見出し画像

娘との話

娘がまだ高校生だった時の話。



 海外駐在が多い私だが、たまたまその時は東京で単身赴任をしていた。
 普段はLINEでしか会話していない娘から珍しく電話がきて、
「来週の木曜日、会社休んで三者面談に参加して欲しいんだけど。」といきなり難題を言ってきた。
「なんで?そんなの無理だよ。ママにお願いしなよ。」と答えたが、いつもは聞き分けが良い娘が、
「パパじゃないとダメなの!」と珍しく引き下がらなかったので、渋々、会社に有給休暇届を提出して、帰省することにした。



 初めて見る娘の高校は私立だけあって、設備もしっかりしていて小綺麗に感じた。
「我々が高校の時は学校に自販機なんかあったかな?」などと考えながら、缶コーヒーを飲んで待ち合わせ場所で待っていたら、
「おまたせ!」と娘がやって来た。制服姿の娘を見たのは恐らく初めてだったので、
「可愛いじゃん。」と言ってあげたが、
「うるさい。行くよっ!」と全く相手にされず、三者面談の会場の教室へ向かった。



 担任の先生は30代前半ぐらいの若く教育熱心風な男の先生で、
「こんな調子じゃ何処の大学も入れないぞ。」と娘が可愛そうになるぐらいに厳しい口調で言われていた。
「そこまで言うかな?しかも親の前で。」と思いながらも、ハイ、ハイッと先生の説明を聞いていたが、終始厳しいことを言われ、娘はずっと黙り込んでいた。
 面談の最後の方で、先生が娘に、
「ところでなんで○○学部志望なの?」と意地悪気に聞いたが、娘はスパッと
「父親の影響です。」と答えてくれた。
 思い掛けない言葉に、驚くと同時に涙を堪えられなくなり、必死に誤魔化した。



 娘は第一志望ではなかったが、無事に大学に合格し、今は自宅を離れて住んでいる。
 在宅勤務の私は、娘が出て行った部屋で、仕事と、娘が大学受験の時に使って部屋に残していた英語の問題集や単語帳を使い、英語の学習をしている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?