借金に対する誤解

僕は周りに起業家の友人がいなかったので、自分が起業したときは全てが手探りでした。もちろん今でも毎日手探りなのですが「見えない箱に手を突っ込む感じ」が起業家精神なのかもしれません。それに代わって共同創業者の一人は中小企業診断士としてすでに独立した実績を持っており、その職務上で様々な創業者を支援してきていた実績があります。互いに知らない知識を共有しあって、私の会社はここまで成長できたと言えます。

自分自身が、特に最初わからなかった感覚が「借金」「借り入れ」です。田舎出身の貧乏家庭に生まれた人間にとって「借金」というものは恐怖心に直結していました。しかし、うちの会社も2度の融資を受け(創業時と4年目に借り換え)なんとなくその意味や感覚、そして会社を運営することはどういうことなのかという感覚を養ってこれたと思います。起業家としての生活は、過去に対する誤解を解くための経験とも言えます。

私には子供はいませんが、自分の会社という子供を育てているような気分になります。そして会社を作るきっかけでもある「開発・営業を全て自分で統括してみたかった」という独占欲が示すとおり、自分の会社に対してもある種の独占欲があります。そのため、これまでいくつか出資の申し出がありましたが全て断ってきました。出資をウケるとその分の権利を分けないといけないことが多いからです。その権利を渡さないためには「融資」で賄う必要があります。そう「借金」ですね。

もちろん無借金経営というのは非常に望まれた会社形態でありますが、多くの中小企業は困難であろうと思います。それでも会社をやっていくには、この継続的な融資と借り換えを回していかないといけないわけです。というか仕事の実績を作っていれば実際のところは借り換えることはそれほど難しいことではありません。貸元は融資によって利子を継続的に支払ってもらえさえすれば良い訳ですので、基本的には貸したいわけです。貸さないとと利益になりまえんからね。そう、そういうところが段々と読めるようになってきました。

これまで私は融資を受けることに、一つの後ろめたさがありました。通信簿が悪くなったような感じです。なるべく営業利益だけでやらなきゃ、と思っていました。しかし昨年は諸事情により営業成績が悪かったため、昨年末に融資を受け今年はコロナ直撃。どうしようかと考えているところです。それでも一応継続的な実績はあり、製品が販売されることで着実にユーザーも増えております。とある領域(拡散強調MRIにおける腫瘍体積定量化)ではPixSpaceが独占的な地位を得ています。ユーザーが増えるに従って、営業努力も少なく済むようになってきました。なので来年以降もコロナの影響がありますし、今のうちに借り換えで融資を申し出しようと考えています。

営業売上による直接的な資金もそうなのですが、うちの会社、というか私が「プログラムを自社開発して、それを売る様な業態にしたい」と思った一つの理由は、開発時間に比例して保持するプログラムの価値が増えると考えていたからです。この資産は資本とは異なりますが非常に大切な部分で、最終的な会社の価値を決めると考えています。我々の開発物が他の会社では開発不能なレベルまで達した時、それを売ってしまっても良いとも思いますし、そのまま事業を継続して利益を得ても良いとも考えています。仕事を継続させることが重要なのです。こう考えると融資と借り換えは非常に大事なテクニックになってきます。

「継続は力なり」それを支えるのが融資ということです。私はこれまで銀行の価値というものがいまいち分かっていませんでしたが、なるほど資本主義社会にとって大変重要な位置づけなんだと理解するに至りました。日本は金融基盤が優れた国の一つだと思います。借金や融資に対する怖さを克服して、どんどん起業すれば良いと考えています。もちろん継続的な実績を作ることが必須ですがね。

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