NHK「中国“改革開放”を支えた日本人 」の内容をレビュー
NHK「中国“改革開放”を支えた日本人 」が素晴らしかったのでレビューします。
文革の終了で表舞台に返った鄧小平が、大躍進の失敗と文革でどん底に落ちた中国をなんとか立て直すために改革開放を行ったのは知っていました。
しかし、それが具体的にどのように行われていたかは知らなかった。その現場の人々のインタビューを交えたドキュメンタリーが本当に素晴らしかった。
最初はちょっと見るだけのつもりが、宝山製鉄所が無事建設できるのかどうかハラハラしすぎて結局最後まで(夜中の2時)見てしまった。
まず改革開放を始める前に鄧小平は日本の様々な工場を見学した。そこで鄧小平は工場は休日かと思うくらい人がいないことに驚いたそうだ。自動化されシステム化した工場は彼の知る工場とは全く別のものだったようだ。そして工業化とはこういうものかと理解したらしい。
そして中国が西洋諸国から遅れていることを認め、記者会見では「顔が醜いのに美人のようにもったいぶっても仕方ない。正直に遅れを認めることによって希望が生まれる」とジョークを交えながら西洋式の経済を導入する必要性を述べた。
鄧小平のここまでの話はとても有名だと思うが、ここから現場の話になっていくととても面白かった。
当時の日本人には中国侵略したことについて、賠償の放棄はなされていたとしても、償いが必要だと考えている人が大勢いた。だから日本人は中国の改革開放にとても協力的だった。アメリカはその動きを警戒し妨害もあったようだけど、それでも日本は民間も政府も協力を惜しまなかった。
そして中国は日本から様々な人を招いた。
大来佐武郎は中国に講師として招かれ、中国共産党の幹部たちに経済についてレクチャーした。
そこで大来は「投資により優れた設備と優れた労働者を揃えて生産を拡大し、そこで得た資金や経験で更に経済成長すること」つまりマクロにおける計画経済から市場経済の転換を提唱した。
そして「(当時中国では資源が豊富だと考えられていたが)それは間違いだ。国民一人あたりの資源量からみれば多いとは言えない。だから経済発展するための資金は今のままでは足りない」と意見し、外国から投資のための資金を借り入れることを提言した。当時の中国は外国から金を借りれば植民地になるという意見が大半だったが大来は「韓国は外国から金を沢山借りて経済発展したが日本やアメリカの植民地になっていない」と説明した。
また日本のコマツメーカーのコマツは北京内燃機の工場に講師を派遣して、工場の運営方法を指導した。それまでは計画経済の下で国が定めたマニュアルを実行するだけだったのを、PDCAサイクルを始めとする様々な運営方法を導入した。その結果、たった3年間でしかも設備を維新することなく、品質はとても向上し生産量も2倍近く向上した。これはつまりミクロのレベルで計画経済から市場経済への転換だ。
そして宝山製鉄所と沢山の石油化学プラントの輸入が始まった。しかし途中で中国の資金不足や国内問題で輸入計画が破綻しかかる。そこで日中双方が努力して日本からの追加融資や政治的努力などによって計画は最後まで履行できた。
これは計画経済から市場経済への転換、いわゆるマルクス経済の中国化の第一歩だったと思う。
私は日本人だけど、日本人の活躍以上に中国人たちの努力と熱意に感動した。
鄧小平は中国全体が西側諸国の市場経済を警戒している中で市場経済の導入の道を切り開いた。
副首相の谷牧は日本に協力を求めた時に、母親から漢奸(売国奴)と泣きながら非難されながら、その仕事をやりきった。(おそらく同僚からも同じ様に非難されただろう。)
コマツに指導を受けた北京内燃機の工場長は、90歳半ばで普段は長い会話はできないと言っていたが、コマツのことだけは別と生き生きと当時の改革のようすを語っていた。
当時中国の日本大使館に努めていた経済担当の外交官は、党が計画中止に舵を切りかかった時、党の規律違反にならないように必死に工夫してレポートを書いた。
皆が皆、国を良くするために必死に努力している様が言葉の一つ一つから伝わってきた。
一人の独裁者や一つの党のために存在している国では、これは決してありえないことだ。
中国が人民のために人民が運営している国だからこそ、自分たちの国を良くするために皆が必死に努力しているのだ。多くの共産主義国が滅びたのに、中国だけが改革を成し遂げ、世界最大の国になれたのはこれが理由だ。
そしてその努力は今も続いている。その様子はかつての日本と全く同じで、とても強力でとても美しいと思う。私は中国の熱意が本当に羨ましくて眩しく思った。
衰退を続ける日本が再度復活するには、このような強い国民の意志と強くて正しい指導者が必要なのだと思う。
参考
https://plaza.rakuten.co.jp/mt1188/diary/201902140001/
http://asiavox.com/list/kaikaku_kaiho.html
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?