黒い海

夢を見た。

黒い海を眺めていた。
一人で暗い砂浜にいるのは怖かった。
後ろに人がいる気配がしては振り返った。
レジャーシートも何も持たず砂の上に座り、打ち上げられた海藻を眺めた。
砂に打ち上げられた時にお前は死んだの?

黒い海が目の前に居た。
両手を大きく横に広げて私を抱きしめてくれそうだった。
吸って吐いてを繰り返す息遣いが心地良くて、海が息を吸う度にその胸に飛び込みたくなった。

海は怖いと思っていた。
でも今はそんなことなかった。
足を浸けて指の先まで氷みたいに冷たくなって初めて生きている実感が湧いたんだ。

今夜は冷えるな、厚着をしているのに寒さに体を震わせている私は今生きたがっているんだな、貪欲にも。
そんな権利はないだろうな、とは思ってはいるのだけれども。

知らない間に砂浜で眠りに落ちてしまっていた。
目が覚めたときに深い悲しみに触れた。
知らぬ間に体を連れて行ってくれたらよかったのにと思った。

いつになったら自分の体とお別れできるの?

そう思った夢を見たよ。

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