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銀河の中心には何がある?

銀河の中心には何があるでしょうか? たとえば、銀河系の中心には太陽の100万倍ほどの重さのブラックホールがあります。最近、本間希樹教授らがその画像を公表したニュースがありました。ほかの銀河でも、一般的に大きな銀河の中心には巨大なブラックホールがあることが知られています。ただし、小さな銀河(矮小銀河と呼ばれています)ではブラックホールはめったに見られないのです。この辺も興味深い未解決問題です。

イベントホライゾンテレスコープ(EHT)によって撮像された銀河系中心のブラックホールシャドウ (提供:EHT Collaboration)


イベントホライゾンテレスコープ(EHT)によって撮像された銀河M87中心のブラックホールシャドウ (提供:EHT Collaboration)

ですが、このブラックホールが銀河系の材料を集めたわけではないと考えられています。銀河系など巨大銀河のもつ物質をかき集めるにはこれでも軽すぎるのです。そうではなく、物が自分の重さで重力を発生して、遠心力と重力のバランスで銀河系の大きさが大体決まり、あとは周囲の小さな銀河などを食べて成長してきました。

巨大銀河の重さに対して、ブラックホールの重さは軽いと書きました。ひと声、銀河の重さのだいたい1/10000くらいです。ところが、銀河全体と中心のブラックホールの重さの間には大まかな比例関係があります。人間にたとえると、全体重の1/10000の増減なんて誰も気にしないですよね。それが比例するというのはとても不思議なことなのです。この関係を、発見者の名前を取ってマゴリアン関係(Magorrian relation)と呼んでいます。

実は、マゴリアン関係が存在する理由は重要で、銀河と中心のブラックホールが一緒に成長してきたという仮説が正しいかどうかが活発に議論されています。これを銀河-ブラックホール共進化と呼んでいます。このメカニズムが正しいならば、マゴリアン関係は自然に出てくるというわけです。

銀河は、その中での星形成と銀河合体の2つの過程で成長します。どちらの過程であっても物は増えますから、何らかの理由でブラックホールの種ができたとしたら、そこに物が落ちていくことで銀河と一緒に成長するという考えは自然に思えます。とはいえ、それが「どのくらい」正しいのかを決めるまでは物理屋は「分かった」とは言いません。というわけで、私も含め、多くの人がこの機構を観測、理論の両方から検証し続けています。

ブラックホールに物が落ちていくと、とてつもなく巨大なエネルギーが放出される現象が起きます。こちらについては稿を改めて書きます。

(2022年9月1日)

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