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函館はコクガンの季節です


函館の冬は北海道では比較的温暖だが、それでも寒い時は氷点下10度以下になることも珍しくない。

その中で、函館の冬で一般の方にはあまり知られていない風物詩をご紹介しよう。

函館には冬場、様々な渡り鳥が飛来するが、その中でも希少種で絶滅危惧種であり、国の天然記念物であるコクガンが越冬で飛来することで知られている。

今月4日に撮影したコクガン。函館山近くの住吉漁港で餌をついばんでいるところを運良く目撃できた


時期は1月初旬から3月下旬まで、函館市、隣町の北斗市の海岸沿いに飛来する。と言っても、数が少なく大体200~300羽で、ひとつの群れ自体は10羽前後だ。特徴は黒色を中心に腹部や、首の回りが白くなっている。ガン類では唯一海域で生活する。

函館山周辺、東部の志海苔漁港周辺や旧南茅部地域の海藻がよく育っている海岸で目撃できる。干潮時に岩礁や漁港沿いで岩ノリやアオサ、マコモなどをよく食べている。

立待岬そばの住吉漁港近辺の海岸


函館周辺は全国屈指の真昆布の生産地だが、函館市中心部は、森林の伐採などの影響か、冬場の海藻や水草の生育が悪くなってきて、渡ってくるコクガンも減ってきていると言われているが、注意すれば見られることができる。

北海道でガン類と言えば、空知地方の美唄市にある宮島沼(ラムサール条約指定)のマガンが有名で、春と秋に最大8万羽が飛来する。その迫力と荘厳さたるや、一生に一度は見ておいた方が良いと言い切れる感動を味わえる(鳥嫌いの人は卒倒するだろうが)。

宮島沼のマガン。2018年4月に現地で撮影した

それに比べて、コクガンは数が非常に少ない。函館の海や自然環境が悪化すれば、近い将来、コクガンが飛来しなくなるかもしれない。人間の存在が多くの動植物を絶滅や絶滅危惧種に追いやっていることは、自分たちが生きている業として常に頭に入れておかなければいけないと思う。

日本国内で、コクガンが見られるのは函館周辺と道東の根室市の野付半島や浜中町(11、12月)だけと言っていい。冬の函館に来られた方は、気が向いたら港や海岸にも注目してみてほしい。簡単には出会えないと思うが、黒っぽい珍しい鳥がいるなと思ったら、それはコクガンかもしれない。


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