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【真】黒服物語〜金と女と欲望の世界〜09

ウェイターを始めてはや2週間。

昼と夜の掛け持ち生活はとてもきついものがあったがそれに勝る充実感があった。

夜19時に仕事が終わり、その後すぐに車で繁華街へと移動し店近くのコンビニでおにぎり2つとエナジードリンクを買い店へと向かう。

足早に着替え20時からのオープンに間に合わせるようにおにぎりを口の中に放り込みエナジードリンクで流し込む。

可愛い蝶ネクタイを微調整しながら口にタバコを加えて髪の毛をセットする。

2週間も経てばこの仕草も様になり俺はこれだけ早くに着替えれるんだぞと誇りを持ち始めた頃であった。

女の子からも少しずつ存在を知られ始め最初のうちはどれだけドリンクを持って行ってもありがとうの言葉もなく世の人類が平等に吸って吐いている空気と一緒の存在であり、ひたすらに無視を繰り返され、何かあれば冷たい目線を送られていた。

正直こいつらいつか殺してやるという殺意が僕のエネルギーとなっていた。

そんな中只1人だけいつもニコッとしてくれるのがこの店No.1のひなだけであった。

歳は34歳この業界に2年前に入り3ヶ月でNo.1となりそれ以降毎月この店、いやこの繁華街のNo.1であり続けている凄い人だ。

夜のお店のNo.1は孤独でありサバサバと良くも悪くも自分自身という道をもち後ろを振り返ることを許されぬままその道を歩いていると言うイメージがあったが、このお店のNo.1はそのイメージとは真逆の存在であった。

常に暖かく誰からも愛され誰にでも愛を与え人格者とはこの人の事を言うんだと言葉ではなく5感全てで感じ取れた。

そんな中一つの事件が起きたのだ。


僕「いらっしゃいませ、お客様お飲み物はどうなさいますか?」

客「おう、いつもの持ってこいよあんちゃん。」

ひな「勘太郎君〜さんがいつもおろしてくれるクリスタルロゼ持ってきて〜♪」

僕「〜さんいつもありがとうございます!今日もクリスタルロゼありがとうございます!」

客「おういんだよ俺はこの酒が好きでこの酒しか飲みたくねぇんだ、金どうこうなんてどうでもいいからよ、早く持ってこいよ!」

ひな「〜さんいつもありがとう!」

(この人いつもクリスタルロゼ頼むけどすごいお金持ちだよな〜。しかも酒癖も悪くないしめちゃくちゃワイルドでカッコいいしこんな人になりたいな〜俺も。)

客「今日はよ、めちゃくちゃ気分いいからとことんまで飲んでやっからなひな!楽しみにしておけよ!」

ひな「〜さんとならひなもいくとこまでいっちゃうよ♪」


世の中にはお金持ちという人が沢山いる。特にこのキャバクラに来る人はそう言った人が多い、そしてお金持ちの中でもかなり変わった人が多く集まるのもキャバクラである。

本当にお金なんてどうでもいいから楽しみたいんだ、この女を俺の女にしてやるんだと本気で思ってる連中がキャバクラの中における最上位の顧客となる。

今日この女を落とせるかどうかの微妙なラインがこの業界の1番の金の生まれどころである。

「1人1人のお客様は平等である!」

なんて言葉もあるがその言葉はこの業界の中では嘘になると思っている。

クレームをどんどんぶつけてくる顧客はリピーターになる確率がかなり高い。

何故かと言うとお店側が優劣を付けているからだ。
満足のいくサービスがされていないとお金を持った人がお店側へクレームを言う。

例えば、女の子がついていない、可愛い女の子じゃないからチェンジを今すぐしろと一晩で何百万と使うお客様からこんな事を言われたら、他の席を全て犠牲にしてでもそこの席へ全力投球を行うのが水商売。

その事により結果的にいい女の子がそこの席につき自分が欲している要望は全て実現されるのだ。結果的にそのクレーマーの顧客満足度はあがる。

普通の企業、普通の飲食店からしたらあり得ないような事でもこの夜の世界では日常茶飯事な事なんて山ほどある。

長い目で見た時にこの手法は正しいか間違ってるかで言ったら確実に間違っている事は全員がわかっている。

全員が右側が正しいと思いながらも知らないふりをして左側が正しいと公言する世界なのだ。

お金の流れを水脈に例えるならば水商売と言うものはその水脈の一撃の流れがとてつもなく大きくとてつもなく短いものであると僕は思う。

そんな商売長続きしないよと鼻で笑う人達は沢山いるが現実的に水商売が今も尚この世の中から無くなっていない事実がある事をみんな忘れてはいけない。

姿形は変われど欲望の金に群がり蛆虫のように湧き出てくる店、人。

この社会から水商売は無くなる事はあるのだろうか、、、。

次回、勘太郎太客とのトラブルに続く。


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