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『このライトノベルがすごい!2021』がヤバイ!! ~クリエイターコミニュティの強大化

トレンド入りした『黒星紅白先生』に関しては時雨沢恵一氏が言う通り、『キノの旅』の新刊がすぐに出るわけでも、『サモンナイト』の新作が発表されたわけでも無い。
(サモンナイトシリーズを手掛けた人による新作が出ることは、前日に発表はされていたが)

で、トレンド入り理由に関しては黒星紅白氏がデザインを手がけるVTuberが発表されたことが切っ掛けである。

今は時雨沢恵一氏がネタにするほど、イラストレーターの名前がトレンド入りする理由はライトノベルなどではない。それほどまでに昨今のVTuberというのは強大なコミニュティを持つ。そんなコミニュティを持つ存在の言動は騒動を巻き起こすこともしばしば。

さて、話は本題へと入るのだが今年も『このライトノベルがすごい!2021』に向けて、各作家が読者に向けてアンケートによる呼びかけが始めている。

そんなラノベのイラストを務めるイラストレーター達もVTuberとしても活躍しているケースが昨今では多い。有名所では「しぐれうい」、VTuber「カグラナナ」名義で活動をしている、ななかぐら氏だろうか。
また自身だけでなく、他者のVTuberのデザインをしている。むしろ、デザインを担当したことがVTuberとなる切っ掛けであったろう。

そして、VTuber「カグラナナ」に至ってはbilibiliという中国のプラットフォームでVTuberチャンネル登録者数1位となっている。それまでの1位はVTuberの代名詞であるキズナアイである。それを超えての1位である。
現在のbilibiliでのチャンネル登録者数は150万を超えている。YouTubeであっても15万人。Twitterは25万人フォロワー。

ちなみに比較対象だけに出しておくが、時雨沢恵一氏のTwitterフォロワー数は15万である。
もはや、フォロワー発信力に関してのみ言えば、ラノベ作家が束になっても勝てないぐらいだろう。

では、VTuber「カグラナナ」が『このライトノベルがすごい!2021』に関して言及したらどうなるだろうか。日本のライトノベルは中国であっても、アニメ等から知れ渡って人気もある。

『このライトノベルがすごい!2021』の参考作品リストを確認しても、ななかぐら氏が担当された作品は入っている。

そもそも、読者へのアンケートの呼びかけは違法ではない。各作家、必死となって呼びかけているからだ。イラストレーターとて自身が担当した作品を呼びかけても何の問題もない。

ただ、強大なコミニュティを持っているか、いないかの差でしかない。

しかし、それほどのコミニュティを持っていれば、ささいな言動には気を付けているであろう。VTuberの言動で騒動を起こしているのだから。コンプライアンスは大事である。

ただ、イラストレーターが自身が担当したラノベ作品を積極的に販売促進の宣伝しないのは買い切り形式ですでに報酬を得ているからという点もあるのだろう。作品の売り上げが上がったところで即自身の収益に結びつくわけではないから。
(ただ、人気が出れば続編の可能性は高まるため、次回の仕事に結びつくことにはなるが)

しかし、イラストレーター自身ではなく、そんなコミニュティのファン達が結託したらどうなるか。VTuberでなくともファンは自分が推している存在に花を持たせたいと考えている。
某千葉県のYさんなどは個人でも組織票を投じ続けていることで有名である。

また、『チェンソーマン』キャラ人気投票結果発表に対し、作者である藤本タツキ氏はこのようにコメントしている。

藤本タツキ先生コメント
僕が中学生の頃らへんにポケモンの公式人気投票がありました。
ネット上でピカチュウやリザードンみたいなメジャーポケモンではなくコイルというふざけたポケモンに投票しようみたいなふざけた運動があり、僕も面白半分でコイルに投票しました。同じような投票企画でお菓子のチョコワの公式でわさび味に、イナズマイレブンで五条や飛行機に投票をいれて生きてきました。
コベニちゃんの車がランクインしてしまった時にあの時の投票が自分に返ってきたのだと思いました。切ないけどどこか嬉しい気持ちになりました。ありがとうございました。

こういう場においては、ネタに走る人は一定いる。当然、企画側はそういった票を厳格に無効にすれば済む話である。ただし、ネタと分かる範囲ならそうはできる。
先も述べた例でいえば、ななかぐら氏が担当された作品ならどうだろう。これは組織票があったとしても、一人での多重投票等の不正が無ければ正当な票となる。

また、しぐれうい氏がイラストを担当された『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』などはアニメ化は決まっている。また、人気女性声優の起用も決まっている。
ここでも大量の票が集まったところで何も不思議ではない。ただ、どこで効果を発揮したか分かりづらいが。
【追記(2020/10/4)上記で『『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』などはアニメ化は決まっている。』等と書きましたが、執筆時では確定の事実ではありませんでした。他の情報と混合して勘違いしていました】

反面、『ぼくたちのリメイク』もある種、構図は似ているがこちらは善戦しないと思っている。著者である木緒なち氏は「葉山みど」でVTuberとなっている。そして、こちらもアニメ化は決まっている。
なら、『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』とほぼ同じ条件で善戦しないと考えるか。
まず、単純に『ぼくたちのリメイク』が2006年頃を振り返る作品であり、おっさんホイホイな作品であるからだ。

特設サイトでも分かる様にコメントを出しているのは、その年代に活躍したクリエイターである。しぐれういといった分かりやすい現在でのアイコン、アイドル性ではない。今の人には刺さりにくい。
特に10代をターゲットにしているとする一般的なライトノベル層からすれば、全ての点で層が外れた作品である。

また、木緒なち氏は男性、おじさんである点。VTuberとしても幅広く活躍しているが、先にも述べたおじさんという点でも現在におけるアイコンとは離れている。作者と同年代には刺さるとはいえ。
そして、アニメに至ってもキャスト等もまだ分かっていない。これらを見ても作品以外の点では追い風にならないと考えている。

そもそも、この企画は「ライトノベル」の凄さを決める点にあるため、いささか、アニメ化による波及効果等々をどう扱うかは難しいところだ。

そうでなくとも、今回は「協力者」の存在もある。この「協力者」にしても、個人でありながら作家よりも強大なコミニュティを持つ者も多くいる。それだけ今の時代、個人であってもコミニュティを持つこと以上に、強大化させることは難しい事ではない。

「協力者」の言及も組織票を生み出す原動力となりかねない。

そういった問題は何も今回だけに限った話でもない。今年は特に不透明な動きが多く働くと考えられると、私個人は思っているだけである。
実際、これらアンケートの実施方法に関しては例年から問題点が運営している側からも出ている内容である。

後、個人的には『このライトノベルがすごい!2021』の投票ではKindle等の個人出版の作品でも一応は問題ないばず。
当然、一人だけならまず対象外となる。しかし、これが十人以上となれば、投票の場である以上、無視は出来ないだろう。
こういった場を有効活用して名を上げる人も出てくるかも知れない。

個人出版とてライトノベルに置いては『魔女の旅々』という例がある以上、本当に無視できない

まあ散々、危惧した点を言ってきたが、結果だけいえばある程度予想は出来る。それはアカデミー賞であっても結果は予想はしやすいからだ。
それは映画好きが決める賞のではなく、認められた業界人達が色々な思惑で票を入れて決める賞だからだ。そして、他の賞で前哨戦が行われているからより読みやすい。
また、アカデミー賞を専門的に予想する人達もいる。そして、個人であっても語り合っている。

『このライトノベルがすごい!2021』であっても、長年やっているから傾向は読むことができる。

恐らく、上記のリンク先で上げられた作品はほぼ上位に入り込んでくるだろう。なぜなら、業界の思惑を巡らせていることを臭わせる作品を上げているからだ。

もっとも、コミニュティの組織票云々よりもこういった企業の組織力の方が問題とすべきなのかも知れない。ただ、出版社という企業が主導でしている以上、あまりここらを批判的に語るのは野暮ではあろうが。


■追記(2020/10/12)

情報が遅くなってしまいましたが、アンケートの件数が発表されていたので、載せておきます。昨年の倍とはいえ、ほぼ1万件。これを多いとみるか少ないとみるかは微妙な所ではあるが、ただ異常な組織票があったと考えるには少ないだろう。

ひとまずは例年以上の話題性があったという事だろう。

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