最後くらいまた春めくような綺麗なさようならしましょう
春の日差しが暮れ始めた頃、国道で渋滞に捕まった。
特別帰路を急いでいるわけでもないし、と動き出した車列を気にしつつ、フと反対車線に目を向けた一瞬目が離せなかった。
散々な別れというよりも一方的に向こうから切ってきた男がいた。と思う。
同じ車種、同じ色を見るたびなんとも言えない気持ちになる見覚えのありすぎる車、眼鏡が曇るからと運転中は鼻マスクの顔。
良いのだか悪いのだか分からない記憶力と動体視力では車のナンバーまでは見えなかった。動き出した車に意識を取られつつもサイドミラーで目