「難しい」の話

私は、2012年の7月から日本語の勉強し始めて、八年間ずっと日本語の道を進んできました。2016年に日本語能力試験1級を合格し、2017年から日本で交換留学の経験もありました。日本語を勉強していなかったら、多分私はすでに人生を諦めました。それぐらい、日本語はえこくんを構成する、とても大事な部分と言っても過言ではないと思います。それでも私は今になっても、日本語って難しいと思ってしまいます。そしてそう思ってしまうと、益々自分のこと信じられなくなります。

日本語って難しいです。それは文法の話、単語や漢字の読み方など、知識の部分も含めていますが、私が一番難しく感じているのは「曖昧な使い方」です。

たとえば、「大丈夫」という言葉がありますが、大丈夫というのは肯定的な意味も、否定的な意味も、両方捉えることができます。それだけではなく、場合によって意味が変わるという単語があまりにも多すぎて、そういう曖昧なところも日本文化の一つだなと思いました。私はそれでもできるだけ場合を見て判断していますが、なかなか難しくて、勘違いしてた時かなり凹んでしまいます。

そもそも人間は、同じ言葉でも人によって違う意味として捉えてしまいます。私にとって大丈夫と思って言い出した言葉、もしかしてそれは実際相手にとってキツい言葉かもしれない。私は一回日本語を教えていた昔の友人に「あなたはそういう偉そうな言い方をするから嫌い」と言われたことがあって、それからもう誰かを教えることや、こちらから話をかけることをできるだけ控えていました。自分は人の心がわからない化け物だと、今でもたまに思ってしまいます。この世界に溶け込むことがなかなかできないのも、言葉が難しいからです。大学のとき哲学を学んでいたことですけど、そもそも言語というコミュニケーションツールは完璧ではないから、誤解を生じてしまったり、争いを起こしてしまいます。それをどうやって理解して、できるだけリスクを避けていくのも、難しいです。

私は、できるだけ難しいことを面白いこととして捉えていますが、それも限界がある。毎回毎回誰かの迷惑をかけてしまった、或いは自分はよくできなかった、そういう心の余裕がないとき、こういった難しいことが「理不尽」になってしまいます。コロナとか政治とか、そういう難しいこともニュースで流れていて、この世界は本当に理不尽ばっかりだなって、思いたくないけど思ってしまいました。

本当に自分はまだ運が良いほうなんだ、ってすごく思います。このご時世でまだ仕事を見つけられて、しかも滑り込みで日本へ就職ができて、本当に幸せなんだと思います。

でも、幸せを増していく一方、私は不安になってしまいました。

「自分は相応しくないんだ」
「この幸せを楽しむ資格がないんだ」
「こんな年になっても未だにエモーションコントロールができなくて、子供っぽい」
「このままじゃ、きっとまたあのときみたいに、みんなに嫌われて、一人ぼっちになる」
「私は完璧でなければならないんだ。みんなから寄せてきた期待を応えないといけない」
「みんなが不安を感じているのは同じだから、自分は『苦しい』と言う資格がないんだ」

そして、積み重ねてきたジェンガみたいなストレスが、一気に倒れてしまいました。また一つずつ拾えてあげたとき、私はまた自分のことを嫌いになってしまいました。未だに自分のこと好きになれないです。だから、自分の悪いところをすぐたくさんあげられる。それも私の「難しい」ところでしょうね。

すぐ謝る癖も、何事も指摘されたらそれは自分のだめなところ、悪いところとして捉えているので。とりあえず謝る、自分の責任じゃなくても謝る、自分のせいじゃなくても謝る、とにかく自分の価値を最低にしておけば、私は少なくともあのときみたいに嫌われたりしないだろうな。でもそれも間違った。私は、結局誰に嫌われていなくても、「自分」に嫌われているので、結果論としては何も変わらなかった。

本当に難しいです。世の中のすべてが。自分のことだけでも精一杯なのに、それを加えてコロナとかのことも目を背けることができなくて、強制的に脳にそれについて思考させて、答えを探そうとしていた。でもそれも無理でした。

「自分は弱すぎる」

そう思ってしまった私が、簡単で温かい言葉を聞こえました。

「えこくん、日本語本当に上手だな」
「えこくんが書いてくれた歌詞いいね」
「歌詞の翻訳めっちゃいいな」
「えこくん優しいね」
「えこくん大丈夫?」

難しい世界の中に、この簡単で温かい言葉があったからこそ、私はようやく自分の苦しいところを話せました。

耳を済ませてじっくり聞いてみれば、難しいと思い込んでしまった世界は、これほど簡単で温かい言葉がたくさんありました。そして私の中にあった「理不尽が溢れてる冷たい世界」も、少しずつ日の光が差し込んで、それはとても心地よくて、思わず泣いてしまいました。

日本語って難しいです。
世界って難しいです。
私って難しいです。
でも、難しいことばかりではなく、それにはちゃんと面白いことや、簡単な温もりが存在している。

そう、思えるようになりました。
だから日本に来てよかったと、後悔していませんと、言えるようになりました。
ここにきて、ようやく自分は幸せだな、と本心で言えます。

本当にありがとうございます。

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