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萬御悩解決致〼 第一話③

圭介の話によると、四月に学校がはじまってすぐ、楓は相良から告白されたのだそうだ。

相良は家が金持ちのチャラい奴で、いつも取り巻きの4、5人とつるんでいる。ふざけることで、皆んなの注目を浴びたいタイプで、面白くもないギャグを言ったり、真面目な場をわざとまぜっ返したり、ほんとにつまらない奴だ。大人しい楓とは、どう見ても合いそうにない。

「で、楓はどうしたんだ」
「楓ちゃん、ビックリしたらしいよ。男の子に告白されるなんて、たぶんあの子の生活周りにはないことだしね」
チーズバーガーを頬張りながら、奈央もうなずく。
「で、楓ちゃんは一週間悩んで答えを出した」
「うん。答えは?」
「付き合ってもいいよ」圭介が楓になりきって言う。「でも、まだ相良くんのこと、よく知らないから、友達から」
ちょっと引く。楓でなく、勿論圭介に。奈央もそうだったんだろう。食べ終わったチーズバーガーの袋を丸めながら続きを自分で話す。
「楓は優しい子だからね、たぶん断って相良を傷つけるのが嫌だったんだろうね。それに、付き合ってみたら、相良にも案外いいところあるかもしれないって。まぁ、あるわきゃないんだけどね」
「こと恋愛に関しては、YES・NOをはっきり言うのが優しさなんだけど。楓ちゃん、まだ若いよね」
どう考えても恋愛経験ゼロの圭介が尤もらしく言った。奈央も目を丸くして圭介を見た。

「で、何が問題なの?」
「相良のやつ、それじゃ嫌だって言ったんだ」と奈央。
「何が、嫌?」
「付き合うんなら、俺を好きだと言ってくれなきゃ嫌だ、と。俺も言ったんだから、楓にも言って欲しいって」
「なんだそれ。付き合うって言ってくれただけで充分じゃね」
「そうよね。だけど、相良は譲らないんだって。それで楓も」
「私も相良くんのこと好きだよ」と圭介。
 圭介のことはほっといて奈央と話を進める。
「言っちゃったわけだ。で、何が問題? 付き合ってうまくいかなくても、楓はもともとそんなに相良のこと意識してないわけだし、リストカットするほどのことは」
「続きがあるのよ。楓が好きだって言ったら相良、なんて答えたと思う?」
 圭介を見る。出番だ。圭介はおもむろに咳払いをして、
「うそぴょーん」と変顔。
「ゲラゲラ笑って、俺がお前なんか好きなわけないじゃんって。したら、隠れてた取り巻きの4、5人も現れて、引っ掛かってやんの、バカじゃね、みたいな」
「ひどいな。笑いものにしたのか」
 圭介を睨む。俺は怒っている。怯えた圭介は顔をフリフリさせて、僕じゃないって、と言う。
「お前も面白がってるだろ」
「違うって。僕は臨場感だそうとしただけだって。相良に怒る気持ちは、お前と一緒だって。僕は奈央と一緒に楓ちゃんの相談に乗ったんだから。信じろよ」
「どうだか」
「まぁ、信じてやってよ。楓の話聞いてるときは、圭介も真剣だったし、怒ってもいたよ」
「で、リスカか……」

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