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宇宙に渦巻きが多いわけ

宇宙に渦巻きが多いのは、主に重力(引力)と、角運動量の保存という重要な基本法則があるためです。どちらもニュートン力学以来の伝統的な物理学の重要な概念ですが、特に最新の難解な理論が必要なものではありません。

重力はともかく、角運動量のほうはは聞き慣れないかもしれませんが、回っているものの回る「勢い」みたいなものです。フィギュアスケーターが腕を縮めると回転がどんどん速くなるのはご存知かと思います。これは角運動量保存のためで、物が小さく集まると回転は速くなると思ってください。

で、次は重力の出番です。宇宙にある天体はとにかく大きいので、重力が強いです。中心に重たい天体があると重力に引っ張られてそこに物が集まります。 このとき、引っ張られて集まる物が持っている角運動量が保存するので、集まれば集まるほど回転が速くなるわけです。外から物が落ちていきつつ、中心に向けてどんどん速く回るようになるので、必然的に渦巻きができます。

では、はじめに角運動量はあったのでしょうか? つまり最初に回りだしたのは誰、というのは深遠な疑問で「どのくらいグルグル回っているのか」が解明されていないという重要問題に直結します。というのも、最新の観測から宇宙自体は全体として回っていないというのが分かっているからです。つまり、天体のスケールで最初に回りだした(業界用語では初期条件を決めた)のは誰かというのが未解決で、私も興味を持って研究を進めています。

さて、おそらく自然に太陽系や銀河系、アンドロメダのようなほかの銀河もグルグルしながら縮んでいくのか、という疑問がわいてきます。 実は、これらは基本的に少しずつ変形することはあっても縮むことはありません。お話を分かりやすくするため、いったん細かいことを忘れると、太陽系や銀河は中心に集まろうとする重力と遠心力(日常経験するあれです)が釣り合った状態になると、そこで大きさが決まってしまいます。

遠心力は物が回るときに生じる外向きの力なので、重力と逆に働くことはなんとなく感覚的に分かるかなと思います。 渦巻きになっている天体はまだこの釣り合いに達していなくて、物が中心に落ちていく状態のことが多いです。星や惑星系ができるときは最初グルグルのパターンができ、その後釣り合った状態に落ち着きます。太陽系を想像してもらえれば、各惑星は楕円軌道を回ってはいますが、渦巻きはもうありませんね。

グルグルの渦巻きがはっきりしているのに例外なのが渦巻銀河で、こちらは釣り合っている状態で生まれています。 この渦は回転が原因なのは同じですが、重力と遠心力はすでに釣り合っているので、渦巻きを維持する別のメカニズムが必要なのです。この理由はある程度まで解明されていますが、詳細はまだ不明なところも残っています。これも研究課題のひとつです。

(2022年9月1日)

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