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【短編戯曲】雨と日傘と三人目

※めちゃくちゃ遊びで書きました。タイトルも中身から抜粋した感じです。

外は小雨が降り始めている。

A「あ、ねぇ、外雨降ってる」
B「え?……ホントだ」
A「朝は快晴って言ってたんだけどなぁ」
B「最近ほら、天気荒れやすいから」
A「まじ最悪。傘持ってきてないよ」
B「そのリュックに刺さってるやつは?」
A「え?ああ、日傘だよ」
B「別に良いじゃん」
A「え、だって、日傘って太陽光から守るための傘だろ?雨はダメだろ」
B「どうダメなんだよ」
A「なんか、水に当たったら溶けてトトロの坊主の傘みたいになるとか」
B「そんなわけねーだろ。そんなおっきな問題にはならないって」
A「そうなのか?」
B「そうだって」
A「え、じゃあさ、雨傘って何のためにあるの?」
B「は?」
A「いや、日差しも防げて、雨にも対応してるのが日傘なら、雨傘とか要らないじゃん」
B「んー、でもそれ、逆もまた然りだよね」
A「どういうこと?」
B「雨傘も、日傘として使えるってことよ。専門じゃ無いとしても、防げるは防げるだろ」
A「ああ、そういうことね。……え、じゃあなんで、わざわざ雨傘と日傘って分類したの?」
B「んー、まぁクセだろうな」
A「クセ?」
B「ほら、ペットボトルの分別とかさ、外国の人が見たら驚くって言うじゃん。日本人は、分類分けするのがクセなんだよ」
A「あー。じゃあさ、アメリカとかじゃ日傘って言わないのかな」
B「え?知らない。今スマホで調べれば?」
A「いや、そのスマホを家に忘れたから取りに行きたいのよ」
B「あ、そういうことか」
A「日帰りとは言えさ、留守の間暇じゃん?やっぱスマホ無しだとキツいわ」
B「まぁね。でも、そんなに日傘が心配なら、雨止むの待ってるのが一番じゃない?」
A「そうだよな」
B「じゃあさ、トトロでも観ようよ」
A「あるの?」
B「アイツ、ジブリ好きなんだよ。今日の日帰り旅行だってジブリパークだし」
A「あ、そうなんだ」
B「DVDの一つくらいあるだろ」
A「けど、アイツも心配症だよな。日帰りの旅行でも友達に留守任せるなんて」
B「それな。俺だったら何も気にせず出かけちゃうからさ」
A「なのに、友達はちょっと信用し過ぎてんだよな」
B「変なとこ抜けてるよな」
A「さてと、タンス貯金盗った、カード盗った、あとなんか盗ってないのあるか?」
B「ま、こんなもんだろ。あとは、雨が止むまでトトロ観るだけだ」
A「あ、あそこにジブリのシール貼ってる箱あるけど、あの中じゃない?DVD」
B「お、これだな。よいしょ」

箱を開ける。

B「……え」
A「どうした?」
B「これって……ジブリ展のグッズだよな」
A「ああ、そうだな。あれ?でも今あいつ行ってるのって」
B「……ん、どういうことだ?」
A「あ、2回目行ってるってことか」
B「いやいや、何言ってんだよ。ジブリ展昨日からだぞ?2日連続まぁまぁな距離行くか?」
A「流石にしないか……」

Bの電話が鳴る。

B「……アイツからだ」
A「え?」
B「……もしもし。うん……え」

しばしの沈黙の後、電話を切る。

A「なんて」
B「いや、それがさ」
A「なんだよ」
B「……トトロの坊主は、“カンタ”だって」
A「ああ、そうだ、忘れてたわ。……あれ、どうしてアイツ、俺たちの会話知ってんだ?」
B「そんなの一個しか無いだろ……」
A「え……いや、心配症とは言ったけど、まさかそんなに……」
B「それとな」
A「まだなんか言ってたの?」
B「……『跪け、命乞いをしろ』だって」

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