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物との対話で世界を広げる

今回は特任助教の上田裕尋先生にお話を伺いました。恐竜を研究する楽しさや博物館で実物を見て学ぶことの重要性を教えて頂きました。ぜひご覧ください!

<プロフィール>
お名前:上田裕尋先生
所属:科学博物館
趣味:旅行、博物館巡り

恐竜の研究


―恐竜を研究しようと思ったきっかけを教えて下さい。

私が恐竜を研究している理由は、恐竜がとても好きだからです。記憶にないくらい小さい頃から恐竜が好きで、研究者になりたいと思っていました。研究者になれば、恐竜を一生追い続けることができるし、荒野や砂漠に行って化石を発掘することもできると思っていたからです。しかし大学に入ってから、より具体的に将来のことを考え始め、研究者としてバリバリ論文を書いて発表するよりは、標本などを使いながら研究やそのサポート、教育に携わる方が好きだな、と思い、恐竜の研究を行う学芸員を目指しました。

―夢を実現させ、恐竜の研究をされていますが、実際に研究していて、どのようなことに面白さを感じますか。

生き物を研究している人は皆言うのだけど、生き物は研究すればするほど分からないことが増えていくんだよね。私の研究では当然恐竜の化石の発掘もしますが、博物館に収蔵されている標本の調査がメインです。恐竜の標本と現在の動物の骨や筋肉などを比較することで、骨しか残っていない恐竜の筋肉や血管を復元して、恐竜はどんな生き物だったかを知ろうという研究をしています。だから私の研究では発掘と同じくらい、現在の動物を解剖することも大切です。例えば、大きなペリカンやワニなどを解剖すると不思議なことばかり増えていくんですが、それがむしろとても楽しいです。さらに、解剖の知識を踏まえて化石を見ると、より詳しく分かることが見つかるのでもっと面白い。そしてまた解剖に戻るとまた新しい発見がある。その繰り返しがとても楽しくて、研究のモチベーションになっています。。

―研究者として大切にしていることを教えてください。

研究者として、実物を見ることを大切にしています。実物を見ることで、3DやCTスキャンでは得られない情報をたくさん得られたことが何度もあります。恐竜の化石なら、本物の化石を見るだけでなく、実際に化石が出てきた地層などへ行くことで新たに気づくこともたくさんある。だから、本で読めばいい、論文を読めばわかる、と考えずに実物を見に行くことを常に大事にしています。

―研究の目標を教えてください。

私は分野を超えたことをやりたいと思っています。色々な分野をするとどっちつかずで、結局、何者になるんだ、という状況になってしまう心配も確かにあるけどね。しっかり、生き物、特に動物を主軸にして、DNAや細胞、形や個体、生理学、さらには地球全体の環境や生態などを全部繋げていきたいと思っています。だから最近は私自身が博物館みたいになっている(笑)

色々な分野にまたがって研究するために、それぞれの分野で使われる技術を駆使できるよう勉強しています。例えば、研究の過程で実験装置の作成時はハンダゴテを使ったり、DNAの抽出実験時はマイクロピペットまで持ったりしています。今までハンマーとメスで頑張ってきた人間が、ハンダゴテやマイクロピペットまで持つのか!みたいなね。なるべく自分の専門分野や狭い世界にとらわれたくないと思っているので、別の分野の人たちと研究で協力したり、プロジェクトや教育、社会貢献などまで展開したりできたらなと思って活動の輪を広げています。

物との対話


―先生は学芸員養成課程の授業を持っていらっしゃいます。学芸員過程でどのような能力が身につくとお考えでしょうか。

すぐに身につく力は発表能力です。授業ではたくさん討論や発表をするので、発表能力が身に付きます。さらに長期的な点では、ものの見方が変わることですね。例えば、キリンの角は何本あると思いますか。大体は2本か3本か5本と答えると思います。答えは人によって違うのですよ。この時に「結局、何本ですか」と正解を人に求めるのはナンセンスです。実際の正解は何かって、これです。

↑2分の1の大きさのキリンの頭のレプリカ

これはキリンの頭の半分の大きさのレプリカです。答えは数字ではなく、目の前にあるこれです。実物を見て、あなたは角が何本だと数えますか、というのが本来の答えです。博物館では、誰かが言ったから、本に書いてあるからではなく、物を見てどういう情報を抽出するかが大切なんです。物との対話に近い。どのような見方をし、どう見えるかを考えながら情報を受け取る。このやり取りの中で、学びが生まれる。学芸員課程ではこれが博物館の学びですよ、と教えています。誰かに聞くより、本を読むより、まずは物を見ればわかるじゃない、と何度も考えさせます。もちろん誰かに聞く解決方法や答えを探すのも大事だけども、自分でまず考えてみる力も重要だと思う。

―農工大の学芸員課程にはどのような特徴があるのでしょうか。

私は、特任助教という肩書きで東京農工大学博物館の学芸員をしています。大学博物館は大学に付属する博物館です。大学博物館自体珍しいですが、さらに博物館として建物が丸ごと一つある国立大学はすごく少ない。そこへ学生がやってきて、博物館という完全に整った環境の中で授業を受けられるのはかなりの強みですよ。

他にも学外の先生方に授業していただくことがあります。かなりマニアックな先生が揃っています。ご存知の通りこの大学は全員理系。学生が興味を持つ分野は自然科学が多いです。だから、自然科学がメインの授業を展開した方が、みんな楽しい。自然科学を教える先生にお願いして、マニアックな自然科学の世界の博物館の話を聞けるようにしています。だから、学芸員になりたい理系学生さんにはお薦めです。


高校生へのメッセージ


―高校生へのメッセージをお願いします。

一つ重要なことで、高校生の皆さんは農工大に来ても恐竜の研究はできません!私は恐竜の研究者ですが、研究室は持っていないので農工大で恐竜の研究はできません。注意して下さい。

それから、博物館にぜひ行って下さい。自分の好きな博物館でも、動物園でも水族館でもいいです。実物や実験装置などに触れる機会があると学ぶことが多いと思います。やっぱり、博物館などに足を運ぶのは、非日常的なんですよ。非日常的な空間の中で学ぶのは経験として記憶に残りやすいです。受験戦争にはすぐには役に立たないかもしれない。だけど、大学に入った後、受験勉強で学んだことだけで戦えるわけじゃない。大学に入るまでの間で経験したことで生かされることはたくさんあります。ぜひ生かされる経験の一つとして博物館での経験を付け加えてくれると、いつか皆さんの役に立つと思いますので、お暇なときにぜひ足を運んでみてね。



文章:てる
インタビュー日時:2023年 12月 13日
インタビュアー:てる

※インタビューは感染症に配慮して行っております。


https://tuatdaizukan.net/


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