Rain Through Umbrella

ぽつり。ぽつり。ざー。ざー。

湿度の高まりとともに気圧が低まり、雨が落ちる。

部活動の練習が中止になって喜ぶ学生や、

傘を持ってきていない学生から漏れるため息、

必死に雨避けを探しながら小走りで移動する社会人。

雨を物ともせず颯爽と自転車で駆け抜ける雨合羽姿の用務員。

止むのを待ちながら与太話に花を咲かせる女子会勢。

様々な顔が見られるこの街で、一人傘を差し歩く。

雨は嫌いじゃない。

確かに洗濯物も干せなければ、外出する気も失せる。

湿度も高まり、癖毛がうねりにうねる。

ズボンの裾は色を変え、かかとが磨り減ったシューズからは浸水が起こる。

そんな中でも、傘を手に一人ふらりと歩きまわるのが辞められない。

お天道様もたまには泣きたくなったのかな。

などということも考えながら、コンビニでワンコインを出し、

透明なビニール傘越しに周りを見る。

雨粒を通して見える街は、遊園地のミラーハウスや万華鏡のように

普段見ているものを異なる様相に変えて、演出してくれる。

傘越しに滲む赤信号。モザイクが買ったようなパチンコ屋前の映像。

少し穏やかに見えるハイビームとブレーキランプ。

水滴で滲む、季節に合わせた街を飾るイルミネーション。

そんな粋な演出家は、ついさっきまで心にへばりついていた

不快感を洗い流してくれる、そんな気がした。

今日は何を作ろう。

水に流された邪念が冷蔵庫の残りから夕食の献立を考えさせた。

たまにはいいか。丁度食材切らしてたし。

通りがかったチェーン店で傘をたたみ、素うどんを啜った。

澄んだ出汁が、益々心を浄化していった。

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