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グラミー賞2022エントリー作品のポイント

 2022年開催、第64回グラミー賞のエントリーが出揃いました。対象作品は2020年9月1日〜2021年9月30日リリース、ノミネーション発表は11月23日。今回は「候補の候補」が決まった程度なんですが、レーベル側からの出願ゆえに、アーティストチームの戦略がうかがえることが特徴です。ということで主要なポイント。

デュアリパはずれる

 2021年間ナンバーワンヒットと目論まれる「Levitating feat. DaBaby」をデュア・リパが出願せず。おそらくエントリーしなかった理由は、客演ダベイビーの同性愛差別スキャンダル。デュア・リパ先生って完璧キャラなのですが、呪われてるレベルで持ってないところはとことん持っていない気が……(この曲もHOT100ルール変更疑惑によって確実視された1位を逃している)。この曲の代わりにポップスモークとの「Demeanor」がポップデュオ部門に提出されています。

 つまり、第63回のThe Weeknd全落ち事件からつづいて、二年連続でポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス部門が本命不在になりました。ちなみに、週末さんは宣言どおり今回自作エントリーせず(カニエ側からコラボ曲「Hurricane」は出願済み)。

 ↓デュア・リパ紹介記事↓

ポップデュオの謎

 本命ナシでウォッチャーから「肩透かし」呼ばわりされてるポップデュオ部門ですが、年間トップヒットを争う24kGoldn&イアンディオール「Mood」がエントリー。この曲、2020年7月リリースなので対象範囲外だったのですが、2021年9月に出した「(live)」版でエントリーが認められました。こうした「前年度作品だけどヒットしたあとにlive版出して出願」戦略、結構あります。アデル「Set Fire to the Rain」、ファレル・ウィリアムス「Happy」はこのパターンでの受賞。

 今回ポップデュオ部門ではキッド・ラロイがジャスティン・ビーバーとの大ヒット曲「STAY」を出願せず、マイリー・サイラスとの「WITHOUT YOU」を選んだことが驚かれましたが、対象範囲の後半に出された前者はlive版戦略で次年度に回したほうが(累積認知的に)旨味があるのかもしれません。それぞれ単独曲エントリーしたコールドプレイとBTSのコラボ「My Universe」にしても期間ギリギリのリリースでしたし、やろうと思えば来年度に回せます。

 ↓リリース期間問題に関しては、下記記事の不利③↓

ロドリゴは運転免許証

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 2022年グラミー賞の主役候補、オリヴィア・ロドリゴはシンプルなエントリー。シングルはポップ部門に「drivers license」一本です。同じくメガヒット「good 4 u」をロック部門に提出するのでは?と囁かれていたんですが、こちらは潔く切った模様(ミュージックビデオ部門には出願)。実際、グラミー賞で票を集めやすいのは失恋パワーバラード「運転免許証」のほうでしょう。出願表の時点で勝ちに来る気迫が漂っております。彼女の場合、アデルやテイラー、ビリーと異なりグラミー会員に好かれるか微妙なラインだと思うので、どこまで無双できるかが第64回で一番気になるところ。

↓オリヴィア・ロドリゴ紹介記事↓

ポップ混戦

 ロドリゴ「good 4 u」とミュージックビデオ部門を争いそうなのが、リル・ナズ・エックス「MONTERO (Call Me By Your Name)」。もともとラッパーとして知られた彼ですが、ポップスター路線の今シーズンはポップ部門エントリーが多いです(「INDUSTRY BABY」のみラップ部門)。つまり今回もポップフィールドは混戦。ソロ曲は運転免許証が最有力な気がしますが、ポップ領域って毎回混戦なぶん、受賞/得票傾向がよくわかんないんですよね。

↓リル・ナズ・エックス紹介記事↓

ケイシー、カントリー入り

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 毎度ジャンルわけで荒れるグラミー賞ですが、カントリー界は本気度が違うということで、グラミー女王ケイシー・マスグレイヴス『Star-Crossed』がポップ部門へ振り分けられたことにレーベル幹部が怒りの長文発表したりしていました。ただし、シングル「Camera Roll」は無事カントリー部門認定されたとこのこと。ソングライティングをアピールするグラミー会員向け広告からして気合い突き抜けてますね。

BLACKPINKとPoloG新人部門入り

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 最もカオスとされる最優秀新人部門ですが、BLACKPINKとPoloGが有資格を得ました。一応「アメリカの人々に知らしめたブレイクスルー」的な条件ですが、両アクトともノミネーション時期過ぎてるだろとツッコまれる恒例行事。そもそも「ロドリゴ以外とることあるの?」状態の部門ですが、資格審査からして何があるのかわからないのがグラミー。キッド・ラロイ、スウィーティーも入ってますが、個人的に対抗馬は濃厚ロックなマネスキンな気がしてます。24kGoldn、モーガン・ウォレンはアウト。

↓グラミー新人賞解説記事↓

AOTY狙い撃ちドレイク

 グラミー賞と因縁を繰り広げるスーパースター、ドレイクさんですが、今回もラップ領域ではあちらこちらにエントリー。ただ、驚きはBIG4部門。あれだけヒット曲出してるのにアルバム部門『Certified Lover Boy』のみです。つまり、最もエントリー数が多く、注目度も随一なAOTY一本狙いです。ここ10年の「黒人は獲れないグラミー賞」風評はこの部門におけるビヨンセやケンドリック・ラマーの敗退により加熱したといっても過言ではないので、興味深いエントリーです。

↓グラミー賞の「黒人は獲れない」問題に関しては拙著↓

所感:アカデミー賞が熱い

 感想ですが……今回のグラミー賞、マターはいわくつきの審査委員会の廃止です。表向きには、ノミネーション候補を調整する幹部審査がなくなったわけですね。これまでアワードウォッチとしてのグラミー賞って「受賞結果よりもノミネーションが重要」と捉えていたのですが、審査がなくなるとなると、どう出るかわかりません。今年の時点でアワードとしての注目が激減して豪華音楽番組になっちゃった感じなんで、まぁ変え時だったわけですが。レース的には2023年のアデル対シルクソニックのほうが豪華そうですね(今回もシルクソニックはシングルで有力候補でしょうが)。

(ビヨンセ「Be Alive」版トレイラー)

 一方ですね、音楽アワードで熱いのが2022年3月の第94回アカデミー賞です。オリジナルソング部門で『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』ビリーアイリッシュと『King Richard』ビヨンセがぶつかりうるのです! ビリーはアカデミー賞でもパフォーマンス済みだし『007』自体が歌曲部門強いので充分受賞圏内。そしてビヨンセの曲、かなり良さそう! さらに夫のJayZもキッド・カディとの曲で入りそうなんですが、こちらのNetflix映画『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール: 報復の荒野』ではローリン・ヒルの曲もあるので、どれがエントリーされるか見もの。また、次のアカデミー賞には『ハウス・オブ・グッチ』主演としてレディー・ガガも来場する可能性があります。音楽スター集結の第94回アカデミー賞賞、あんたがグラミー賞だよ…… (暴言)


よろこびます