好きなことを仕事にするな!        その4

僕は本当にダメ学生だったので、職業選択の自由なんて悠長なことは言えなかった。
最期は父のコネに頼ったから。

だけど、そこで学んだことはずっと僕のビジネス人生に影響を与えている。
マナーから、仕事上の法律まで・・・。

もちろん、理系的な知識まで。

一番大きかったのは、「独りでは仕事ができない」ことを学んだことかな。

いや、物理的に一人でも仕事はできるんだよ。実際に僕は人生の後半はずっと「コンサルタント」として一人で稼いできたから。

でも、一つのプロジェクトを完結させるのにはチームが必要で、そのチーム力を最大限に発揮できる人が真の「有能な人」だと築かせてくれたのが最初の会社。

今も半導体不況だけど、当時は半導体の材料であるシリコンウェハー不足で半導体の納期遅延がすごかった。

僕の直属の上司が5月20日で退職したために、本来3月に大学を卒業したはずの僕が上司の担当先を引き継がされたんだ。

なるほど、1月から入社させられ、上司と一緒に顧客を回らされた理由がわかったよ。

その上司は、営業部門のトップだったから、顧客も主要取引先ばかり。
まだ、海のものとも山のものともわからない僕に、なぜ任せたのだろう?

後日、社長に聞いてみたら「お父さんの息子さんなら大丈夫だと思った」だって。すごいプレッシャーだった。
父に恥をかかせられない。

朝出社すると、上場企業の工場から電話が鳴る。
ほぼ10分おき。
かあってくるたびに、偉い人がかけてくる。
最後は工場長が「君は上場企業のラインを止める気か!」って。

あっ、胃袋がどこかへ行った、と思った。

そんな毎日だもの、普通ならまだ、新人研修を受けていてもかしくない時期だよ。誰かに当たり散らしたくもなる。

その標的はもちろん、メーカーの営業マン。

新卒の商社の若造から頭ごなしに「どうなっているんですか!」と何回も電話されたら嫌になるよね。当時の担当が6歳年上だったかな。全然敬意もなかったから。

そうしたら、電話に出てくれなくなって、僕の商品だけ入荷が止まった。
血を吐くかと思った。

関西の工場まで取りに行ったから。

そんなことを繰り返したら、とある上場企業から転職してきた4歳年上の仲のいい同じ職場の人が「君、本好きだよね。前の職場に入社した時に研修でもらった本だけど、暇な時の読んでみたら」って1冊の本をもらった。

アパートに帰って、袋を開けて本を取り出したら新入社員必携の「デール・カーネギー著『人を動かす』」という本だった。

ちょっと読んでみただけで、「うっ、真逆のことをやってるじゃん!」と。
<続く>

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