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授業の終わり方って難しい|2023飯塚高校スプラウト&kAIware⑤

昨日,一昨日と福岡女子商業高校における「女子商マルシェ」で出店し,クタクタであろう3年生。連続スケジュールで準備も大変だろうが,今日は今日で飯塚高校最終回の授業。本当に頭が下がる。ありがたい。

今年度,飯塚高校では3つのクラスそれぞれで異なるカリキュラムの授業を動かしていた。1つは従来のアントレプレナーシップ教育「スプラウト」,もう1つは昨年の講義内容をブラッシュアップした「スプラウト応用」,そして3つめは生成型AIを活用してビジネスプランを作成するプログラム「kAIware(カイワレ)」の3つ。授業内容は同じでも,ところが変われば刺さり方,理解の進度(深度)も異なるし,こちらが用意しているとおりには進まない。そんなことを改めてふりかえりながらの最終回。それぞれの授業と私目線でのふりかえりを書き綴ってみよう。

なお,これまでの飯塚高校での授業の様子はこちらのマガジンをご覧ください。

最終回はビジネスプランコンテスト|初めて最終回を迎えたkAIware

午前中は特進探究コース1年生に対する授業「kAIware」の最終回。これまで積み上げてきたビジネスプランを5分間で発表する。内容は①課題とその構造,②ペルソナ,③バリュー・プロポジション・キャンバス(VPC),④プレスリリースの4つを指定。前回授業の段階でスライドの雛形をあらかじめ与え,それをもとに高校生が生成型AIからのヒントもらいながら,プレゼンテーションを行う。

ビジネスプラン発表の基準

今回プレゼンを行ったグループは全部で8つ。そのほとんどが学業と部活動の両立で悩んでいるという課題を抽出し,勉強時間の捻出,スケジュール管理をどう行うかというアプリケーションが提案された。

あるグループのVPC:部活と勉強の両立に悩む女子高校生の課題

吹奏楽部に所属する女子高生チームは,部活動と勉強の両立に悩む女子高生をペルソナに設定し,成績向上と部活動によるストレス軽減を図るサービスを考案。そのサービスの内容まで踏み込んで検討はしていたものの,バリュー・プロポジションが「得・便利・向上」とキーワードだけの抜き出しになってしまい,あと一歩という印象。

こちらもやっぱり部活と勉強の両立に悩む女子高校生の課題がテーマ

また,別のグループはスケジュール管理にフォーカスをして,溜まったタスクをうまく管理できるようにすることで心理的不安を取り除くという点にブレイクスルーを求めた。が,ここもバリュー・プロポジションが「便利」というキーワードだけになってしまい,このビジネスアイデアの長所が伝わらないものになってしまった。

どのプレゼンもプレゼン資料はよくできていたんだけれども,いざサービスの詳細を設定するとなると粗が見えてしまう。5分の時間を目一杯使ったのは1グループだけで,他のグループは短い時間でスライドに書いてあることを読み上げるだけになってしまったことは残念。大学でも同様の講義をやっているが,いざプレゼンとなると小さくまとめようとしてしまう。真面目過ぎるのか,同調圧力が強いのか…。

生成型AIを使った授業を実施する意味

そうこうしてプレゼンは終了。2コマ目後半からはこの授業を実施してきた意味を改めて伝える時間に。が,高校生はメモを取ろうともしない。石仏のように座っているだけで,一体頭に何が残っているのだろうかという不思議な景色が広がる。

ここでのメッセージは一貫して問いを立てることの意味。世の中はクイズ番組のように正解を知っていれば何でもできるわけではない。その正解に至るまでのプロセスが重要であり,再現性のあるパターンをたくさん知っていることには一定の意味がある。それを未知の状況に適用し,検証を繰り返すことで新たな知識を獲得できる。基礎体力を身に着けているのが今の段階。それをもとにもっと自由な発想をして欲しいし,突拍子もないことを考えても良いのだ。

この授業の最終ゴールはとても遠いところにある。

そうした試行錯誤をすることを通じて,課題を解決することがビジネス=価値を生み出すことに繋がっていく。その元を正せばアントレプレナーシップにたどり着く。一歩踏み出す勇気がなければ何も始まらない。その勇気が自分を奮い立たせるという感覚=生きているという感覚を持つことで,自分の人生を自分で創ることができると信じたい。そのために学び続けて,チャレンジすることの意味を少し年上のお兄さん,お姉さんである大学生が伝えることにこの取り組みの意味があると考えている。果たして,少しは伝わっているだろうか。

ビジネスプランコンテスト優勝者へは賞状を配布。

さて,ビジネスプランコンテストは以上で終了し,高校生と大学生の投票によって優勝者が決定。若干不可解な結果ではあるが,(今後投票方法を改めるなどして)表彰が行われた。賞状を作ってくるなど,このあたりの細かい設定を作ってくるのが今年の3年生の特徴。

サポート役大学生からのそれぞれのプレゼンへのコメント

表彰式後は今日のサポートメンバーである3年生2名からフィードバックコメント。普通ボーっと話を聞いて,それっぽいコメントをしておしまいになりがちなところ,2人ともちゃんと芯を食ったコメントをしていた。3年生も後期になっているから人の話を聞いて的確にコメントができるようになっていて欲しいけれども,それがしっかりできている。この間の学生の成長を感じ取れた一瞬でもあった。就職活動,大丈夫だよ。

こうして,今年度から立ち上げたkAIware実施校での授業,1校目が終了。授業を一から立ち上げ,それこそ試行錯誤の末に無事プログラムを組み上げた。細かな修正ポイントはあるものの,概ね授業として伝えるべきポイントは伝えられたように思う。素晴らしい。

文化祭は大成功。ふりかえりはいかに。:スプラウト基本(トータルライセンス1年生)

午後からはトータルライセンスコースの1-2年生向け授業。まずは1年生向けの授業をふりかえろう。

トータルライセンスコースとは資格取得,特に商業系資格の取得を目指すコースで総合学科に作られた複数のコースのうちの1つだ。1年生は高大連携アントレプレナーシップ教育プログラム「スプラウト」を提供しており,この点福岡女子商業高校(女子商)と同じカリキュラムである。今日はその最終回。前回と今回の間に街なか学園祭が飯塚市内の本町・東町商店街で開催され,このクラスの生徒はチョコバナナを販売。詳細な金額は差し控えるが,売上に対する原価30%で商売を設計し,一定程度の利益を得ることができた。しっかりビジネスをしおる。素晴らしい。

1年生向けの授業も最終回。これまでのまとめ。

そうした上で,今回はこれまで4回の授業をふりかえるとともに,学園祭で自分たちが行ってきたことをふりかえる授業を実施した。

カリキュラムはアントレプレナーシップとコレクティブ・ジーニアスから始まり,理念・ビジョン→戦略→計画の重要性(ちゃんとミンツバーグの話に乗っかってる)を話し,これを駆動させるための装置としての組織,そこで果たす個人の役割を考える授業に。第4回に会計をテーマにに,高校生が自分たちのビジネスを設計し,目標を定めて学園祭に望むというもの。

組織って何だったっけ?

が,これだけの授業内容だから,全4回をふりかえるだけでも相当な時間を要する。これが昼食を取り終え,エアコンがガンガン効いている教室では辛い環境になる。高校生は瞬く間に眠そうな顔になる。喋っている学生も対応に困る(笑)。

街なか学園祭での販売店舗の様子

ふりかえりが進む中で新たな情報を得る。高校生たちは学園祭当日にチョコバナナはチョコバナナでも,さまざまな種類のそれを用意していたのだそうだ。担任の先生はボディビルダーであることから,今回の商品がチョコバナナになったというのもキャッチー。そればかりでなく,生徒の企画商品の中にはプロテインをチョコレートに混ぜてみたりと先生のキャラクターをうまく活用して相当の売上を得ることができた。

文化祭で学んだことはなにか。言葉にする第一歩。

が,ここで言葉にする=言語化する力が不十分であることを原因に学生が不安に陥る。というのも,ふりかえりシートに出てくるのは「できた」ことばかり。もちろん売上が十分に得られているので「できなかった」を高校生が見出すのは難しかったかもしれない。が,「できた」ことも行為に対する記述がメインでプロセスにまで至らない。あるいは,その過程でどんなことを考えたのか,感じたのかという心の動きも出てこない。

いったい彼・彼女たちはどこに心の機微を感じるのだろうか。

とても真面目だし,話しかけると屈託ない笑顔で話をしてくれるし,コミュニケーションは十分に取れているんだけれども,そういうところに何か物足りなさのようなものを感じてしまったのは私だけではなかったようだ。

アントレプレナーシップは課題の発見,機会の探索

そして,最後はやはりわたしたちがここにいる意味を話す時間に。今回のプログラムを通して,高校生たちはまちなか学園祭で機会を見出し,チョコバナナという商品を通じて多くの顧客を獲得することに成功した。しかし,それをビジネスという観点でなく,単に学園祭の出し物としてどうだったかと捉えていたのだとしたら,もう少し授業設計に工夫が必要だったということが言えるかもしれない。そのあたりの反応もイマイチ掴みきることもできず,手応えらしい手応えを感じることができなかった。

成果は出た。が,彼・彼女たちがどれだけ授業が理解できたかと言われればわからない。それを彼・彼女たちが発する言葉から理解をしたいのだけれども,ノックをしても出てこない。そのもどかしさを抱えたまま,今日の授業を終えた。

自分の心をノックするのは自分の言葉:スプラウト応用(トータルライセンス2年生)

さて,その心の扉のノックをいくら叩いても,悪ふざけをして切り抜けようとするのはトータルライセンスコースの2年生。そこに敢然と立ち向かい(笑),具体化と抽象化をテーマにふりかえりを仕掛けたのは当ゼミ4年生の有志。いつもの4人のうち,1人がインフルエンザ(可能性),1人がやんごとなき事情で欠席ということで,急遽ピンチヒッターで女子学生が来訪して3人で授業を行うことに。

具体と抽象をどう行き来するか。

このテーマはただでさえ難しいのに,それを言葉を十分に持たない高校生に求めるのだから酷である。それをわかっててやってる。少しでも高校生の可能性に賭けたいし,目立つのは悪ふざけをする生徒かもしれないが,中には真面目に授業に取り組んでいる生徒もいる。だからこそ,わたしたちは諦めずに授業を続ける。

これができたらすごいんだけど,高校生にも要求してしまう。

まずは10月の「飯福商店商い場」のふりかえりをベースに,街なか学園祭のふりかえり。学生が撮影した写真をもとに,できたこととできないことを峻別する。営業中,商品と現金を置いたまま席を離れても悪びれない(笑)。授業中,他の高校での取り組みを紹介した動画に最初は食いつき,カッと目を見開いて見ていたけれども,5分を経過すると集中力が切れてしまう。そうした中でも,滔々と自分が受けている授業が何で,何を目的に行っているかを話す同級生の動画を見ては少し火が点いて,ふりかえりを真剣に始める生徒もいる。とにかく今回のテーマは徹頭徹尾ノックをし続けることだ。

グループディスカッションを進める

こうして今回は少しでも自分の言葉で文化祭で起きたことを語る時間にする。しかし,当然のことながら,忘却の彼方。思い出し,意味を与えながら,自分たちの行動を説明することはできない。単に学校行事で販売をしただけで,自分たちには何ら責任はない。そういう反応がにじみ出ている中でも学生たちは心を切らすことなく授業を続ける(私だったらキレているだろうけど[いかん,いかん],最近は心を無にして淡々と授業をする術を覚えた)。

ちょっとした違和感,気付きから得られることを大切に。

そして,この授業最後のメッセージが上の画像だった。疑問を持とう,違和感を大事にしよう

本来であれば2年生向けの授業カリキュラムでは,1年生で学習した「スプラウト」の積み上げをしたかった。そのための準備をしてきたし,あらためて昨年彼・彼女たちがしたふりかえりを見れば,その期待をしていた。が,状況はなかなか残酷なもの。今日のふりかえり後,先生は「悪い子ではないからコップが上にさえ向いてくれれば」と仰っていたけれども,いろいろなことを考えさせられた5回の授業だった。

とにもかくにも,4年生のみんな,本当にありがとう。そしてお疲れさまでした。

ふりかえり

というわけで,飯塚高校におけるスプラウト&kAIwareプログラムはすべて終了。同校での2022年度の活動を終えた。

今回の学生メンバーとトータルライセンスコースの先生方とパシャリ

ここまで4回のnoteでも書いてきたが,今年度から3クラスを担当することになり,カリキュラムも異なることもあって学生には苦労をかけたと思う。その分,今年度取り組んできた内容の共通化もあって,改めてさまざまな高校との比較をしながらのプログラム運営になった。が,商い場や学園祭の実施についてなかなか確定せず,やるだけやっておしまいとなってしまったトータルライセンスコース2年生のプログラムは,こちらでできる改善とそもそも与えられた状況でどうしようもない部分があって十分な授業が提供できなかった(と残念に思っているし、もう少しいろいろご提案できたのではないかと反省しています)。

ようやくたどりついた飯塚の激ウマフード「牛牛うどん」を3年生チームと。

また,1年生2クラスについては一定の内容を提供できたけれども,高校に入ったばかりの生徒に大学生が授業する意義を伝えるのは難しいし,それを理解しろということも難儀。恐らく授業内容のほとんどが理解できなかったかもしれない。が,探究コースではプレゼンにその可能性を見出すことができたし,トータルライセンスコースでは街なか学園祭での販売成果から,来年度さらに立派な商売を立ち上げるだけの素養があることが見えた。特にトータルライセンスコースは来年度も授業を行うだろうから,さらなる成果に期待したいところ。

もちろん4年生チームも一緒に「牛牛うどん」。

が,やはり残念だったのは,最後までなかなか高校生の心の扉を開いてもらうところに至らなかったこと。開きかけるんだけれども,あと一歩というところか。大学生は上手くコミュニケーションを取りながら,高校生をワークへ方向づけるんだけれども,「考えながら進歩する」という学びの姿勢が見えてこない高校生にどこまで構えば良いかを判断するのは難しい。が、学生は生徒さんを素直だし、個別には話せば考えてる子もわかるし、いいところもいっぱいあると。むしろ、私が良くなかったのかもしれない。大いに反省しなければならない点がある。

アントレプレナーシップ教育の重要な論点に自己効力感があるが,果たして彼・彼女たちはこのプログラムから何を学んだのだろうか。単に学校の時間割の1つとしてしか捉えられていないのだろうか。そもそもアントレプレナーシップというキーワードが頭に残ったのだろうか。実は検証したいのだけれども,今年は十分にデータが取れていない。事後検証についてもアンケートをお願いするが,果たしてどうなるか。

引き続き何卒よろしくお願い申し上げます。

昨日(12/3),投資家の村口和孝さんに招かれ,佐賀県鹿島市の「起業疑似体験プログラム」というイベントに参加してきた。そこでは,地元の中高生に対して村口さんが1日講義をするというもので,最後には自分たちで企画して商品を販売するシミュレーションを行う。その帰り,女子商マルシェが開催されていた女子商に村口さんをお招きした。

村口さん&柴山校長&私のスリーショット

その道中,長年,東京を中心に,日本経済を支えるスタートアップを支援してきた目線で,村口さんから今私が取り組んでいる「スプラウト」について多角的なご意見を頂いた。

日本の地方で少し成果が出たくらいではなかなか評価されることはないと。確かに地方経済をどうするか,それは日本にとっても重要な課題ではある。が,創業体験プログラムを始めて12年,スプラウトを始めて5年で,やっとここまで来た感(でしかない)。その馬力を活かすのは今こそど真ん中ではないのかと。

村口さんのコメント(主旨抜粋)

まさに仰るとおり。何も言うことができなかった。

一方で,女子商で行っていた学生のふりかえりを見て,空港まで向かう車中でまた村口さんはこうも言ってくださった。

あんな学生たちを抱えていたら,飛田先生は簡単に離れることはできないよね。あの子たちがアントレプレナーシップ教育の最前線に立って高校生に授業しているんだって知ったら,そりゃ面白くなるよね。

村口さんのコメント(主旨抜粋)

そうなんです。でも,5年でやっとここまで。あと長くても10数年しか取り組めない。果たしてどうしたものか。貴重なヒントを頂いたが,肝心な私に発信力がない。人に信用されていない。が,前には進みたい。悩みは尽きない。

だいぶ話が脱線してしまったが,飯塚高校でのスプラウト2年目を終えることができてホッとはした。しかし,学生にはもっと適切な方策を提示できたのではないかと思い申し訳なく思っている。それでも3年生も4年生も今回関わってくれた学生たちはど真剣に最初から最後まで授業に取り組んでくれた。1つのプロジェクトをマネジメントした経験はかけがえのないもの。ぜひここで学んだことをこの先の未来に繋いでいって欲しい。本当にありがとう。

余談であり告知

さあ,残すところ,2022年は女子商での最終回,延期分のにちなん起業体験プログラムを残すのみ。と同時に,12月から2月の3ヶ月間で今度は『おおいた起業体験プログラム』が新たに立ち上がります。

緩めのポスターだけど,やることは硬派

今回は,大分県内の3都市(日田,豊後大野,佐伯)にある高校生を対象に,12月と1月に講義,2月に福岡市内にある大分県の就職支援施設dot.を会場に,彼・彼女たちに福岡まで来てもらって地元産品を販売することにしています。また,最終日2月12日はふりかえりを市内で実施予定。

ゼミ的にはここから2024年度体制のスタート。まだ十分に固まっていないのですが,3年生のサポートを受けながら2年生が授業をする方向で進めています。また,この他にも来年度は新たなチャレンジが増えそうで,たくさんのオファーを頂いております。果たしてスプラウトは継続できるのか。ゴーイング・コンサーンとしてのわたしたちにも注目してください(笑)

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