲンを入れていないため、心不全の悪化等を疑うたびに近くのクリニックに紹介してXPを撮ってもらっているようですが、そこから流れてきた患者さんは非常に不満を言っていました。
具合が悪くて行っているのに、レントゲンもないから他のクリニックに紹介され、また戻され・・・。
とてもじゃないけど、無理だから粒栗に来たと言っていました。
具合の悪い患者はいなくなり、安定した患者のみを見るという戦略であればいいのかもしれませんが、経営的には厳しくなる気がします。
twitter上ではミニマム開業がいいという論調が多いですが、東京のど真ん中と田舎では違ってきますので、地域の実情に応じた判断が必要だと思っています。
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