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中国共産党がウイグル人を強制収容している証拠は増え続けている。

今回は「The Guardian」イギリスの中道左派の大手新聞社の記事を紹介します。

記事を書いたネイサン・ルザー氏は、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)の研究員で、衛星データやオープン・ソース・インテリジェンスを専門としています。


今回の記事を読む前に、ぜひBBCの記事内の動画を見てください。

なるべく理解できるよう補足を入れているつもりですが、動画を見てもらったほうが、ジェノサイドと言われてるこの問題の理解が深まると思います。



中国共産党がウイグル人を強制収容している証拠は増え続けている

2017年以来、中国の新疆ウイグル自治区では、政治的な反対意見は言うまでもなく、ウイグル文化やアイデンティティを破壊する残虐な弾圧が行われている。この弾圧の基礎となるのは、強制連行という手段と、残虐な政権である。このため、この地域の住民は従順になるだけでなく、完全な沈黙を強いられている。

推定では、新疆ウイグル自治区のウイグル人やその他のイスラム教徒の約10%が、これらの強制収容所に恣意的に収容されていることが分かった。

キャンベラに拠点を置く超党派のシンクタンクであるオーストラリア戦略政策研究所で新疆の人権を研究している間、私は2年間、衛星画像を調査し、ジャーナリスト、研究者、生存者と協力して、これらの秘密の収容所をできるだけ多く見つけることに費やしてきた。その結果は衝撃的であり、中国政府の主張とは正反対である。

9月24日、新たに立ち上げたウェブサイト「The Xinjiang Data Project(新疆ウイグルデータデータプロジェクト)」で調査結果の全容を公開しました。

2017年からの研究で、新しく砂漠やオアシスに作られたり、小規模な施設から拡大した強制収容を所を合計で380カ所も発見しました。私たちは強制収容所のすべてを見つけたとは思っていません。大きいものは東京ドーム約26個分(約1.2k㎡)以上の広さがあります。

中国の公開情報にある人口を参考にすると、380の強制収容所は、少なくとも新疆の非漢民族3万70000人ごとに、1つの強制収容所があることになります。

新疆の現実は中国政府の主張とは大きく異なります。新疆ウイグル自治区のショホラト・ザキル主席は昨年12月、「参加していた受講生は全員修了し、政府支援の下、安定した職業に就いた」と述べました。これは衛星画像の示している事実と矛盾しています。ザキル氏の主張の僅か数ヶ月後には、数十の収容所が大幅に拡大されています。本稿執筆時点では、十数カ所の収容所が建設中のままです。首都ウルムチの南東に位置する新疆ウイグル自治区最大の収容所は、2019年に1キロ拡張されました。約20の新しい建物を追加したこれらの改修は、全員が解放されたというザキル氏が主張した僅か数週間前の2019年11月に完成しました。

ザキル氏の主張の前後の数ヶ月間に、私たちは合計で60以上の強制収容所が拡張されるのを見てきました。

カシュガル市の近くで、今年4月まで世界銀行が共同で資金提供していた職業訓練学校の隣に、2020年1月に新たに建設された東京ドーム約5.4個分(約244000m2)の強瀬収容所が完成しました。これは、ザキル氏が、すべての拘禁者が釈放されたと述べた後のことです。この新しい収容所は、高さ14メートルの壁に完全に囲まれており、上部には10メートルの監視塔が設置されています。5階建ての住宅団地が13棟あり、合計10万平方メートルの居住空間があり、クライスラービルとほぼ同じ広さです。私たちは、この新しく開設された強制収容所には、最大1万人の抑留者を収容できると推定しています。

※ザキル氏は「今後は希望者に開放的な教育訓練を行う」とも述べていますが、希望者制にするのであれば急激な拡大の理由が不明ですし、何より開放的であれば14メートルの壁で囲う必要もありません。

実際、被害者の証言と同じように利用可能なすべての衛星写真は、ザキル氏の主張(社会復帰)が間違いで、2019年以降何万人ものウイグル人が、拡張され、より脱出が困難な新しい収容所に移送されていることを示しています。

※中国の内部文章の中に、現地の運営担当者に向けて「絶対に脱走を許すな」「宿舎と教室に監視カメラを張り巡らせて死角がないことを(確実にしろ)」という命令がある。新しい収容所には巨大な壁と監視塔、そしてたくさんの監視カメラが設けられている。

社会から人を強制的に追い出すことは、新疆全域が沈黙する要素となっていますが、それ以上にインパクトがあるのは、この規模の恣意的な強制連行が作る恐怖の雰囲気です

新疆では、ウイグル族など迫害されている国籍の者であれば、一挙手一投足によって強制連行の可能性が高まります。例えば、あなたが間違って地元の役人の意図にそぐわない行動をとったり、あなたの家であなたを監視するために送られた共産党員に誤ったことを言ったり、あるいは漢人の隣人が少しでも迷惑だと思えば、それがきっかけであなたは強制連行されるかもしれません。



だから 彼らは黙っていることを選んでいます。



これは北京が望んでいる方法です。観光地を離れると、千年の間生活を支えてきた都市には静けさが広がり、何百人もの漢民族の観光客が訪れ生活の面影は急速に薄れていきます。

2020年初頭、YouTubeに20分ほどの動画が投稿されましたが、これはどうやら観光客がカシュガルの古代の高台の住居の路地を歩いているところを撮影したもののようです。主要な観光地から200メートルも離れていないウィグル族のコミュニティには、投稿者の声以外の声は1つありませんでした。彼が歩いて通り過ぎた空き家には、600年以上前から人が人が住んでいたといいます。

その4年ほど前に同じ路地で撮影された別の観光客の映像には、路上で子供に向かって叫ぶ母親、イスラム教の服装をした男たちがおしゃべりをしている姿、玄関に座っている子供たちの姿などが収められています。

先月のビデオでは、警察が観光客が近所に入るのを完全に防いでおり、こう言っています。


「ここには誰もいない」




新疆のようにあいまいな基準しかなく、権力者の自由意思で強制連行をおこなえることは、新疆の迫害された少数民族にとって、共産党員からのいかなる要求にも抵抗することを不可能にしています。

新疆の強制収容所は、ウイグル人や他のイスラム民族にとって何一つ納得できるものではありません。

新疆地域の先住民族を完全な沈黙と服従と恐怖に陥れる強制連行は衰えるどころか加速していっています。当局はどんな些細な理由でもウイグル人を無期限に強制収容することができ、この恐怖が新疆の社会のあらゆる面を支配しています。

何万人もの収容者が強制労働プログラムに移されている可能性が高いのです。ですが、新疆ウイグル自治区のウイグル人には、虐待的な雇用者に対処するための手段はなく、強制的な不妊手術や中絶の強要を拒否することもできません。

このような虐待は、ただ容赦なく行われるだけではありません。多くの場合、政府当局からの奨励を受けています。

※中国の内部文章の中に、現地の運営担当者に向けて「規律を強め懲罰を増やせ」「改悛を自白を促せ」「中国標準語への矯正学習を最優先せよ」「生徒が本当に変わるように励ませ」という命令があります。外部からの接触を断ちこのような行為を行うことは洗脳以外の何物でもありません。

新疆ウイグル自治区の強制収容所は、新疆地域全体に影を落としています。中国が世界の工場と呼ばれているのは、ウイグル人や他のイスラム民族を劣悪な環境で強制労働をさせることで支えられています。世界の何百社もの製品を強制労働という大罪で汚し、中国共産党だけでなく、知らないうちに世界の多くの国々が、ジェノサイド(大量虐殺)に匹敵する民族浄化キャンペーンに関与してしまっているのです。



雑感

この記事を紹介するために、新疆ウイグル自治区の問題を日本語で何度も検索しました。すると、日本の多くのメディアは新疆ウイグルの問題を積極的に発信していませんでした。残念ながら今回参考資料として紹介したリンク先はどれもBBCやCNNといった海外のメディアの日本語サイトです。米国のニューヨーク・タイムズはこの問題に取り組んでおりキャンペーンを行っていますが、提携している日本の新聞社からはそのような記事はみつかりませんでした。

なぜ海外のメディアは報道できるのに、日本のメディアは報道できないのでしょうか。大きく3つの理由が考えられます。

①日本のメディアは中国の記者免許に沿った報道を行っている
日本には郷に入っては郷に従えという言葉があるように日本のメディアは真面目に中国のルールを守っている。

②報道したことによる利益より不利益が大きい
先日、中国に駐在していたオーストラリアメディアの特派員記者が中国を「脱出」することになったように、中国共産党は自らが不利になるような報道行為を許してはいない。そのような報道があった場合、中国は対象の報道機関の記者を追放したり、逮捕する等の行為を行ってきた。
また、もしそこまで危険を冒して報道を行ったとしても視聴者はそれほど興味を持っていない。これは「香港国家安全維持法」に対する世論の興味のなさを見れば明らかである。

③何か問題が起こった時に日本政府は守ってくれるのかという不安
シリアで武装勢力にジャーナリストが拘束されていた際、日本国内では新聞やテレビでは自己責任論キャンペーンが張られていた。
当時の小泉政権内でも自己責任という意見が強く、テロリストが悪いという前提は無視されてしまっている。日本人の生命や財産を守る邦人保護の義務がある日本政府内でさえである。
このような前例がある日本政府に対して、日本の記者は他国でオーストラリアの記者のような事態があった際に、守ってくれると思えるだろうか。

他にもスポンサー問題(②に含まれる)、サイレント・インベーション等いくつか理由も考えらますが、ほとんど全ての報道機関が口を閉ざしているという現実を考えると、この3つの複合的な理由が妥当ではないでしょうか。特に民間企業にとって②は重要な問題です。

我々に出来ることは、この問題に少しでも興味を持つこと。そして、少しでも多くの人に知ってもらう事です。

もし少しでも興味が湧いたらこのnoteやこの記事で紹介している記事をSNS等で拡散して頂けると嬉しいです。

また新しい動きがあれば、ご紹介させて頂きます。

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