クイーンズ・ギャンビット考察&裏情報
ELLE JAPANでNetflixオリジナルドラマ『クイーンズ・ギャンビット』のおすすめポイントや豆知識を紹介したのですが↓
ネタバレ等で紹介できなかった情報や考察をこちらに書き連ねます!
【※ネタバレ注意】
スパイがいた?
ファンの間では、モデルのクレオ=ロシアのスパイ説が人気。重要な試合前のベスに酒を飲ませ、その後は登場しない。元々アメリカの有名チェスプレイヤーと親しくなっていた。加えて、最終話、ロシア大使館の協力により、タウンズに急遽ビザが降りてモスクワに来られたエピソード。作中描写される限り、ベスのタウンズへの恋心を知っているのはクレオだけ。ロシア大使館は、この恋を知って妨害するためにタウンズをモスクワに寄越した。クレオが密告したのなら辻褄が合う。
ラストバトルの服は第一話のオマージュ
ファッションについて。パリのピエール・カルダン・オマージュはELLEで紹介しましたが、衣装デザイナーのガブリエレ・バインダーいわく、フィナーレバトルのドレスは第一話に出てくる少女時代のワンピースのオマージュ。母親に名前を刺繍してもらったそれは彼女にとっての「ホーム」。自分に自信が持てたこと、母と共にあること、そして精神的な帰郷を表している。ラストシーンの純白スタイルはチェス盤の女王であること、そしてチェス盤そのものが世界であることを象徴している。主演アニャテイラー=ジョイによると、全身ホワイトで終わることは最初から決まっていた。
チェス描写の誤り
元チャンピオンのガルリ・カスパロフに監修を頼んで、関係者やプロプレイヤーからも「かなり正確」と評される『クイーンズ・ギャンビット』のチェス描写ですが、映像作品という都合上?、大きく異なる演出も。チェスライターのディラン・ローブ・マクレーンによると、まず「あんなに速く打たない」。劇中のテンポなら、2時間どころかすぐに終わってしまうそう。加えて「ゲーム中の会話」。一般的には、あんなに喋ると、マナーとルールに違反してしまうそう。ちなみに、カスパロフによると、少なくとも1950〜1970年代には薬物依存に苦しんでいるプロプレイヤーは世界チャンピオン含めて珍しくなかったとのこと。ただし、対戦準備にも集中力が要される今では不可能らしい。
95%ベルリン撮影
いろんな地域と国を舞台とした『ク イーンズ・ギャンビット』ですが、全体の95%、シンシナティ、ラスベガス、メキシコシティ、パリ、モスクワはすべてベルリンで撮影されている。元々西と東で隔てられていたため、1960年代からベルリン西部は西洋世界だとアピールするような建築物を多く作っていたそう。フィナーレバトルのモスクワ戦もベルリンの管理棟で、ベスを威圧する「チェスの寺院」をイメージして選ばれたとのこと。
主人公のモデルとされるチャンピオンは女性プレイヤーを軽視していた
ELLEでも紹介しましたが、監修を行ったチェスチャンピオンのギャリー・カスパロフが認めたように、ベスのモデルとされるのは、キャリアピーク時期も一致する天才ボビー・フィッシャー。14歳でチェスチャンピオンになり、ロシア語を独学し、当時最強枠だったロシア組のボリス・スパスキーを倒している。加えて、トビー・マグワイアが彼を演じた『完全なるチェックメイト』でも描かれましたが、ベスと同じく人付き合いが苦手で好戦的な人物、プレイも好戦的として知られています。また、プロとしての報酬にもこだわり、スーツと靴もこだわりのカスタムメイドだったそう(一方、アルコールやドラッグに苦しむ要素は原作者ウォルター・テヴィスの経験に近いとされる)。
しかしながら、ポイントは、ボビー・フィッシャーは「女性チェスプレイヤーを蔑視する思想」だったこと。生前、「女性プレイヤーは酷いものだ、あまり賢くない」と語っています。「女性は全員弱い。男性と比べて馬鹿なんだ。チェスをプレイしないほうがいい。初心者のようだから。男性とのゲームには全敗する」。女性蔑視的だったボビー・フィッシャーを思い起こす天才女性主人公で「男性優位なチェス界における女性の快進撃」をやる構図そのものに捻りがあるのかもしれません。ちなみに、『クイーンズ・ギャンビット』のベスは、原作者テヴィスの娘へのオマージュ。「かつては多くの女性が賢さを隠さなければならなかったが、今はそんなことない」と。悲しくも2020年にも共感されてしまっていますが……進歩したことは確かなはずでしょう。
ヒース・レジャーやベルトリッチが監督したがった作品
1983年に刊行されたウォルター・テヴィスの原作小説を実写映像化する企画は度々立っていた。たとえば、2008年に亡くなったヒース・レジャーがエリオット・ペイジ主演で監督しようとしていたと報じられている。また、1990年代に映像化の権利を買った『クイーンズ・ギャンビット』企画者アラン・スコットによると、『歌え!ロレッタ愛のために』のマイケル・アプテッド監督、『ラストエンペラー』ベルナルド・ベルトルッチ監督が携わったよう。いわく、主人公の心理とチェスゲームの描写のバランスをとるのが難しかったとのこと。これを画期的チェス描写でクリアーしたのがNetflixドラマ『クイーンズ・ギャンビット』だったわけです。
世界チャンピオンのおすすめ映画は『奇跡のチェックメイト』
監修を行った元チャンピオン、ガルリ・カスパロフがすすめるチェス映画は『奇跡のチェックメイト クイーン・オブ・カトゥエ』。いわく『ボビー・フィッシャー』は良作だが、挑戦や切迫感が無いし、チェスの世界がメインにしていない。『完全なるチェックメイト』も良い映画だがチェスと世界の人々をつなげる要素は無かった。『奇跡のチェックメイト』はかなり近づいている。挑戦についての物語で、実話。もっと評価されるべきで、過小評価。
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参考資料
https://www.nytimes.com/2020/11/03/arts/television/chess-queens-gambit.html
https://www.vogue.co.uk/arts-and-lifestyle/article/queens-gambit-costumes
https://slate.com/culture/2020/11/queens-gambit-garry-kasparov-interview-netflix-chess-adviser.html
https://www.architecturaldigest.com/story/queens-gambit-set-design
https://www.curbed.com/2020/11/the-queens-gambit-set-design-production.html
https://www.insider.com/queens-gambit-details-you-might-have-missed-2020-12
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