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【短編小説】セントウ

今日は、なんの変哲も無い日。大きな事件も無く

事故も無く、ニュースも特にすごい報道は無い。

本当に、なにも変わらない1日。1年前の人が聞い

ても、特に大きな反応は無いだろう。

“ただ一つを除いて”。1年前、この日本に、怪獣

が現れた。その怪獣は、東京湾近くに居座ってい

るが、市民への危害は無い。しかし、その怪獣が

東京湾にいることで、なんらかの影響が起き、

魚が捕れなくなってしまっている。退治しようと

する政府だが、前例に見ない事。何から手をつけ

れば良いのか分からないのは、納得がいく。

さて、スケールは小さくなる。

「はぁ、怪獣の調査、また上手くいかなかったのか。大変だなぁ。」

「にいちゃーん!」

「あぁ、陽介。怪獣また……。」

扉を開けたのは、風呂桶にシャンプーとリンスと

タオルと石鹸を持った弟、陽介だ。

「あ、怪獣がなに?」

「いや、何でもない。お前、銭湯にでも行くの?こんなご時世に。」

「え?このご時世だからじゃないの?」

陽介の言葉はよく分からないが、これで指摘して

時代遅れとか言われるのは嫌だ。

「あ、ああ。そうか。そうだよな。」

「じゃ、セントウ行ってくるわ。」

後日、桶を盾に使い、怪獣の目をシャンプーで眩

ませ、タオルを足に引っ掛け、石鹸で滑りやすく

した床に引っ張り転倒させて、見事退治した英雄

の名が刻まれる事は、まだ誰も知らない。


「じゃあ、戦闘行ってくるわ。」


 銭湯へ行く道具で怪獣を倒した陽介。これが本当の、

       『スーパーセントウ』

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