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【短編小説】最後の一欠片


待て。落ち着くんだ。刑事歴30余年。この肩書きに驕り、何かを見逃しているのでは無いか。


夢現を抜かしている場合では無い。最後の一欠片が
必ず何処かに隠れているはずだ。


思い返せ。俺が見逃しているピースは何処にある。捜せ。捜せ。灯台下暗しというではないか。


身の辺りから、慎重に。この殺人事件の全貌が姿を現す、最後の一欠片がある。これまで、刑事として四半世紀を共にした信条である。


「……やっと……見つけた!」


遂に、捜し求めていたものが見つかった。殺人事件は、これで終わりだ!


「あの……先輩。早くはめてもらえます?」


「え?ああ、分かってるよ。」


後輩刑事に急かされながら、俺は机に悠然と置かれた『殺人事件』というジグゾーパズルの、最後の一欠片ピースを、力強く嵌め込んだ。

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