見出し画像

ライトノベル新生2022 ~ビジネスの衰退と新規参入

以前からライトノベルの作品や関連した話題をあれこれと語ってきたが、今回はライトノベルのビジネス面から語ってみたい。

これまでライトノベル関連を書いてきた記事は場外乱闘的に反応はあるのだが、今回に関しては読者サイドの話ではないと明言しておく。
それでも読者側にはショッキングな話とはなっていくだろう。今のままのライトノベルビジネスが成り立たないとする考えだからだ。

ただ、これは皮肉でも暴論でもない。実際、出版事業の傾向を見ていけば、今のまま続けることは困難であるのは確かである。
それを実例など見ながら、語っていきたい。

■紙媒体の終焉か?

今年のライトノベルは人気シリーズの完結が多かった。『この素晴らしい世界に祝福を!』、『デート・ア・ライブ』を始めとして、他のアニメ化もされた作品も多くが完結している。
また、シリーズ開始30周年を迎えた『フォーチュン・クエスト』も完結している。それに新シリーズが決まっているにしろ、『魔法科高校の劣等生』も完結を銘打っている。

そして、次に最近では新しい電子小説サービスが発表された。作品タイトルからも「LINEノベル」を引き継ぐという格好もあるのだろう。

しかし、この手のサービスは『ノベルバ』だけでなく、電子書籍専門のレーベルといった感じは、ここ最近でなくとも増えている。

これら一つ一つで見た場合はこの事はあまり気にならなかったが、この二点を合わせてみると、あるインタビュー記事について思い出した。

TADA氏:
 エロゲー業界全体の勢いですね。これ以上、販売してくださる店舗が減る前に「間に合わせたかった」という気持ちです。

──なるほど。いまはダウンロード販売もありますが、あくまで「パッケージ販売に拘りたい」という思いだったのでしょうか。

TADA氏:
 そうです。この先もきっとエロゲー業界はなくならないとは思いますが、パッケージで販売する形は「そろそろヤバいな」と、だいぶ危機感を持っていましたね。やはり『ランス』はパッケージソフトとしてシリーズを始めましたから、『X』もパッケージで終わらせたかったんです。

エロゲー業界からのインタビューとなってしまうのだが、パッケージ、現物での販売は確かに目に見えて減っている。その代わりでダウンロード販売に変わってきている。
これは何もエロゲーに限った話ではない。Steamなどもそうだ。家庭用ゲームに至ってもダウンロード販売の存在は大きくなっている。

それでも現物のパッケージが品薄となってプレミア価格となるケースも多い。未だダウンロード販売が完全にパッケージを上回ったとはいえない部分はある。

これは本、書店であっても同様である。特にコロナ渦にあっては、外出控えもあってか、電子書籍が売れていると聞く。そして、今まで苦しかった書店はトドメを刺された感じで、閉店に追い込まれている。

こう照らし合わせると、エロゲーでもパッケージ販売で完結を迎えたかった同様、人気シリーズの完結は紙の本として最後の花道だったのかもしれない。一本、二本ならただの偶然と済むが、片手で数えられないほどの人気タイトルが完結している。

それに一巻だけで打ち切られるケースも合わせれば、紙で出す販売はゲームと同様に末期なのかもしれない。
そして、書店に変わる販売、提供経路としての電子小説サービスの登場は、この考えを補強している。

また、このタイミングで「涼宮ハルヒ」シリーズの新刊が出ることは同様ではないかと思ってしまう。

初回生産限定版とはなるがリバーシブルカバーでは、かつての角川スニーカー文庫のレイアウトを再現している辺りはコレクター心をくすぐる仕様でもある。そして、ここはレーベルの歴史も感じる点である。
この先の話はともかくとしても、リバーシブルカバーを見ても今と昔の転換期を示しているのは間違いない。

■ライトノベル10年周期説

Wikipedia「ライトノベル」では歴史というか出版社、レーベルの誕生時期が年代が分けられている。その年代をまとめる、こうなる。

ラノベの歴史
・1983年1月 吸血鬼ハンターD、第1作が発行。
・1984年以前 明確なレーベルはないが、ソノラマ文庫などあった。
・1989年8月 「角川スニーカー文庫」として正式に創刊
・1992年 メディアワークスが設立。
・2002年 MF文庫Jが創刊。他の出版社も新レーベル参入。
・2012年 ヒーロー文庫など、オンライン小説専門レーベルが立ち上げ。

こう見るとライトノベルは、ほぼ10年周期で変容、新しい軸でのレーベル立ち上げがされている様に見える。最近の変化点である2012年は、ヒーロー文庫などのオンライン小説専門レーベルが立ち上げられている。
この流れからは考えれば、あと数年でなろう系を筆頭としたオンライン小説の主流が変わるとみても、乱暴な言い方ではないだろう。

ただ、数年前の今でも何かしらの予兆があるはず。実際、紙の本が売れない事実だけでも変化の予兆といえる。

これに対して私は小説投稿サイトなど「収益化」であると考えている。更に、先の電子小説サービスをの要素を付随すれば、この「収益化」という考えは的外れでは無いと思っている。

ただ、その「収益化」とは何かは長くなるため、今回は詳しくは書かないが、YouTubeのような「収益化」を想像して貰えれば、おおよそ理解して頂けるだろう。
商業ラインに載せなくとも、個人でコンテンツを作りだし、収益を得られる流れである。

また、出版不況によって出版社自体の紙離れも進んでいく。現に印刷自体も小ロットに対応したオンデマンド印刷によって、欲しい人にのみ、紙としての本が素早く手に入る形へと変わっていくと予想されるからだ。
そして、雑誌、本のサブスクリプションによって、紙の本は割高感が増えていくことにもなるだろう。電子書籍にしても、紙の本と比べて値引きされいることが多い。

出版事業自体が紙からの大きな転換期に来ているのは確かである。
そうなっていくと従来の印税といった形も変わる事になりかねない。これでは作家を出版社と結びつける力が弱くなるかも知れない。1万部単位から1部単位での収益となっていくのだから。

ライトノベル10年周期説が確かであれば、来年以降で大きな変化が見える年となるだろう。今回のタイトルで「ライトノベル新生2022」としているのは、ここにある。

■編集者はこの変化を分かっている

編集者は現場にいるだけあって、変化の流れは肌に感じている。だからこそ、いち早く分かっている。そういった事情は記事ともなっている。

電子小説サービスだけでなく、電子書籍ストアなどが多く出てくれば、そこで重要になってくるのは作家以上に編集者となってくる。
特に多くのヒット作を送ってきた人物なら、何処も欲しいだろう。

編集者個人にとっても、この流れは良い機会ともなることだろう。
しかし、その一方で抜けた穴が埋められるかは別問題ではある。

また、ライトノベル業界の中で多くのヒット作を出してきた、三木一馬が代表取締役をしている株式会社ストレートエッジにしても電子書籍で配信を開始している。

電子書籍なら製本、在庫といった設備、場所がなくとも極端な話、パソコン一つで作り出す事が出来る。
つまり、編集者一人いれば、電子書籍だけであれば出版社を立ち上げる事は可能である。紙の本にしてもオンデマンド印刷を利用すれば、少々割高であっても1冊単位でもすぐに作ることが出来る。

また、これは専門的な知識を持つ編集者だけの特権ではない。個人であっても同様である。

ここでも出版事業自体が変化しており、編集の現場からも見て取れる。

■コンテンツにおけるハードとソフト、アプリ

Apple自体も今までのコンピューター販売から、iPhoneなどもありサービスの方に売り上げはシフトしている。「Apple TV+」などの例からもそれは明らかである。

先にも挙げた通り、出版社は誰でも出来る話となっている。
コンピューター制作から始まったAppleであっても、いわばテレビ局を開局したようなモノなのだから。

また、今後、電気自動車に完全シフトした世界では家電メーカーが今までの自動車会社を押さえて、台頭することもおかしな話では無い。

どの業種にしても、今の変容で事業がシフトしている。
そういった現在において、ハードを作ることよりもソフト、アプリの方が重要視されている。

出版社に置いては、それはコンテンツの販売となるだろう。昔から「角川映画」というと角川書店のメディアミックス展開を指すことが多かった。それほどに、本だけ売っていたのでは今のKADOKAWAは無かっただろう。

近年でも『艦隊これくしょん -艦これ-』にKADOKAWAが関わっているが、ゲーム単体での収益よりもメディア展開、IP(知的財産)を駆使した収益モデルで考えていることが語られている。

「角川映画」の自社の本から映像を作るではなく、別のソフト、IPから本、映像を作るといった形に「艦これ」を見ても、流れがシフトしている。

コンテンツにおけるハードとソフトというモノは、今と昔と比べても変容している。
VTuberなどの人気から見ても、出版社側がハードといえる権利を強く持っているのではなく、ソフト提供といった形でハード、権利者と寄り添っていくのかもしれない。

■一旦の締めとして

これ以上はコンテンツ作りに話へと移るため、ライトノベルを軸にして語れば蛇足感が強くなるのと、長くなりそうなので今回はここまでとしたい。
自分自身もまだ整理できていない部分もあるし、長くなればなるほど書くことに対して労力が増えていく。

この話題は語ること、ネタとしても尽きないため、今後も小出しにして語っていきた。

また、今回は語れなかったが、個人の同人誌でもあってもアニメ化されるなど、個人の力は増しているのは分かる。
実際、「艦これ」にしても、ある意味では個人の企画からスタートしている。それに日本の話ではなく中国のタイトルとはなるが、『ドールズフロントライン』に関しては同人から出てきたタイトルである。

こういった流れがある中では、オンライン小説発であっても同様と考えている。原作の書籍化は経ずにコミカライズした「シャングリラ・フロンティア」なども同様なケースだろう。

それらを踏まえて、今までにないライトノベルの形、いわば生まれ変わり、新生は確かなモノだと私は考えている。
また、現行のライトノベルは紙とともにオワコンともいえる衰退も見せている。それが一巻打ち切りなどからも見て取れる様に、普通に売れてない証明でもある。

むしろ、ライトノベルのオワコン化について、私はあまり気にしていないし、興味も無い。何しろ、新生に対しての今が好機であると考え、行動に移すのであれば今しか無いと考えているから。今と過去を振り返っている暇など無い。

ともあれ、「ライトノベル新生2022」というイベントに、私の名前にしろ功績を末席でもいいから刻んでいきたいと考えている。

読んで頂き、もし気に入って、サポートを頂ければ大変励みになります。 サポートして頂けると、晩ご飯に一品増えます。そして、私の血と肉となって記事に反映される。結果、新たなサポートを得る。そんな還元を目指しております。