デザイナーの論理思想と情緒思想についての雑記

先日こちらの記事を読んで僕なりに色んなことを考えさせられたので、いつもの深く考え込んでしまって気づいたら朝になってる悪癖パティーンを晒してみる。

まず前提としてとてもいい記事であり、めちゃくちゃ同意できるし示唆深い。
この記事そのものついての言及ではなく、デザイン思考という論理的なアプローチと、アート的な情緒なアプローチについての個人的雑記。


昔とあるクリエイティブディレクターと会話してて、昨今の生活者は美しい意匠表現に目が慣れつつあるから今一度意匠品質に目を向けるべきかもしれないなんて雑談をしてたのをこの記事を読んでいて思い出した。

「デザインの価値を論理と経済合理性だけに限定的にしない」ことにはpodcastでも度々話しているようにすごく共感する思想だ。

とはいえ実際の顧客の課題解決に当たっているUIデザイナーがこの思想をいきなり体現しようとすると、人によっては不幸になるケースがあるかもしれないなと思っている。

この論はつまりは人間中心な観察と経済合理性をもってアジャイルに課題解決する思想と、 論理を飛び越えた人の内面から生まれる強烈な意匠への意志の両面によって課題解決と文化醸成と、デザインの適用範囲を広げようという話だ。

それを踏まえて現実の現場においてはどうか? ビジネスである以上そこで働く力学として経済合理性は優先というより前提条件だ。なので誰もが理解しやすく再現性のあるクイックな問題解決のマインドセットは一定ビジネス組織として受け入れらやすい。

しかし論理の外側にある意匠への強烈なこだわりによる情緒的思想は、その経済的価値をビジネスとして説明することが非常に非常に難易度が高い。

これらの2つの思想を現場レベルで、特に色んなバイアスや色眼鏡で見られがちなデザイナーが上手く活用できるものだろうか?

要はたくさん考えなきゃいけないことを増やしてしまうことで、現場からの現実的な要求事項やフィードバックと、デザイナーとしてのアイデンティティで苦しみ、周囲との摩擦によって疲弊してしまったり、自分のスキルや価値を必要以上に下げて自己肯定感を損なってしまったりしてしまわないだろうか?と。

この論に限らず昨今のデザイナーに求められる役割は多種多様でそれだけでもやるべきことは盛りだくさんだ。

既に十分な知識や経験や技能を持ち合わせているデザイナーであればこれはとても歓迎したい論であり、さらにデザインの価値を広げる指針にもなる。

とはいえ論理的な問題解決アプローチで手いっぱいな中、日々苦悩しながら頑張っている方もいて、デザイナー人口の割合としては圧倒的にこちらが多いと思う。

なので自分の現在地に応じて、理想は理想としていつかやれるようになる!と心に秘めておき、ひとまず人間中心的な観察とアジャイルな問題解決で小さく価値を生む、それを積み上げていく、価値を積み上げによる信頼を築いた上で情緒の世界にアプローチする、といった自身の成長のステップを刻むのがいいと僕なんかは思う次第。

デザイン思考だけでは複雑化し多様化した現代の事業とユーザーの不確実性を突破できないのは重々承知だ。
だけれどトップダウンで持つべき思想と、ボトムアップで持つべき思想は分けて考える、個人に応じた段階的なステップであり、できればエグゼクティブやマネージャーにはコーチング。メンバーには育成的な観点から、理想と現実の両方を満たすアプローチができるといいなと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?