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あの頃12

文藝部新入生お楽しみイベントとして観劇が企画された。
新歓はタダだったが、観劇は金をとる。2000円だったと思う。3000円だったかもしれない。が、それ以上では絶対ない。文化を享受するには金がかかる。今思うと、とても安い。

新入生はE女史をのぞいた男四人が参加した。2年のM Iさんが企画してくれた。
寺山信奉者のMIさんは、天井桟敷が見せたかったのかもしれないが、公演がなかったのか、いきなり寺山は刺激が強すぎると思ったか、つかこうへいの公演だった。

紀伊国屋ホールの後ろの方の席で「蒲田行進曲」を観た。
18の田舎者の私に、それは衝撃の体験だった。

銀ちゃんー加藤健一
ヤス  ー柄本明
小夏  ー根岸季衣

前向きのマゾヒズム。
新しい価値観。
舞台の奇跡を目の当たりにした。

その後
銀ちゃんー風間杜夫
ヤス  ー平田満
小夏  ー根岸季衣
バージョン

映画
銀ちゃんー風間杜夫
ヤス  ー平田満
小夏  ー松坂慶子 
バージョン

も見た。
どれも感動した。
つかさんの公演は、同じ公演でも日がちがうと、毎回微妙に違う。役者の馴れを避けるためか。
だから、舞台の緊張感は半端なかった。
東京には芸術がある。それを享受するには金がいる。
実感した1日となった。

大学4年間で、いろいろ観劇した。備忘録として以下、掲げる。

つかこうへい
 蒲田行進曲
 熱海殺人事件
 寝盗られ宗介

唐十郎
 二都物語
*「唐の台詞って、何言ってるかわかんねえよなぁ」MI先輩談。ホントにわかんなかった。

野田秀樹(夢の遊眠社)
 ゼンダ城の虜
 野獣降臨(のけものきたりて)
*どっちかで伊藤蘭ちゃんがでてて、彼女が劇中で投げた「愛読者カード」を拾えた。

太田省吾
 水の駅
*今は亡き大杉漣さんが出てた。2時間、役者の誰も喋らなかった。太田さんも亡くなった。

寺山修司(天井桟敷)
   レミング
*最後の公演だった。この後、寺山さんは亡くなった。

竹内銃一郎
 戸惑いの午後の惨事 
*竹内さんも亡くなった。
             など

つかこうへい事務所が解散してから、急激に演劇熱は引いていった。
つかさんが死んでから、観劇は数年に一度になってしまっている。

つかさんは在日だったという。
「つかこうへい」は「いつかこうへい」のアナグラムとも聞く。まあ、いずれにしても、私たちにとって、一代の天才だった。

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