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【昭和歌謡名曲集13】俵星玄蕃 三波春夫

三波春夫が嫌いだった。村田英雄の「王将」は、わかった。好きな人がいるのも。英雄が何を歌いたいのかも。
だが、春夫の需要がどこにあるのかわからなかった。70年の万博の画像がテレビに出ると、必ず、🎵こんにちは、こんにちは、世界の国から〜、が流れる。馬鹿っぽくて嫌いだった。紅白で歌うと、必ずバックに花笠を被った和服のお姉さんがたが大量に出てきて踊り出す。なんじゃこりゃ、毎回毎回! 私は春夫が出るとトイレに立った。

が、何かの拍子にYouTubeで、「俵星玄蕃」を見た。
🎵 槍は錆びてもこの名は錆びぬ~
始まったよ。おいおい。お姉ちゃんはいつ出るんだ。完璧に嗤いに行っていた。そんな感じだった。
なになに、忠臣蔵? 俵星玄蕃って誰? 忠臣蔵にいたっけ、そんなやつ。みたいに見ていた。
が、
おっ、
おっ、おっ、おっ。おおお。
と引き込まれていった。
「時に元禄15年12月14日、江戸の夜風を震わせて〜」
と名調子が始まると、完全に画面に引き込まれた。
「雪をけたてて、サク、サク、サクサクサクサク。
『先生』
『おうッ、そば屋か』〜」
か、かっけー。おいおい、かっけーぞ、これ。これ、すげえ! 台詞を終えて、会場は大拍手。私も拍手していた。馬鹿だった。三波春夫を見誤った。広いステージにたった一人。で、会場を圧倒した。歌い終えて、槍を小脇にはけていく春夫は、歌舞伎役者のようだった。
これが、浪曲師の実力か。
日本の大衆文化、恐るべし。

よいことを教えよう。

三波春夫を笑うものは、三波春夫に泣くぞ。

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