「ハンターキラー 潜航せよ」の感想

 先日、現在上映中の洋画「ハンターキラー 潜航せよ」を鑑賞してきました。結論、これは映画館で観る価値ありと勝手に判断いたしました。

 一応これが公式チラシですね、本当は90秒版のPVを引用しようかと思いましたが、いや、そのPVというのが思いっきりネタバレしていくタイプのやつでして、しかしながら本作は、特にストーリーに関してはあえてなーんにも前情報無しで観に行っていただきたいのですね。予習しないで観に行って大丈夫なものか不安な方もいるかもしれませんが、本作ならば全く心配ないかと思います。

 まず本作の物語は、主人公の機微を描くというよりは、たくさんの人物が登場する群像劇スタイルであるということ。であれば尚更、登場人物リストを事前に予習して頭に入れておかないといけないように思われますが、その必要がまったく無い、というのが本作独特の妙技だと思います。最終的にたくさんの登場人物がやいのやいのする作品ではありますが、だからと言って物語の序盤からキャラクターが乱立しまくる訳ではないのです。必要なタイミングで、必要なキャラクターが新登場し、本作の物語を適度なスピードとテンポで転がしていくので、提示される物語に身を任せながら、登場人物を一人ひとり記憶していけば大丈夫です。もっと言えば、誰か一人の人物に肉迫していくような作品ではないため、ビジュアルと役職だけ何となく頭に入れて行けば十分OKなのです。後ほど再登場したときに「あ、こんなヤツいたね、うんうん」くらいでまったく問題ありません。本作はキャラクターの人生や価値観に深く突っ込むことはしないので、日本の人間ドラマ映画を観るとき独特の「主人公についての情報提示を一切聞き逃しちゃいけない!」みたいなプレッシャーがそもそも存在しない作品として仕上がっています。ですので、まあまあたくさんの登場人物が最終的には出てくるわけですが、かと言って事前に情報を仕入れる必要はありませんので、安心して映画館にノー勉突撃してもらえればと思います。

 次に、あまり予習しすぎてしまうと本作の面白味を半減させてしまう恐れがある、ということですね。本作の醍醐味は、主人公たちと一緒に「現場のロシア近海でいったい何が起きてるんだ……?」という命がけのミステリーを体感することにあります。一隻の米潜水艦がロシア潜水艦を追尾中に突然音信不通になったため、特命を受けた主人公は攻撃型原子力潜水艦・通称ハンターキラーで現場海域の捜索を命じられるのですが、この時点で「同胞が謎の失踪を遂げた暗い海中に足を踏み入れなくてはならない」という恐怖や不気味さが観客にまでにじり寄ってくる訳です。そしてその謎を、死と隣り合わせのなか一つひとつ紐解いていかなくてはならない、というのが本作の主人公と観客に与えられたミッションになります。ミステリー映画に分類してもいいほど謎解き要素の強い映画でしたし、だからこそ、何も知らずにひょいと観にいった方が本作は楽しめるのではないか、と思います。

 ですので、これ以上深く突っ込んだことを書くつもりはありません。本作に必要最低限の賛辞を贈るのなら「同じような構造のシークエンスを繰り返しているだけなのに、観終わったらなんだかスカッとする作品に仕上がっていた」という一言ですね。テンポ感と言い、情報が適度に出されていく感じと言い、たいへん優秀な娯楽映画でした。未見の方には劇場での鑑賞を強くオススメします。

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