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ストレイテナー、『TITLE』完全再現ライブを観た。

【ストレイテナー/「TITLE COMEBACK SHOW」】

2020年9月5日、ストレイテナー にとって初のオンラインライブが開催された。今回の公演は、彼らが2005年にリリースした2ndアルバム『TITLE』の完全再現ライブである。

ストレイテナーは、活動歴を重ねるたびに、2人から3人、そして現在の4人編成へと形を変え、また合わせて、ロックを軸としながらも、いくつものジャンルへ果敢に越境し続けてきたバンドである。今や彼らの音楽性を一言で表すのは難しいが、間違いなく言えるのは、『TITLE』は、彼らの数ある作品の中でも最もロックの純度が高い作品である、ということだ。

もちろん、ロックをどのように定義して、そこに何を見い出すかは人それぞれなのかもしれないが、僕は、ストレイテナーが鳴らすロックに、果てしないロマンを感じる。鮮烈な爆音、轟かしいビート、美しいメロディ、切実な響きを放つ言葉たち。そして、それら全てが渾然一体となった時、ゆっくりと心の中に映し出される景色。その壮大さに、いつも言葉を失くしてしまう。そして繰り返しになるが、『TITLE』は、その純度が最も高い作品である。だからこそ、今回の完全再現ライブを待ち望んでいたファンは多かっただろう。

ストレイテナーは、2013年と2018年に楽曲のファン投票を行っているが、それぞれにおいて1位を獲得した"SAD AND BEAUTIFUL WORLD"と"REMINDER"は、共に『TITLE』の収録楽曲である。また同作には、フェス鉄板曲"KILLER TUNE"や、"PLAY THE STAR GUITAR"、"TENDER"、"AGAINST THE WALL"など、長年にわたり根強い人気を誇る楽曲も並んでいる。今回、そうした収録曲がアルバム収録順に立て続けに演奏されたことで、これらの楽曲が秘める普遍的な力が改めて証明されることになった。


題名のない映画の最後に掛かるレコード
埃まみれの部屋を微かに照らす音像

"SAD AND BEAUTIFUL WORLD"


煙る雨が窓を濡らす夜  星のない空に輝いてる
弱い光を辿っていけばいい
失われた景色が広がるだろう

"PLAY THE STAR GUITAR"


果て知らず雨は降り続いて
止まった時間は動き出した
そこにまた悲しみが戻った
君は閉じた目を開いて
塞いだ耳を現した
そこはまだ悲しみの中で
失われた美しいものを
取り戻しに行くよ

"TENDER"


言葉では表せない形を探している
その答えは今も見えない
地上の木や石が遠い昔からこの瞬間に
遺した記憶は君の心を取り戻した

"AGAINST THE WALL"


そこから何かが変わっていくだろう
壊れた形や消え失せた色
そこにある何かが伝えていくだろう
優しさや悲しみや遠い記憶を

"REMINDER"


もちろん、完全再現ライブといっても、単なる過去音源の再現ではない。あれから15年、無数のライブを繰り返してきた今の彼らは、見事に『TITLE』の楽曲を2020年版にアップデートしてみせた。

ほぼ全ての楽曲の演奏において、新しいコードやリズムの解釈がなされており、また、ホリエアツシのボーカルのタイム感も、原曲と大きく異なる楽曲が多い。何より、『TITLE』リリース後の2008年に加入したOJのギターワークが全編にわたって冴え渡りまくっていた。(特に、"泳ぐ鳥"におけるユニゾンフレーズは最高だった。)

一般的に、過去作の再現をコンセプトに据えたライブは、どうしても懐古的なものになりがちだが、今回のライブにおいてはそんな雰囲気は微塵も感じなかった。あくまでも、今こそ鳴らせる音を、未来に向けた音を、ストレイテナーの4人は堂々と鳴らしてくれた。


最後に披露されたのは、10月配信リリース予定の新曲"叫ぶ星"。『TITLE』の収録楽曲と並んでも一切の違和感を感じさせない、まさに純度100%のギターロックナンバーだ。今回の配信ライブで久々にストレイテナーのロックと再会した人は、おそらくこの新曲にハッとさせられたのではないだろうか。

ストレイテナーは、20年以上にわたって、僕たちが信じるロックを、強靭な意志と覚悟をもって鳴らし続けてくれた。そして、これから先も鳴らし続けてくれるだろう。この日、そう確信できたことが、僕は何よりも嬉しかった。




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