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わが師折口信夫 加藤守雄

ジャニーズ関連のあの事件。それについてのコメントは控えるが、あの頃、頭をよぎって仕方ない本があった。本書である。加藤が、この本を書いたのは折口の死後である。
折口は小説「口ぶえ」の通り同性愛者であった。当然、生涯独身で身の回りのことを、住み込みの弟子が行なっていた。国文学、民俗学、釈迢空としての短歌、小説。折口は圧倒的な知の巨人であった。慶應、國學院の弟子(あえて弟子と呼ぼう)たちにとって、折口は神だった。
折口はお気に入りの弟子ひとりに、住み込みとして自分の世話をさせ、そして、関係を迫る。その何代目かに加藤がいた。加藤はその様を書く。その圧倒的な学識に惹かれ離れ難い思いと、その性をどうしても受け入れられない思い。それをこの本で赤裸々に書いていく。第三者がうかうかと感想など語れない地獄図がそこにある。
結局、加藤は折口の思いを受け入れられず、出奔する。ただ、学問は生涯続ける。
折口信夫の死を看取ったのは、岡野弘彦、池田彌三郎、そして知らせを聞いて駆けつけた加藤守雄だったそうである。
(「わが師 折口信夫」加藤守雄 
 朝日新聞社 )





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