小説精読 少年の日の思い出4
主人公のぼくは、貧相な装備しか与えてもらえない。だから、それを引け目に感じて、自分の蝶の収集を他人に見せなくなる。自分の世界に閉じこもり、自閉する。
ここで、2年後にエーミールと紹介される教師の息子が登場する。彼は非の打ち所がない子供として描かれる。その完璧さゆえ、ぼくは彼のことを賞賛しながら憎むようになる。無論のこと、彼も蝶の収集をしていた。
ある日、ぼくは珍しいコムラサキを捉える。得意になったぼくは、エーミールにだけには、その獲物を見せようと思う。何故か。何故、憎んでいるエーミールに蝶を見せるのか。たぶんぼくはエーミールに自分と同じ匂いを嗅いだ。エーミールと自分は同類だと感じた。だから、見せた。どこが同じなのか。二人は共に他人を必要としない。その点で二人は似ている。他者からの嘲りを恐れて自閉するぼくと、完璧ゆえに他者からの支援など必要としないエーミール。そして二人はそれぞれに相手の蝶を傷つけるという同じことをする。エーミールは言葉で。ぼくは実際に。
いや、まだ先は急ぎますまい。今回は、このへんで。