箱
中学を卒業して、高校入学です。
通信制の女子高をみつけて、小春はそこへ入学しました。
私は近くの、公立の高校へ。
このころになると、小春は体調を極端にくずしたり、発作をおこしてしまうことが、少なくなりました。
恐怖症が軽くなってくれたからではないです。
恐怖症とのつきあいかたが、うまくなったから、だそうです。
それは、男性と接しない、と言いかえれてしまいますが……
でも、直接ではないですが、小春は異性とも交流ができるようになりました。
SNSをはじめたのです。
私は高校にあがると、許可をもらってアルバイトをはじめました。
ショッピングモールのフラワーショップです。
子供のころ母がしてくれたお花屋さんごっこが、私は大好きでした。
なので、お花屋さんで働くことに、憧れがありました。
そして私は、バイト代でケイタイを持ったのです。
施設のパソコンは、ひとり1日1時間しかつえません。
小春は、その1時間を、だいたい勉強のための調べものにつかってしまいます。
なので、SNSは私のケイタイでやりました。
一緒にいるときは、私は小春とケイタイを共有したのです。
小春に異性の友だちは、いませんでした。
ですので、ネットで異性とやり取りをするとなると、知らない人になってしまいます。
小春は、男性ユーザーからコメントが来ると「このひと大丈夫そうかな?」と、私に聞いてきました。
私なりに考えて「大丈夫だと思うよ」と言うと、小春はコメントを返していたのです。
小春は男の人と怖がらずに関わることができて、よろこんでいました。
小春は男性を怖がっていましたが、憎んではいません。
男性を憎んでいるのは、どちらかと言うと私のほうです。
父が、母と私を捨てて、ほかの女の人のところへいってしまったので……
あるとき小春は、仲よくなった男の子に直接あいたいと、誘われました。
SNSをやっていたら、あり得る話です。
小春は怖くなってしまいました。
断って、気にしなければいいだけなのです。
ですが、誘われただけで怖くなってしまった自分に、小春はショックを受けました。
せっかく、異性と交流できていたのに……
ただSNSで交流する、それさえもうまくやれなくて、ひどく落ち込んだのです。
小春は、俳優さんをみて「カッコいい」とテンションを上げる女の子なのです。
男の人が嫌いなわけではないのに、怖くなってしまう小春が、かわいそうでした。
部屋で小さくなっていた小春を、抱きしめたかったですが、それもできないのです。
以前、小春が不安に陥っていたので、私はなんとか安心させようと思いました。
声をかけながら、私が小春の肩に手を置こうとしたのです。
しかし、小春はそれに、おびえてしまうと言う事がありました。
抱きしめて安心させる事は、小春にはしてあげれないのです。
私が女であっても、です。
なので、小春の恐怖症は、接触恐怖症とも言えるかもしれません。
そう言う言葉があるかは、わからないですが。
小春はSNSでも、男性と関わるのを避けてしまうようになりました。
けれども、悪いことばかりではありません。
小春はおしゃれが好きですが、私たちは服を買うのに、あまりお金をつかえませんでした。
なので、リサイクルショップで古着を購入していたのです。
小春はそれを、切ったり、ぬい付けたり、ときには染めたりと、好みのものへ作りかえていました。
それと、100円均一に売っているものなどをつかって、アクセサリーも手作りしていたのです。
私がアルバイトしていたフラワーショップがあるショッピングモールには、100円均一がありました。
そこでの買い物を、よくお願いされたのを思い出します。
小春はそれらの、手を入れた服や、手作りのアクセサリーを身につけて、SNSに写真をあげていました。
小春の写真には、いっぱいコメントや『いいね』がついたのです。
小春は、恐怖症のせいで、外に出て友だちを作ることが困難でした。
ですが、SNSのお陰で、たくさんの女の子とつながれたのです。
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