男子校

枕投げならぬ枕叩きというものをしたことがある。たしか中学1年生の最初の、みんなで仲良くなりましょう的な修学旅行の1日目の夜だった。

どんな遊びかというと特に気の利いたひねりがあるわけじゃなくて、枕をバットのように持ってそこら辺にいる奴を思い切り叩く。でもそれだけだとただの乱闘だから部屋の電気を消した状態で闘う。顔を叩くと唇が切れて枕が血みどろになるからなるべく避けたほうがいい、と気づいたのは遊び終わってからだった誰かが疲れ果てて部屋の真ん中にある電気の紐を引こうとして、それを僕が思い切り叩いて防ごうとして紐ごと吹っ飛びさすがにこれはマズイとなるまで、これといって目的のないけれどエネルギーばっかりは有り余ってる中学男子のアホな闘いは続いた。

5限の体育が水泳で昼休みに水着に着替えたからせっかくだし学校から歩いて5分の所にある海で遊ぼうとなり、みんなで海に繰り出し大いにはしゃぎ。それがバレて先生に放課後こっぴどく怒られたなんてこともある。僕たちの学校の海水パンツは真っ赤で、その水着を着た中学男子が5人ほどまだ海開きしていない海で騒いでいればそりゃバレる。どうしてそこまで気が回らなかったのだろうか。

朝の通学路のカバン持ちは壮絶だった。なにしろ負け続ければいつも登校時間ギリギリに駅に着く電車に乗っている、10人くらいのメンバーのカバンを持たなければならなくなる。下手をすれば遅刻だ。どうやらあり得ないくらいのカバンを背負っている男子高校生を不憫に思った近隣の住民の方が学校に連絡してくれたようで、職員会議で問題になり、それ以来この度を過ぎた登校中のカバン持ちは禁止になった。

時々廊下にゴミ箱にいれられて放置されているヤツがいた。お尻からいれられて、手と足だけが出ている。だから身動きがとれず出ている手と足をバタバタさせている。脱出方法はゴミ箱ごといちど倒れて全身でもがくことだけどそれ相応の腹筋と背筋が必要で、みんながみんなできるわけではない。泣き出すヤツもいた。

もしかしたら男子校だったからここまでできたのかもしれない、といくつものそんなしょうもない記憶を辿るたびに思う。あいにくいくらイケメンでもチヤホヤしてくれる異性なんていなかったし、ヒエラルキーはどれだけ馬鹿でいられるかというわけのわからぬ物差しで構成されていた。おかげで今も時々そんなしょうもないことをやってしまい、でももう周りは男子校なんかじゃなくて、いろいろと不便が多く困っていたりする。(おわり)

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