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法人と役員間の取引に係る注意事項

小規模な会社だと、会社と経営者の間で資産を売買したり、貸借したりすることがあります。そのような取引をすること自体は自由なのですが、税金計算においては取引の形態とは異なる扱いがされることがあります。

今回は、通常よりも安い価格での資産の売買とその時に生じる課税関係について解説します。

経営者から会社への低額譲渡

経営者については、譲渡価格が時価に比べて半分以上か否かがポイントとなります。譲渡価格が時価の半分以上であれば基本的には何もありません。譲渡価格が収入金額となります。

しかし、譲渡価格が時価の半分未満である場合には違います。この場合、譲渡価格ではなく時価を収入金額としなければなりません(所得税法59①二、所得税法施行令169)。つまり、実際にはお金をもらっていないのですが、もらったものとして税金が計算されるので、結果的に高い税金を払うことになります。

譲渡を受けた会社については、譲受価格が時価の半分かどうかは関係なく、時価と譲受価格の差額が無償で利益を得たものとして収入になり、税金が増えます。通常より安く買えたのだから、その分お金をもらったのと同じ扱いになるのです。

会社から経営者への低額譲渡

上記とは逆の場合はどうなるでしょうか?

経営者については、時価と譲受価格との差額が給与として課税されます(所得税基本通達36-15)。通常よりも安く会社から買ったということは、その分のお金をもらったのと同じことだからです。上記のように譲受価格が時価の半分以上かどうかは関係ありません。

会社については、低額で譲渡したとしても時価で譲渡があったとみなされ、その譲渡益について課税されます。では、時価と譲渡価格との差額はどうなるかというと、給与となります(法人税法基本通達9-2-9(2))。そうすると、源泉徴収が必要です。また、この差額は普通は賞与として扱われますので、法人税の計算上は経費になりません。つまり、時価で計算した譲渡益にのみ税金がかかり、給与(賞与)部分は経費と認められないので、余計に税金がかかります。

低額譲渡をすると余計に税金がかかる

結論としては、経営者から会社への時価の半分以上の価格での譲渡における経営者のケースを除き、低額譲渡をすると余計に税金を払うことになります。これを防ぐためには時価より安い価格で売買をしないようにしなければなりません。

ところが時価というのは、唯一の値が存在するものではなく、ある程度の幅を持った金額になります。そのため、経営者と会社の間で売買をする場合には、その金額の根拠をしっかりと示せるように準備しなければならないということです。

終わりに

経営者と会社の間で資産の売買をすることは割とあると思います。その場合には、価格を自由に決めることはできないこと(自由に決めても良いが税金がかかる)、価格の決定方法もきちんとと文書化するなどして説明できるようにすることの2点が必要であることを思い出してください。

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