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なぜ「少子化はお金がないのが悪い」が支持されるのか

前回の記事では、世間では言われない少子化の本当の原因を個人的に推測してまとめた。

このような記事を書いたのは世間、特にツイッター上で言われる少子化の原因が本当にそれが原因なのか?と違和感を持ったことがきっかけだ。

主にツイッターで主張されている少子化の原因は以下の通りだ。

・結婚したくてもできないくらいお金がない、みんな貧乏になった

・将来世代にツケを残すなと言って緊縮に走り、将来世代が産まれなかった

・氷河期世代を見捨てて結婚も子育てもできない状況に追い込んだ

・将来も見通せないような社会で安心して子供を育てることなどできない

・子育てで辛い目にあっている親を助けたり支援しようとしていない

経済的な問題子育て支援の不足という2つの大きな軸が存在し、大方この軸に沿った意見がツイートで繰り広げられている。そして高い確率でそれらのツイートは万単位のバズを形成する。絶対的真実であると強調するかのように。

https://www.jiji.com/jc/v4?id=20220227won0001

https://forbesjapan.com/articles/detail/30270

しかし、日本よりずっと景気がよかったはずの国や子育て支援が世界トップクラスの国がここ数年で出生数が大きく減る事例が相次いでいる。また、日本国内だけ見ても国民が有り余るほど金を持っていたバブル期で既に少子化は始まっている。

これだけ見てもツイッター内の言論が間違っていることが分かる。筆者はこの事実を知って、では本当が何がいけないのかということを探り、前回の記事にまとめたような推測を立てた。

さて本題だ。ツイッターでは「お金がない」と「子育て支援が足りない」が少子化の原因として支持を集めており、特に前者はパターンや視点を変えながらも多数の人が主張をしているところを見かける。いったいどうしてこれほどこの意見は人気なのか、自分なりに考察してみた。

結論から言おう。気持ちいいからだ。


これらの意見は、微妙にニュアンスを変えながらも共通点がある。それは、根本の原因は社会そのもの、その社会を動かしている政治にあると考えているところだ。

確かに、今の日本は税や社会保障の負担が増える一方で給与は一向に伸びない。生活は苦しくなっているし格差も拡大している。その原因が政治の怠慢や失策にあるのは事実だろう。だが、それが結婚や子育てへの意欲に直結しているとは必ずしも言えない。ならばなぜ田舎より収入が多い東京都の出生率が一番低く、貧困層の多い沖縄が一番出生率が高くなるのか。

ツイッターの住人たちは政治家が自分たちを窮地に追い込むような政治をやっているから、己の利益のために自分たちを搾取しているから、こんなに苦しく希望の持てない状況になっていると考えている。そして、そう思い込むことで今のこの状況は自分たちのせいではないと自分たちの責任を回避しようとしているのである。

「悪いのはみんな政治であり社会、自分たちはその被害者であり、かつ悪に立ち向かう正義なのだ」

上記のスタンスでツイートをするだけで、このようなストーリーをみんなで自然と形成することが出来る。共感の輪が重視されるツイッターでこれ程受ける話題もそうないだろう。

重い社会問題に関する話だけあって、ツイートする側は怒り交じりに主張をしていることも珍しくない。しかしその裏では政治や世の中に物申す自分に対して強烈な快楽も感じているのである。言ってみれば、これはある種のポルノだ。みんなで怒りの連帯を作っていると思ったら、実際にはみんなでポルノコンテンツを生成して絶頂しているのだ。

少子化の原因には、自由恋愛や子供を育てる親への圧力など、実際には国民自身がそうなるような社会を望んで作っている側面がある。これらの話題でも「お金がないから恋愛対象とみなされない」だとか「お金がなければ子供育てられない」といった具合に、原因を金(とその金をよこさない政治)にあるとしている人は多い。だがこれも、実際に解決できるよう不都合な点も含めて事実と向き合いたいというよりは、自分たちは悪者に苦しめられている被害者なんだ、というやはりポルノを求めての主張だと考えれば腑に落ちる。見たいものしか見たくない、ただそれだけの話だ。

再三言うが、本当に解決を目指すのならばきちんと事実と向き合う姿勢が必要である。不都合な部分を不快である、損したくないと言って見ずに、問題を先延ばしにすればいずれ息詰まるのは当然だ。そうなったら割を食うのは次の世代であり、我々は今の団塊世代のように「自分の都合を優先してツケを押し付けた」と恨まれることになるだろう。そうならないためにも今からこういった風潮は改めるべきと考える。

他方、そう言っている筆者も、知らず知らずのうちにポルノに吸い込まれて行ってしまう可能性は十分にあると考えている。一時の感情や快楽に振り回されずに、冷静に広い視点で物事を考えることを忘れないようにしたいと思う。


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